『甘えてよ』 私の肩に頭を乗せて、よく甘えてきた貴方。 横目で見える金髪のてっぺんと、鼻筋が大好きだった。 現世に来てからは、甘えられる回数が、格段に減ってしまった気がする。 私たちのリーダーとしての責任感なのか、なんなのか。 強がりなとこも嫌いじゃないけど、今みたいに二人きりのときくらい、甘えてよ。 『息の根止めて』 真っ白に覆われていく顔。泣き声にも似た咆哮が響く。 時計の針と喜助の横顔で、俺が今やるべきことを完全に理解した。 俺、お前の泣き顔大ッ嫌いやねん。 元から不細工なんが、ますます不細工なって。 やから、最後くらいは泣き止ましたるからな。 たった4文字の解号で、世界は転がる。一番残酷な結末に。 『大人になって、それからどうするの』 霊術院を卒業、死神になる、その先の計画は真っ白。 私は、隊長格の器じゃない。 将来の目標と題された紙に、筆は乗らず。 「なーに悩んどんねん、お前の行き着く先なんか、1個しかないわ」 「霊子になって消滅?」 「ちゃうわボケ。平子隊長のお嫁さん」 複数の点で図々しい、けれど不思議と拒めなかった。 『しゃらっぷ、きすみー!』 「真子ー暇ー」 「ハイハイ瀞霊廷通信でも読んどき」 「もう読んだよ今月号」 「そんじゃ、暇しとき」 「えー」 「仕事せなアカンからな」 「真面目な真子、気持ち悪っ」 「ちょ、お前でもしばくで!?」 「暴力反対!!」 「あーもー黙り!!」 「嫌だ!!私を黙らせたかったらキスでもしたら?」 「アホか!!」 『吊り橋効果』 真っ白の背中に浮かぶ、五の文字。 向かってきた虚の爪を、軽々受け止める斬魄刀。 なんで隊長がこんな案件に出向いてきてるの、馬鹿なのこの人。 「怪我、ないかァ?」 いつのまにやら虚を昇華し、振り返る真子。 浦原隊長に、脳は恐怖と恋のドキドキを区別できないと聞いた。 今の気持ちは、きっとそれだ。 『僕の居場所』 現世ではどこにも長居はできへん、尸魂界には帰られへん。 居場所ゆーたら仲間のいる場所だけ。 それも、いつもならアイツがおるはずの空間だけがぽっかり空いとって。 今頃、何しとんのか。 俺がおらんからってピーピー泣いとったらどうしょーか。 結局、俺の居場所はアイツの隣が一番やったと思い知った。 『美しい終わり方』 苦しいのは嫌だ。痛いのも遠慮したい。消え行く理性の片隅で、そんなことを考える。 できるだけ綺麗に死にたい。護廷隊じゃ馬鹿みたいな願いも、今なら叶う。 悲痛な顔と、揺れる金髪を視界に捉えた。 うん、真子なら綺麗に終わらせてくれるね。 咆哮にしかならない声で、最後に叫ぶ。 ありがとう、ごめん。 『来世でもよろしく』 来世というなら、今がそれなんだろうか。 一度死んだと思ったらよくわからない街にいて、なんか死神になって、刀振り回してる。 目の前でひらひらする金髪は夢みたいに綺麗で、ますます非現実。 今また死んだら、どうなってしまうんだろう? そんなことはわからないけれど、またこの金髪と一緒ならいいな。 『憎ませてもくれない』 言い渡されたのは、見つかり次第虚として処刑、という残酷極まりない命令で。 勝手に私の前から消えて、挙げ句にこんなの。 本当にいなくなっただけなら、憎むのも簡単だったのに、貴方は私に、それさえも許してくれないのだ。 待っててよ、必ず見つけてあげるから。 そして、百年恨み言を言ってやるんだ。 『色気のない誘い文句』 アイツはなぜか、俺にくすぐられるのが好きらしい。 笑っとるうちはエエけど、そりゃまあアレな声も出るわけで。 そんな状態でもっと、とか言われて、今まで色々せんかった俺は、正直かなり偉いやろ? そんな訳でしゃーなし今日も、くすぐってよーという意味のわからん"誘い文句"に乗ったるとしますか。 [ 一覧へ] |