「あら·····忍田本部長、お久しぶりですね」
「あ、あぁ·····い、伊摘くんも、元気そうでなにより。今日はどうして本部に?」
偶然本部に来ていたキャンサー隊オペレーターの伊摘は、そう忍田に挨拶した。
忍田はそれにしどろもどろしながら返事を返す。
「鬼怒田さんに用事があって。うちのやんちゃっ子達が、またキャンサー隊基地のノントリオンルームを壊しちゃったものですから·····」
「またか·····」
「ふふ、そんなにやんちゃっ子なんですもの、キャンサー隊の子達や私の義娘(アナスタシア)が、ボーダー本部にご迷惑掛けてませんか?」
「·····いつも通り、と言ったところだろうか」
「それなら良かった。またそのうち忍田本部長のお時間が取れたら、昔のようにお手合わせ願いたいものです」
伊摘がそう言うと、忍田は頬を薄く染めて「·····えぇ、是非とも」と返す。
そんな二人の様子を遠目から見ていた迅は「うわー、あの二人ってば相変わらずだな」と苦笑していた。
「あの·····その、伊摘くん」
「はい、なんでしょう?」
「えっと、その·····今度·····空いてる日は、ないだろうか·····」
そう言うと、忍田は恥ずかしそうに頬を掻く。
どうやら·····彼なりのデートのお誘いらしい。
「·····まぁ!久しぶりにお手合わせして頂けるんですか?」
·····しかし残念ながら、この鈍感で天然な伊摘には伝わらなかったらしい。
その瞬間、近くで聞いていた迅はガクッと肩を落とす。
「(そうじゃないだろ、伊摘さん·····さすが百合香さんの妹だ·····お淑やかに見えて脳筋すぎる·····)」
「·····ふふ、久しぶりの忍田さんとの試合に向けて腕が鳴るというものです!·····基地に戻ったらトリガーのメンテナンスをしなくっちゃ!」
「あ、あぁ·····そうだな、私も楽しみだよ·····」
嬉々として話す彼女に、忍田は引きつった顔で笑うことしか出来なかった。
「はい。では失礼しますね」
「そ、そうだね。気をつけて帰りなさい」
そしてそのままスキップでも始めそうな勢いで去っていった彼女を、忍田は見送る。
「·····はぁ、伝わらなかったか·····」
「ごくろー様です、忍田本部長」
『·····忍田本部長、お袋にはあれじゃ通じませんって』
ため息をつく忍田を、迅といつの間にか来ていたアナスタシアが励ました。
「·····分かってはいるんだがなぁ。こればかりはどうにもならないというか·····」
『まぁ確かに』
「本部長は奥手すぎますもんねぇ〜」
「うるさいぞ二人とも·····」
そう言うと忍田は、赤くなった顔を手で隠す。
「·····私も、トリガーのメンテナンスをしておくか·····」
『·····忍田本部長、何だかんだでお袋と一緒にいられるのが楽しみなんすね』
「ッッ!?」
『さっさと告白しちまえばいいのに。お袋も俺も嫌とは言いませんよ』
「·····私はもう帰る!!」
忍田は真っ赤になったまま、その場を走り去った。
残された二人は呆気に取られるが、すぐに笑い出す。
『·····はは、ノーマルトリガー最強の男も、お袋には敵わねぇんだな!』
「本当だな!」
そんなこんなで後日、忍田と伊摘の10本勝負がボーダーの訓練室で行われたが、5対5で勝負は引き分けに終わった。
「·····あら〜、やっぱり適度に訓練しないと体が鈍りますねぇ」
「伊摘くんも変わらないな。流石はキャンサー隊所属なだけはある」
そう言って握手を交わす二人を、ギャラリーに混じって迅は遠くから眺めている。
「(·····お似合いだと思うんだけどなぁ。忍田本部長と伊摘さん)」
そんなことを思いながら、迅は二人の邪魔にならないようにその場を去った。
「·····もう一試合、お付き合い頂けませんか?」
「喜んで」
その後、ボーダー本部のラウンジには楽しげに談笑する忍田と伊摘の姿があったとか、なかったとか。
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赤面する忍田本部長が見たい!!!!
20220308
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