「喜助さん喜助さん、両手の買い物袋はなんですか」
「ああ、そこのコンビニで大量に売れ残ってた可哀想なポッキーっスよ」
「昨日ポッキーの日でしたね」
「そうでしたねぇ。さ、やりますか由里果サン」
「何を」
「やだなぁ、ポッキーゲームっスよ!!それ以外に何が?」


喜助さんのおめめはキラキラ、いいやギラギラ。


「それ全部を!?」
「全部を!! アタシと恋人らしいことしたくないっスか?」
「ポッキーゲームは恋人らしいんですか」
「当たり前っス!!顔近づけてからのキス!!ほら、恋人らしいでしょ!!」


否定はしない、だけど。


「……拒否で」
「殺生な!!」
「おー、何をしとるんじゃ?」


のんきな声とともに乱入者。


「あ、夜一さん」
「ん?菓子かそれは?」
「ポッキーっていうんです」

――――――――――――――

その後はご想像のとおり。
夜一サンのブラックホール胃袋に、アタシの買ってきたポッキー(3000円相当)は消え去りました。

「一箱くらい御慈悲を……」
「悪い悪い。美味じゃった」
「夜一さん、ありがとう」
「ん?何故礼を……悪い気はせんが」
「そんなにポッキーゲーム嫌っスか!?」
「い、嫌というか、恥ずかしいと言うか…」
「じゃあ由里果サンは、アタシのこと嫌いなわけじゃないんスね?」
「好きです、けど」
「よし、ならポッキーゲームやりましょう」
「わけわかんないよ喜助さん!!第一、ポッキーもうないよ?」
「買ってくれば良いんスよぉ。そんじゃ、行ってきまーす♪」

――――――――――――――

「夜一さん……また食べてくれます?」
「すまんが……あの量をもう一回はちと辛いのう……」


ポッキーゲーム、確定いたしました。
十分したかしてないかで、喜助さん、ご帰宅。
またしても両手にポッキーinコンビニのビニール。


「絵面がどうなのこれは」
「そんなこと気にしない気にしない。さぁさぁ、ポッキーゲーム開幕っス!!」
「儂は散歩に行くかの……食べ過ぎたようじゃ」


最後の希望が!! 行っちゃったよ!!


「はい由里果サン、あーん」


いつのまにか開封されたポッキー。あ、チョコの方くれるんですね。


「やるけど、喜助さんはクラッカー部分までね」
「それ意味ないっスよ!?」


一本目を素直にかじる。
半分冗談で言った"クラッカー部分まで"を律儀に守る気らしく、すぐに喜助さんは止まった。


「アタシもチョコ食べたいんスけど……」


帽子の影から、子犬みたいに見つめてくる。
……可愛い。見た目30代にこの感想はどうかと思うけども。


「じゃあ、一ミリ!!」


ポリ。


「に、二ミリ…」


ポリ。


「三、いや、四…」
「なんだかんだ、やっぱりアタシに甘いっスねぇ由里果サンは」


そこが好きっスよ、と思いっきり甘い声で言われて、ポッキーが一気にかじられたことにも気づかないくらい、思考停止。
やっと我に返ったのは、喜助さんの唇が離れた時。


「ごちそう様でした♪」
「四ミリって言ったのに……」
「でも、早くキスしてほしそうな顔、してましたよ?」
「なっ……」
「まだまだポッキーありますから、キス……じゃない、ポッキーゲームたくさんしましょうね?」


ポッキーゲーム
私は別にキスでもいい、とか言うと調子に乗るので、黙っておこう。
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