一番星を慈しむ
「死柄木弔、私の一番星·····」
·····それは、弔への愛おしさが溢れ出した時の纒の口癖だった。
そして、弔はそんな彼女の想いに応えるように優しく微笑むと、ゆっくりと唇を重ねる。
「·····なんだよ、纒」
「ふふ、弔が愛おしすぎてついつい言っちゃうの」
「なんだそれ」
そう言って二人は見つめ合うと、再び唇を重ねた。
·····2人はよくこうしてキスやスキンシップをしたり、体を重ねることが多いが、「快楽を得るため」と言うよりかは「お互いの愛情や存在を確認するため」と言った方が適切かもしれない。
2人は、互いを心から信頼し合い、互いのことを誰よりも想っている。だからこそ、こんなにも幸せそうな表情で触れ合っているのだ。
「·····お前は暖かいな」
「そう?あなたもとっても暖かいわ」
「ああ、そうだな·····」
弔は、まるで母親に甘える子供のような優しい笑みを浮かべると、纒の豊満な胸に顔を埋めて頬擦りする。
·····その様子は纒にとってはとても可愛らしく、とても愛おしいものだった。
お互いに相手が望むだけ愛を与え、また相手からも同じように愛を与えられるこの関係は、まさに理想的な恋人同士と言えるだろう。
·····だがしかし、2人の場合は他者に対して異常なほどの憎悪を抱いているため、唯一心を許せる弔や纒に依存しないと生きていけない体質になっているとも言える。
故に、彼らは決して離れることはない。
例え何が起きようとも必ず寄り添い続ける。
それが彼らの関係であり、愛情のひとつであり、彼らにとって最も幸せな時間なのだから。
「んん·····纒·····」
「ふふっ、弔ったら·····そんなに胸に頬擦りされたらくすぐったいわ·····」
仲間と居る時とは違い、本当に2人きりの時はお互いに甘え、お互いに甘やかし·····どちらかが子供のように振る舞う。
·····まぁ、行うことは子供のそれとはかけ離れているのだが。
「ねぇ、弔·····私ね、あなたのことが大好きよ」
「俺だって同じだよ、だからもっと強く抱きしめてくれ·····」
「もちろんいいわよ·····はい、ぎゅーっ·····」
「·····ん」
すっかり弔は甘えん坊の子供みたいになっており、普段の傍若無人な振る舞いからは、想像できない姿をしていた。
それだけ、彼は彼女に気を許しているということだろう。
そして、纒は彼の頭を撫でながら耳元で囁く。
「あなたはとても強いけれど·····たまにはこうやって、私に甘えてもいいのよ?」
「そうだな·····」
「私は嫌がったりなんてしないわ·····ずっとあなたのそばにいるんだから·····」
「·····うん」
弔は、ただ静かに返事をするとそのまま眠りについた。
·····きっと、今の彼にとって一番安心できる場所が纒のそばなのであろう。
そして、纒もまた弔のことを強く求め、彼に安心を求めてそばに居続ける。
·····そんなふうに、互いに依存して生きる歪な二人。
でも、二人にとってはそれで良い。二人でこれから先もずっと一緒にいることに変わりはないのだから。
たとえどんな困難が訪れても、絶対に離さない。
·····二人は、そう誓い合うかのように唇を重ね合わせた。
―――――――――――
ヴィラン組はどうしても共依存になってしまう·····!!!
20220601
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