俺のいとしいひと(SS)
「·····好きだ、火花」
火花をぎゅっと抱きしめてそう言えば、照れくさそうに笑った火花は俺の頬にすり、と頬擦りして「私もよ、焦凍」と返してくれる。
·····あぁ、俺のいとしいひと。
お前だけは、親父にも、兄姉にも、クラスメイトにも、誰にもやらない。
俺のことを理解して、それでも愛してくれるのは·····お前だけしかいないんだ。
「火花は、俺のそばにいてくれるよな·····?」
「えっ?·····もちろんよ、ずっとあなたの側にいるわ!」
だからそんな顔しないで?と言われて、俺は自分がどんな顔をしているのか知らないが、きっと酷い表情をしているんだろうと思った。
だって胸の奥底からどす黒い感情が湧き出てくるみたいだからだ。
「(なんなんだ、この気持ちは·····。)」
自分でもよく分からないその暗い何かを必死に抑え込みながら俺は火花をさらに抱きしめた。
火花の肩口に頭を乗せて、ラメの絡んだキラキラでふわふわの髪の毛に顔を埋めると、俺と同じシャンプーの香りが鼻に届く。
それがすごく嬉しくなってもっと強く抱き寄せれば、「もう、焦凍ってば·····今日は甘えん坊なの?」と言いながらも抵抗することなく俺を抱き締め返して受け入れてくれたことに安心すると同時に、心の底からの満足感を覚えた。
·····あぁ、こいつは俺の恋人なんだ。他の誰のものでもない。
彼女は今、自分の恋人なのだと思うだけでひどく満たされる心地になったのだ。
「(·····火花を許嫁にしてくれた事だけは、親父に感謝しねぇとな·····)」なんて思いつつ目を閉じて火花の温もりを堪能しながら微睡みに落ちていったのだった。
ーーーーーー
甘えん坊ムーブの轟が好きなんです·····
20220222
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