君なら全部好き!

·····いつものように琉音と出久が一緒に過ごしていると、唐突に琉音が出久の頬を両手で包んで愛おしそうに撫でた。


「いずくんのおめめはおっきくて可愛いねぇ、ほっぺたのそばかすまで可愛いねぇ·····」

「·····琉音ちゃん?ど、どうしたの急に·····」

「んー?·····可愛くて、かっこよくて、優しい顔が私だけに向けられてるの、幸せだなぁって」


そのまま琉音はんふふ、と笑ってそばかすを撫でるように指先で出久の頬を触る。そんな彼女の行動に、出久は頬を赤くして何とも言えない表情をした。


「(·····なんか今日の琉音ちゃん、凄く素直というか·····積極的と言うか·····)」


琉音が出久に対して好意を表しているのはいつもの事だが、今日の彼女はやけに出久への好意を強く示している気がする。

出久がそれを一体どうしてだろうかと考えていると、今度は彼女が出久の手を握ってきた。
琉音はそのまま自分の手を添えてぐっぱぐっぱと動かしながら、「いずくんの手はやっぱり大きいねぇ」と言って自分の頬にすり、と擦り付ける。

その行為がまるで猫みたいで可愛いなと思いつつ、やはりどこか様子がおかしい彼女に、出久は恐る恐る聞いてみた。


「あ、あの·····琉音ちゃん?」

「·····んー?なぁに、いずくん?」

「なんで今日はそんなに僕にベタベタしてくるのかなぁって思って·····」


すると琉音は少しの間キョトンとした顔をしていたが、少し眉を下げると「·····嫌だった?」と聞いてくる。
それに対して出久は慌てて首を横に振った。


「い、嫌じゃないよ!むしろ嬉しいっていうか·····でもちょっと気になってさ。何かあったのかなって·····」

「そっかぁ·····じゃあ、理由言うけど·····引かない?」

「·····えっ!?う、うん·····」


何故そこで「引く」という言葉が出てくるんだろうと思っていると、琉音がぽつりと話し出した。


「·····こないだのインターンの時、いずくんが助けた可愛い女の子に、ちょっと嫉妬したの」

「へ?し、嫉妬?」


予想外の言葉に目を丸くしていると、彼女は恥ずかしそうにはにかみながら話を続けた。

「いずくんは最高のヒーローを目指してるから、私以外の女の子を助けることも、もちろんあるよね」

「う、うん·····」

「でも、私はヤキモチ焼きだから·····だから、いずくんの可愛い顔見れるのも、ぎゅってしてもらえるのも、キスしてもらえるのも私だけって再確認したかったの·····」

「·····ッ!!!!」


いつもの『好き』ではなく、素直な『独占欲』という感情をぶつけられて、出久は心臓を撃ち抜かれたような感覚になった。


「·····ごめんねいずくん·····私、重たい·····よね·····?」


不安そうな表情でそう尋ねてくる琉音に対し、出久は胸元を押さえて深呼吸をしてから答えた。


「い、いいや·····全然重くなんて無いよ。むしろ嬉しいくらいだよ!」

「·····ほ、ほんとう?」

「本当だよ!!確かに僕はヒーローを目指してるから、他の女の子を助けることもあるけど、心から好きなのは琉音ちゃんだけだし·····それに」


そこまで言って出久は優しく微笑むと、彼女の手を握り返して言った。


「·····僕だって、琉音ちゃんのこと独り占めしたいって思う時あるもん」

「ふぇっ·····!?」


出久の言葉を聞いた瞬間、ボフンっと煙が出るほど赤面した琉音の頭を撫でると、彼は続けてこう呟いた。


「お互い様だね、僕ら」

「·····そうだね、私たちお似合いかも」


互いに笑い合う二人だったが、しばらくすると琉音は出久の首筋に顔を埋めてきた。


「る、琉音ちゃん?」

「·····なんかホッとしちゃった。いずくんも同じ気持ちで良かったなぁ」


出久の胸に顔を埋めたまま、琉音は安心しきった声で言う。そんな彼女を抱きしめながら、出久は改めてこんなにも可愛い子が彼女で幸せだなと思ったのであった。


「·····僕のそばかすまで好きって言ってくれるのは琉音ちゃんくらいだよ」

「なんで?ほっぺたにあるお星さまみたいですっごく可愛いのに?」


小首を傾げながらそう言う琉音に、出久は胸をぐっと押さえながら口を開いた。


「(可愛いのは君の方なのに·····)」


そんな事を思いながら、出久は琉音を自分の方へと抱き寄せる。そしてそのまま彼女にキスをして愛おしそうに見つめた。


「·····大好きだよ、琉音ちゃん。こんな僕でいいなら、琉音ちゃんに全部あげるよ」

「ありがとう、私もいずくんの事大好きだよ!だから·····こんな私でもいいなら、いずくんに全部あげる!」


二人はそう言い合って再び唇を重ねる。互いの想いが通じ合った事でより深くなった二人の絆に満足しながら、出久と琉音はこの日も仲睦まじく過ごしたのであった。


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そばかすごと出久が好きな琉音ちゃんが書きたかった。

20220415

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