君が流したユメナミダ。


少女は細雪の夢を見る


(うちの白姫×三上様の華冬ちゃんクロスオーバー)





ぱちり。

目を覚ませば見知らぬ天井があって、お日様の香りがするふかふかの猫柄布団に横になっている。
真っ白な猫がにゃあ、と鳴きながら綺麗なオッドアイに私の間抜け面を映していた。目の下の稲妻模様が瞬く。

とりあえず起き上がり、遠慮がちに猫を撫でる。
余程飼い主さんのしつけがよく、利口なのだろう、気持ち良さげに鳴いている。

見渡した室内は猫グッズで溢れていて、可愛らしく整理された女の子の部屋だ。
壁には有名人だろうか、サイン入りのポスターも二枚ほど飾ってある。


「あ!」


「え?」


不意に聞こえた声に顔を上げた。するりと腕の中から空いた扉の向こうへと猫は消えて、
代わりに雪の妖精みたいにふんわり可愛い女の子がやって来た。

人の良さそうな瞳でまじまじと私を見つめている。思わず頬に熱が集まっていくのを感じ取った。

フラグ?そういうフラグなのか?

勿論、そんな訳はあるはずもなく、彼女は意味なく顔を赤くした私にニコニコしながら手をしかと掴んだ。


「よかった、目が覚めたんだね!君、道端で気絶してたんだよ?」


「き、気絶ですか?」


「うん!
あ、ねぇねぇ名前を教えてよ!オモニ達に話して、心当たりがないか聞かなきゃね。ぼくは吹雪白姫!」


「成澤華冬です。
えっとオモニって誰なんです?……白姫、さん?」


「白姫で大丈夫だよ。
オモニはお母さんのことなの、小さい頃は韓国にいたから癖が抜けないんだぁ……あ、まだじっとしててね!」


くるりと踵を返し、廊下へと走っていった彼女を見送り、
冷静に現状を整理しようと腕を組む。

昔から、体力面には自信がない方ではあった。しかしながら、そんなに今日の体調が屍寸前だった訳もないし、友人と別れた駅のホームで何をしたとも感じない。
それならばその後の帰り道で気絶?それでも、まだまだ納得いかない。

あーでもないこーでもないと唸る私に、にゃにゃにゃあ、とさっきの白猫が鳴いた。

優雅に尻尾を揺らしながら鳴く姿は、「まぁ、ゆっくりする時間くらいはあるでしょう?」とでも囁くように見えた。



気がつけば、白姫ちゃんとそのお母様である雪女さんにお茶をごちそうになっていた。
右に白百合、前には青薔薇。まさに両手に花というべき状況に不覚にもときめきを感じざるを得ない。
お茶請けに出されたスノーボールを夢中になって食べていたところで、
紅茶を啜っていた雪女さんが口を開いた。


「それで、成澤さんは気絶した記憶がないんだったかな」

「とりあえず、雷門という市名はちょっと聞いたことがなくて……もしかしたら乗り間違えたのかも」

「うーん、でも華冬ちゃんってしっかりしてそうだよ?」


しょんぼりと項垂れた私を、白姫ちゃんが慰めるようにそう言った。
雪女さんも「ま、絶対に帰れるからまずは気を強く持て」と満面の笑み。もう帰らなくていい気がしてきたが、慌てて頭を振る。
私がそんな気持ちでどうすると言うのだ。

とりあえずスノーボールをまた手に取り、リビングを見渡す。
洒落たインテリアは涼しげで、ちょこんと置かれた写真立てやコルクボードには家族の写真が飾られている。
なんとも幸せそうで、遠目にもこの家族の幸福さが伺える。こんな素敵な家族に出会えたこと、それを友人に話したらしきりに羨むことだろうに。


しかも皆、クールビューティーでスタイリッシュなんだから。




「あ、写真見る?」

「いいんですか?」

「もちろん!
折角だし、ちょっと自慢したいのもあるしね」


私の視線に気づいたのだろう。
ペロリ、と舌を出して白姫ちゃんがはにかむ。これが天国なのですね、神様。

差し出されたコルクボートにお洒落に切り貼られた写真は、どれも幸せそうな笑顔が写っている。
旦那さんと思わしきイケメンさんは、優しげな垂れ目で愛しそうに寄り添う二人を見つめていたり、
やはりモデルのように何をしても様になる母娘もふわふわとした極上の笑みをバッチリ向けている。

若りし頃の雪女さんだろうか、ユニフォームに身を包みVサインをこちらを向ける写真や、
先程出会った白猫さんとピカピカの制服を着た白姫ちゃんがじゃれあっている写真もある。
そして、雪女さんの両親さんだろうか、活発そうな女性が旦那さんの腕を引いて満面の笑みを浮かべていた。


「すごいです、まるで映画のワンシーンを見てるみたいですよ……一枚欲しいくらいです」


「それは誉めすぎだよっ!
でも悪い気はしないなぁ、えへへ」

「成澤さんは大袈裟だなぁ、そんなこと言われたのは初めてだぞ……ま、白姫と同じく悪い気はしないな」


顔を見合わせて微笑む親子は、それこそ絵画のように美しい。
どことなく浮世離れした雰囲気を感じながら、窓の外がすっかり夕闇色になっていることに気がついた。

楽しい時間は過ぎ去るのは早い、少し冷めてしまった紅茶を飲み干して頭を下げた。


「すいません、こんな時間まで親切にして頂いちゃって」

「ううん、気にしないでくれ……って、大丈夫なのか?帰る目処は立ってないだろ?」

「そうだよ、華冬ちゃん!」

「初対面でここまでして頂いてしまって本当に感謝しています。それに、お二人を見ていたら……少し、家族が恋しくなってしまって」


頬の熱さを誤魔化すようにうつむき、ボソボソと言葉を繋ぐ。
少し静まった空気に視線を戻すとニコニコとしている二人、笑い顔が似ているな、と火照る頭で考えた。

それなら玄関まで送る、という二人の声に反応したのか、どこに隠れていたのか沢山の猫達がにゃあにゃあと現れる。
中には、最初に会った猫もいて、白姫ちゃんに可愛くじゃれている。


「ステップ、華冬ちゃんに挨拶する?」

「にゃにゃあ」


満足げに鳴く猫さん、ステップは白姫ちゃんの腕の中でくるりと丸くなる。
鏡餅を思い出しながら、玄関に綺麗に並べてあったローファーにまた頭を下げた。

ハルモニ達ももうすぐ帰ってくる?と首を傾げる白姫ちゃんに力強く頷いてから、雪女さんが私の頭をそっと撫でてくれた。


「夜道には気をつけるんだぞ?」


思わず裏返った声で力強く答える。
にゃあにゃあ、にゃにゃ、みゃーん!と猫達の鳴き声を聞きながら頭を下げれば、
白姫ちゃんは手を大きく振り、雪女さんはパチリとウインクをくれた。



少し清々しい気持ちで当てもないはずの帰路に着く。
とりあえずの調子で歩み、夕闇に沈む街並みはやはり見慣れぬものであることを再認識する。

すれ違う学ランの稲妻模様、女の子達の色とりどりのリボンタイ。自分のあさぎ色のスカートをつまみ上げた後、河原沿いを石を蹴飛ばして駆けた。

石が跳ねた先にいた少女は驚いた風に私を見上げ、フーセンガムを膨らませた。
咄嗟に頭を下げれば、彼女はもう驚愕から抜け出して飄々としている。


「帰り道を教えて下さいますか?」


「あっちだよ」


互いに笑みを交わし、彼女は私に飴玉を放る。
ありがとうを言い終わる前に、彼女はもう走り出している。その先には、凛とした美少女と人の良さそうな女の子。

その姿に自分の友人達を重ね、飴玉を頬張る。甘酸っぱいさくらんぼのそれは、雪みたく溶けて消えた。



少女は細雪の夢を見る







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掲載遅れて申し訳ありません·····m(_ _)m


うわああああああああっ!!
もう凄すぎて、口からため息と奇声しか出ません(`・ω・´)


うちの母娘があんなスタイリッシュに描かれててもう最高です!
私にとってご褒美です!もっとくr(殴



本当に、三上様にはいつもお世話になってます·····本当にありがとうございました!






20140221
蓮華 柚留

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