『恋、拾いました』 会長、眼鏡床に落ちてますよ。 寝てるから気づかないのかな? 置いてたのを、手で押しちゃったんですね。 拾っておきます。 「ん……」 あ、お目覚め。 「眼鏡……ああ、拾ってくれたのかい?」 ありがとう、と微笑まれて、そういえば眼鏡してない姿は初めて見るなって。 この胸の高鳴りは何でしょうか。 『ここから始まる』 私と雨竜の関係を例えると、三マスに一回「振り出しに戻る」がある、鬼畜仕様の双六。 ちょっと前の歌で言えば、「三歩進んで二歩下がる」。 大抵の原因は、雨竜の性格。 要するに、恥ずかしがり。いつもいつも、手を握るだけで真っ赤。 進まない双六、でも、振り出し付近でうろつく、この関係が愛おしい。 『頑なに拒む両手』 「……近いよ」 「わかりました」 「ちょっと!? 僕は顔が近いのが気になっただけで、そんな端に行かなくても」 「私が顔近づけたら両手で離しちゃうじゃないですか!! 傷付きますよ!! 私のこと好きですか!?」 「そりゃ、好きに決まっ……!!」 「やった」 「近いってば!!」 「また遠ざけた!!」 『僕の半分』 隣に君がいることがすっかり当たり前で、失うなんて考えられなくて。 子供みたいに高い体温の手を握っていないと、心細くて仕方がない帰り道。 この感情が執着と言われればそうなのかもしれない。 それでも構わないから、君の傍に居させて。 もはや君は僕の日常の、僕そのものの一部になってしまっている。 『素直じゃないとこも可愛くてよろしい。』 「雨竜!!好き!!」 「知ってるよ」 「雨竜は私のこと好き?」 「何を言い出すかな!?」 「私ばっかり好きな気が」 「べ、つに、嫌いではないけどっ」 「……雨竜ー」 「今度はなんだい!?」 「本音は?」 「い、今のが本音だよ!!」 「素直じゃないなー」 「君、人の話聞いてたかい!? 本音だってば!!」 『新着メール一件』 「雨竜とうとう携帯手に入れたの?アドレス教えて」 「わかったけど、どうやるんだい?」 「赤外線…って無い!?」 「普通じゃないのかい?」 「…普通あるよ…じゃあ空メール送って…さすがにメールはできるよね?」 「失礼な…はい、送れたかな?」 「うん…なんか凄い文字化けしてる!?」 「えっ!?」 『最終手段』 「浦原さん、自白剤下さい」 「そんな物ないっスよ…用途は?」 「雨竜に飲ませます!! 好きって言わせたいんです!!」 「……だそうっスよ、石田サン」 「何考えてるんだ君は…」 「あれ、なんで居るの!?」 「素直に言っちゃえば良いのに」 「ほ、放っておいて下さい!!」 「えー、言ってよ」 「断るっ!」 『箝口令』 「箝口令の箝の字、挟んで動きを封じるって意味らしいですよ」 「そうにゃんだ…で、君はにゃにを」 「会長の口を物理的に挟んでます、指で」 「訳がわかりゃにゃい」 「可愛い録音して良いですか」 「断る」 「あ、抜けた!!でも会長猫語みたいで可愛かった!!漫研で自慢して良いですか!?」 「断る!!」 『本当、だったり。』 君に嘘を言うことには慣れた。 繊細な君の心を護りたいからまた嘘をついた。 階段から落ちたなんて馬鹿なごまかしに騙されてくれた。 もし僕が、本当のことを話せば、君はきっと受け入れてくれる。 すべて知って欲しいと思う気持ちも、知らないままでいて欲しいと思う気持ちも、どちらも本当の僕の気持ち。 『狡い人』 雨竜が私に何か、大きな隠し事をしているのは知っている。 だけどきっと、余程知られたくないから黙ってるんだ。だから私は、騙されたふりをしてあげる。 雨竜を傷つけないように。 私を護ろうとする雨竜を護るために。 私に嘘をつき続ける雨竜も、雨竜に嘘の自分を演じる私も、どっちもどっちの狡い人。 『愛してはいるんだけど』 「会長好きですだからお願いです私の萌えのためにネクタイほどいてください!!」 「何がしたいのかさっぱりだよ…」 「萌えをください!!大好きな仕草を大好きな会長がしてくれたら萌えは二倍いや2乗!!」 目をぎらつかせて"萌え"とやらを語る彼女のことを愛してはいる。 けども、たまに理解不能。 『隣との距離』 その体を抱き締めたくて、その唇に触れたくて。 いつも開いた半身分の距離が、もどかしくて堪らない。 大好きなんだ。愛してるんだ。 それを口にする勇気すらなくて、近付くことも出来なくて。 君から近付くのを待ってる僕は、狡い弱虫。 もし勇気を出してみたならば、愛しい君は一体どんな顔をするのかな。 おまけ・クインシーメロン 「雨竜、クインシーメロンっていうのがあるんだって。やっぱり白いのかな」 「真っ白なメロン……あまり美味しそうに見えないな」 「白い苺とか高いよ?」 「高級品なら美味しいって安易すぎる」 「じゃあ、皮が網目じゃなくて五芒星なのかな」 「クインシーメロンのクインシーは滅却師じゃないからね?」 [ 一覧へ] |