ブリリアント・サマー


 夏真っ盛りのヴァリアー本部に帰ってきた紅葉を真っ先に引き止めたのはルッスーリアだった。上機嫌な彼に腕を取られてそのまま彼のフリルやピンクで飾られた女性よりも女性らしい部屋に連れ込まれたと思えば、たくさんの水着の入った箱を手渡された。ずっしりと重いそれを紅葉はなんとか小さな体で受け止めながら、ルッスーリアの顔を見上げてみた。彼は相変わらずサングラスで隠れた目でニコニコと笑いながら、紅葉に言うのだ。
「バカンスよ! Califfa(女上司)!」



 ヴァリアーが所有するプライベートビーチに紅葉は半強制的に連れてこられた。仕事が――とXANXUSにギリギリまで食い下がってみたが、まったく効果をなすことなく、もう決まっているかのように荷物がまとめられ、強制的に専用機に乗せられて南の島まで来てしまった。とりあえず、ルッスーリアと幼馴染の葉夜の手によって水着にあれよあれよのうちに着替えさせられると、ビーチに放り出された。日差しが暑い。砂浜からサンダルを通して伝わる熱が暑い。――日差しを避けようと、レヴィに案内されるままパラソルの下に行けば、XANXUSが寝転がっているではないか。
「……んだ、その格好」
「おかしいですか?」
 水着のまま歩いてくるのは流石にためらわれたせいか、紅葉はパーカーを着ていた。それがお気に召さなかったらしいXANXUSは思い切り顔をしかめた。紅葉はこれ、気に入ってるんですが、とくるり、と回ってXANXUSにパーカーを見せるように動いた。いつもは三つ編みにされている髪はルッスーリアの手で夏らしくまとめられている。
「来い」
 たった一言。紅葉は逆らうことなくXANXUSの元へ近寄ると、XANXUSに腕を引かれて、その体の上に乗せられてしまった。
「えっ、あ、あの!」
「……おとなしくしてろ」
 XANXUSの腹の上で起き上がらされると、完全にXANXUSを見下ろす形になる。海でもエクステを付けたままの彼はじと、上から下まで紅葉を一瞥すると、ゆっくりとパーカーのチャックへ手を伸ばす。あ、と紅葉が動揺してXANXUSの腕をつかもうとすると、XANXUSがニヤリと笑った。腰を抑えられて、ゆっくりとチャックが下ろされていく。今回の水着は葉夜一押しのオフショルダーで胸元にはたっぷりとフリルのあしらわれた体型カバーのビキニだ。それが恥ずかしいのもあって、パーカーを着ていたのに、XANXUSはわざとらしくゆっくりとチャックを下ろす。ほう、と彼の口から言葉が出たのは、ちょうど腹の位置までチャックが降りてきたときだ。
「悪くねぇ。葉夜か」
 誰が選んだかまで、おわかりですか、と紅葉は耳まで赤くして、きゅと強く目をつぶる。そして、全てのチャックが降りると、XANXUSはその白い肌に手をそっとはわせるようにして、腹をなぞり、腰をなぞり、脇腹を指でなぞるようにしながら、パーカーを払い除けてゆく。肩にかかっているパーカーをそっと落とさせてると、すとん、と落ちた布が肘のあたりで止まって、たまった。
「ざ、XANXUS様、お戯れもそこまでに」
「……戯れ、なぁ?」
 あ、しまった。と紅葉は思ったが、そう思ったときにはすでに遅かった。あっさりと手を取られてXANXUSがそれまで寝転がっていたところにうつ伏せに転がされると、片手で両手を取られて身動きが取れなくなった。
「XANXUS様っ」
「そう強張るんじゃねえ。日焼け止めを塗るだけだ、オイ」
 ルッスーリアを呼ぶと彼(彼女)はあっさりとハァーイと楽しげな声を出して、紅葉のために用意していた日焼け止めをXANXUSへ蓋を開けて手渡した。XANXUSは手の上にそれを取ると、紅葉の背中へ手を置いた。びくり、と紅葉の体が震えるのを愉快そうに眺めながら、日焼け止めを塗り込むようにゆっくりと手を動かした。オフショルダーのビキニの中にも手を入れて、両手で、紅葉の背中を撫でる。
「……ふっ、――んっ」
 紅葉の瞳に大粒のナミダが貯まる。びく、びくと体が震えているのがXANXUSには手を通して伝わってくる。わかりやすいやつだ、とXANXUSは口元を歪めて笑うとその珍しく晒された首裏にそっとキスをする。

「紅葉」
「は……いっ」

 ふぅ、と耳に奥に囁くように低い声を出すと、わかりやすく反応する紅葉がいる。その顎を掴んで顔を挙げさせてみれば顔を赤くして少しばかり蕩けた顔をしている。
「続きはどうする」
 そういえば、紅葉は顔を赤くして、しかし、XANXUSのパーカーを弱々しくつかむ。
「へ、部屋で……二人きりが、いいです」
「ぶはっ、いい子だ」
 XANXUSは紅葉の体をあっさりと抱き上げると、スクアーロに戻る、と一言だけ告げてコテージへと向かっていく。首にしっかりと抱きついている紅葉の額にそっとキスを落とした。

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