·····あおぎは、感情が昂りすぎると個性が制御できなくなって鎌鼬のような動物の姿になる。

昔からその姿があまり好きでは無いのか、その姿になりそうになると、「こんな見苦しい姿、荼毘に見られたくない!」と飛び出してしばらくは戻ってこない。


「(·····見つけるのは、簡単だけどなァ)」


山奥の木々が薙ぎ倒されている場所の中心部に、いつもあおぎはいる。

鎌鼬の姿で散々暴れ回って、体力が無くなるとすぐに人型に戻るのだ。
そうして、何事もなかったかのようにまた同じことを繰り返す。


「·····気は済んだかよ」

「あぁ、ごめんなさい·····私ったら·····」

はぁ、と大きなため息を吐いて、あおぎは荼毘の方を向いた。


「·····私の個性、こんな見苦しい個性じゃなくて、あなたの個性をサポートできるものだったら良かったのに」
「お前のサポートなんざ必要ねェんだよ。俺一人で十分だ」
「······そうよね」
あおぎは再び目を伏せた。
「でも······お前の個性があるから俺は戦えるし、お前がいるからこうして生きている。だからそんな顔すんなよ」
荼毘の言葉を聞いて、あおぎは目を見開いた。
そしてその瞳には涙が浮かぶ。
「うんっ·····ありがとう、荼毘」
そう言って笑うあおぎを見て、荼毘も少しだけ口角を上げた。
「·····それでこそ、俺の女だ」
「ふふっ·····えぇ、あなただけの女よ」
荼毘の言葉に、あおぎは幸せそうな表情で応える。

「·····さて、そろそろ戻るぞ。アイツらが待ってる」
「·····ふふ、そうね。ハヅネやトガちゃん·····きっとみんな心配しているわ」
「········」
荼毘とあおぎは手を繋ぎ、ゆっくりと歩き出す。「········ねぇ、荼毘?」
「ンだよ」
「········愛してるわ」
あおぎの言葉に、荼毘は無言のまま何も返さなかった。
ただ繋いだ手に力を込めて、二人は仲間達の元へ戻るのだった。


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