ボーイッシュなガールの悩み
「……あっ、雪女くんだぁ!」

「キャーっ!今日も超カッコいい!!」

「ねぇねぇ、こっち向いてー!」


女の子たちが上げる、
憧れ混じりの黄色い声。


「……あぁ、おはよう」

「「「「キャーーー!!!」」」」


沢山の女の子に囲まれて、黄色い声にうんざりした顔をしながら歩く、
一人の少年……





……にしか見えない少女。





それがこの物語の主人公、『火月 雪女』であった。


「(……はぁ、俺はあと何回「女」って言ったら、信じてもらえるんだろうな……?)」
「(正直、もう勘弁してほしいんだけど……)」


毎日登校する度に女の子たちに囲まれ、
俺を争って起こる喧嘩の怒号や、黄色い声を嫌と言うほど浴びる……これが、俺の日常。


「(……頼むから、いい加減俺を女だって気づいてくれよ……。)」
「(それが出来ないなら、せめてよそでやってくれ……)」


そう考えながら、雪女は心の中で半べそをかいた。



……そもそも俺はれっきとした「女」なのだが、口調や性格も男らしくなってしまっていて……
とてもじゃねーが、一目見ただけじゃ女とは思えないような感じになってるわけだ。

まぁ俺、もともと声が少し低めだし……
体つきも女よりがっしりしてるから、そのせいもあるのかもな。

あと、自分ではまったくそう思っていないのだが、
どうやら俺は世間でよく言う「イケメン」の部類に入るらしい……うわあ、すっげえ迷惑。
……せめて、もう少し女らしい顔に産んでほしかった(´・ω・`)



……てなわけで、毎日女子の取り巻きに追い回されて生活してるわけです。
頼むから誰か代わってくれ。今すぐ大喜びで代わってやるから。



その後、雪女は何とか女子をかき分けて教室までたどり着いた。

教室に着いた事に安堵しながら鞄の中身を出していると、
いつも雪女と仲のいい男子たちが、女子に囲まれている雪女を軽くからかう。


「おいおい雪女ー、今日も人気だなー?」

「頼むからさ、俺たちにそのモテオーラ分けてくれよー!」

「バカ野郎、これが分けられるんだったらいくらでも分けてやるよ!」

「……おっ、言うね〜」

「きゃー!雪女くんったらイッケメーン☆(裏声)」

「うるせー!」


たくさんの女子に囲まれて学校に着き、机の周りで男友達とバカ話。
そして今日もまた、同じような1日が始まる。

しかし……学校に着いたからと言って、雪女の悩みがここで終わるわけもない。
これから始まるであろう『それ』のことを考えると、雪女はじんわり頭が痛くなってきた。






そして授業中。



じぃいいいいぃぃ……



「……えー、これを応用した答えとしては……」

「(……し、集中できねぇ……)」



じぃいいいいぃぃ……



「(お願いだから、頼むから……あっちを向いてくれ……!!)」



じぃいいいいぃぃ……



あぁ、もう……
目からキラキラとハート飛ばしながら、俺をうっとりと見つめられても困るんですが。


授業中、いつも雪女はクラスの大半の女子にガン見されており、
受けている授業に集中することはもちろん、目の前に垂れるうっとおしい前髪を耳にかけることすらままならない状況。

実際、先生も「火月、お前が居ると女子が誰も授業受けてくれないんだが……」と、泣きながら雪女に言う始末。
その時雪女は心の中で「……いや、俺のせいじゃねーし。むしろ見られて授業受けられないの俺だし。」と返したのは言うまでもないだろう。


「(……そもそも、俺はただ男装してる女だぜ?そんなに追いかける要素が何処にあるってんだよ……つーか俺、恋愛なんかに興味ねーし。)」


雪女はそう頭の中でぶつくさと文句を垂れるものの、
他の女生徒はお構いなしに雪女を恋情のこもった熱い目で見つめる。

その視線にいい加減耐え切れなくなった雪女は、少し辛そうな声を演じて先生に声をかけた。


「先生……俺、頭が痛いんで保健室行って来ても良いですか……?」

「またか、火月……まぁいい、行ってこい。」

「……はーい」



先生のその返答に、雪女は心の中でガッツポーズを決める。

……もちろん、“頭痛”なんて嘘。


雪女は、背中にぶっ刺さるような女子の視線を感じながら廊下に出て、
保健室とは逆方向の、屋上へ行く階段へと向かった。


「(……先生もこんな俺の事情を知ってるみたいだから、バレても何も言ってこないのが助かるよなー)」
「(まぁ、本当はこれ、サボりだからダメなんだけど……ま、どーせ教室にいても授業受けられねぇしな)」


そう雪女は心の中で自分に少し言い訳をすると、屋上のドアのノブを回した。


……とまぁ、こんな感じで授業はよくバックレるけど、
あとで家でちゃんと勉強するから、成績は普通より少し上。だからOKってことにしよう。


「はー……ここに来ると気持ちが安らぐぜ。誰もいないってほんっと楽だよな」


青く、雲一つないスカッと晴れた青空の下。
そんなことを呟きながら、雪女は制服の内ポケットに隠していたDSを出した。
そして雪女はそのまま屋上のベンチに寝転がり、DSのスイッチを入れる。


「さーて、ブリザードの続きをやろうかな……」




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