夢主 あたしのアール [1/1] あたし、屋上で靴を脱ぎかけた時に、 緑髪の先客に、声をかけてしまった。 「ねえ、やめなよ」 口をついて出ただけ。 ホントはどうでもよかった。 先を越されるのが、なんとなく癪だった。 緑髪の子は語る。どっかで聞いたようなこと 。 「初恋の人だった。どうしても愛されたかった」 ふざけんな!そんなことくらいで あたしの先を越そうだなんて! 好きな人が振り向かないなんて、 言葉にしたこともないくせに! 「話したら楽になった」って 緑髪の子は、消えてった。 さぁ、今日こそはと靴を、脱ぎかけたらそこに 羽の生えた男の子、また声をかけてしまった。 男の子は、語る。クラスでの孤独を 「自分の個性が気になって、 居場所がないんだ」って ふざけんな!そんなことくらいで あたしの先を越そうだなんて! それでも、あんたは愛されて 好きになってくれた子もいるじゃない! 「会いたくなった」と泣いて 男の子は、消えてった。 そうやって、何人かに声をかけて、追い返して。 あたし自身の痛みは誰にも言えないまま 初めて見つけたんだ、似たような悩みの子。 何人目かに会ったんだ、青いヒーロースーツの子。 「生きているだけで、あたしは邪魔なんだ」 「それを終わらせるために、ここに来たの」と言った。 口をついて出ただけ。 ホントはどうでもよかった。 思ってもいないこと。でも、声をかけてしまった。 「ねぇ、やめてよ」 ああ、どうしよう!この子は止められない。 あたしには止める資格が無い。 「それでも、ここからは消えてよ。 」 「あんたを見ていると苦しいんだ。 」 「じゃあ今日はやめておくわ」って 目を伏せたまま消えてった。 今日こそは、誰もいない。 あたしひとりだけ。 誰にも邪魔されない。 邪魔してはくれない。 ヒーロースーツは脱いで 髪の毛をほどいて 背の低いあたしは 今から動きます。 [*前へ][次へ#] 1/1ページ |