·····最初は、彼女をただの狂人だと思っていた。
ただ幼く戻り、狂った女性だと。
運命に翻弄され、この荘園にやってきてしまったのだと。
しかし·····ゲームでの彼女を目の前にして、
私の考えはとてつもなく浅はかなものだったと気づいてしまった。
「うぇ·····?ハンター、さん?」
「おや、ファーストチェイスとは運がないですね」
「うー·····?ふぁー、ちぇい、す?」
「ファーストチェイスも分かっていないとは·····本当にゲームのことを分かっているかどうかすら怪しいですね」
「·····うー?」
幼子のような目で私を見つめる彼女。
可哀想だとは思ったが、これもゲームのうちだと殴ろうとしたその時。
ひらりと彼女は身をかわし、なにかに気づいたような顔をする。
「あー!わかったぁ!これショーだね、そうだねぇ!?」
「はっ·····?」
「それなら、ソニアちゃんとできるよぉ!ママにおこられないようにうまくできるよぉ!」
そう嬉しそうにニコニコと笑う彼女。
予想外の発言にあっけに取られていると、彼女は私の前に立ち、一礼してからこう告げた。
「·····Ladies and Gentlemen!」
「リールサーカス唯一の魔眼使い、ソニア・フランティストが挑むは霧の刃を持つ魔獣!」
「御せるか、倒されるか、事の行方は誰にも知れず!」
「·····どうぞ、心ゆくまでご鑑賞あれ!」
さっきまでの舌足らずではない流暢な言葉。
驚くのも束の間、彼女はチェイスを始めるためその場を走り出した。
いつものサバイバーと違って、どんなに追ってもなかなかダメージを与えることができない。
ようやく殴れると思いきや、占い師の梟のようにどこからともなく動物が現れて刃を防がれる。
·····あぁ、こんな気持ちはこの荘園に来てから初めてだ!
もっと追いかけていたい、もっと、もっと彼女を!!
そんな熱病にも似た熱い思いを抱えながらも、何とか彼女を捕まえてロケットチェアへと座らせる。
捕まった彼女はさっきのような雰囲気は無くなり、また幼子のような言動に戻る。
「フー·····ようやく、捕まえましたよ」
「·····うー、おこられ、ちゃう·····」
彼女に夢中になったせいか、気づけば暗号機は残り1台。
救助狩りをやった所で4割救助されて逃げられるのがオチだろう。
「今日は貴女に免じて、このくらいにしておきましょうか」
「·····ゲーム、やめちゃうの?」
「ええ、どちらにせよ勝てそうにありませんから」
「そっかぁ、たいへんだねぇ」
「·····そういえば貴女の名前を、聞いていませんでしたね」
「うー、ソニアはね、ソニア!ソニア・フランティスト!」
「ソニア·····ですか。覚えておきましょう」
「ハンターさんは?ソニアはおなまえおしえてあげたから、ハンターさんもおしえてよぉ」
「·····リッパー·····いえ·····ジャック、と呼んでください」
「ジャックさん!わかった!」
「·····おや、どうやらあなたのお迎えが来たようですよ」
「あ!サトコおねーちゃんだぁ!」