秘めた想い


ずっと好きでした。


…なんて言えたら、どれだけ良かったか。

私はただの一船員で、彼はキャプテン。
私は弱いけど、彼は強い。

そもそも彼なんて言うのも烏滸がましいのかもしれない。


月のものと相俟って、気分が良くない。
嫌なことばかり考える。

「よォ、ミヤビ。…どうした?顔色悪いな」

こちらの様子を気にして船長の右腕から声を掛けられてしまう。正直1人で居たいけど。

「ペンギン…。ごめん、心配かけて。大丈夫だよ」

上手く笑えただろうか。沈んだ気持ちを悟られていないか。

「嘘だ。顔色も悪い。部屋で休んどきゃ良いのにどうしたってこんなとこに」
「んー、なんというか…」

感傷に浸ってました、とは言えないし。

「正直体調があまり良くないんだけど、でもじっとしててもどうにもならないというか…」
「やっぱりか…。でも体動かしてたら良くなるもんも良くならねェと思う。いつも頑張ってくれてるから、今日は俺がやる事代わってやるよ」

柔らかい笑顔とともに頭をひと撫でされる。少し気分が和らいだ。

「ありがとう、ペンギン」


「おい」

低い声。いつもよりも。こういう声色の時はいつも機嫌が悪い。

「キャプテン…」
「何触ってるんだ、ペンギン」
「何って…別にキャプテンのものじゃないでしょ」
「俺の船だから俺の船員は俺のものだ。違ェか?」

…なんでだろ、2人の間に変な空気が流れてる。

「はぁ…分かりました。んじゃミヤビ、お大事にな」

またペンギンが頭を撫でて去っていく。待って。この機嫌の悪そうなキャプテンと2人にしないで。また更に怒りのようなオーラ増してる気がするから。

「…体調悪ィのか」
「え、と」

キャプテンと話すことがあんまり無くて言葉がつかえる。憧れだからこそ話せない。

「顔色が悪いな…やや貧血気味か?」
「う、はい…」
「…次からは体調が悪い時は俺に言え。良いな?」

キャプテンの声が柔らかくなって、思わず顔を上げる。その瞬間、頭を優しく撫でられる。

「あの、キャプテン、」
「なんだ」
「今、私の頭を…」

キャプテンが若干顔を顰める。

「あいつにはさせて俺にされるのは嫌なのか?」
「え?」

それじゃまるで、

「…なんでもねェよ。薬やるからついてこい」

キャプテンの耳が赤いような気がするのは気の所為じゃないと思いたい。
脚の長いキャプテンの後を少し早歩きで着いて行った。

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