思い知るのはお前だよ
「あー……紅葉、上から退いてくれるか」
「やーーだーーっ!」
獅子劫は頭を抱えたい気分になった。ベッドの上、自分の腹の上に跨って座っているのは年齢こそ三十を超えたが、外見はまだまだ十代後半、二十代前半でも行けそうな妻、紅葉だ。シャワー上がりで上半身裸だった獅子劫をベッドの上に全身を使って体当りしてきて押し倒したかと思ったらその上にまたがった。――下着姿で。
「お前、酒飲んだだろ」
床に転がっているチューハイの空き缶。たかだか三パーセント程度のアルコールで、と普段から酒を嗜む獅子劫からすれば思うのだが、どうにもこの嫁はアルコールに弱い。それもその弱さは極端でこれで普段の様子からかけ離れた大胆さを見せるわけだが。いつこんなものを買ってきたのか、と床に転がった空き缶を眺めながらできるだけ紅葉へ視線を向けないように目をそらした。しっかりとそれを見つかって、界離、と自分を呼ぶ紅葉の声に顔を上げた。
「……いや?」
「嫌じゃねえから、困ってんだよ馬鹿野郎」
獅子劫はサングラスを外して投げると紅葉の頭に手を伸ばして自分に引き寄せてキスをした。
「……っ、ふ……」
僅かだが、酒の香りを感じた。すぐ舌を絡め合うようなキスへ変わると獅子劫の上に跨っていた紅葉の体がビクリ、びくりと震える。紅葉の下着に指をかけると呼吸が苦しいと訴えてくる紅葉の手が獅子劫の鍛え上げられた胸板を叩いた。
「……っ、はぁ……ん、界離ぃ」
「強請るなよ」
「……いや?」
「嫌じゃねえよ、って言っただろ」
体を起こしてそのまま紅葉をベッドの上に押し倒す。両手を頭の上でまとめ上げると、耳に唇を寄せる。噛み付いたり、舌を這わせる。
「あっ、……ひっ、や…………ま、って、手、離して……」
「好きだろ、こういうの」
空いてる手で紅葉のブラジャーのホックを外して、歯で噛んで持ち上げた。少女体型とはまさしくこの事、というか、最近は少女のほうがまだいい体つきしているのではないだろうか、と思ったところでひどく睨まれたので平たい胸の飾りに吸い付いた。
「ひっ、あ……っ」
少し硬さを持ち始めたそれを舌でこね回し、少し歯を立てると紅葉がびく、と体を震わせ、わずかに背中が浮く。余計に突き出す形となっているが、おそらく気づいていないのだろう獅子劫は口の端を持ち上げた。
「酒入ってるからか、気持ちよさそうだな」
「……んっ、あ…、気持ち、い……」
紅葉の双眼はとろん、と蕩けそうな位潤んでいて、獅子劫はそうか、と額にキスをした。ショーツを脱がすと、掴んでいた両手を離す。その手首に残った痕にキスを落とすと紅葉が嬉しそうに目を細めた。
* * *
秘部を伝う指に紅葉は少しだけ体をこわばらせた。決して乱暴にする人ではないのはわかっているがどうしても反射的に体がビクついてしまうのは許してほしい。紅葉の口からはすでに嬌声だけが聞こえてきていて、耳を愛撫する獅子劫の唇から聞こえる熱い荒い吐息に余計熱が高まっていく。
「あ、っ、か、い……りっ!」
「ん? もうイキそうか?」
こくこく、と何度も何度も頷く紅葉の膣内に入っている指の抜き差しの速度を少し遅くすると、紅葉が必死で目で訴えかけてくる。
「指でイクのと、俺のと、どっちがいい?」
「……ん、界離ぃ」
「だよな」
指をゆっくりと引き抜くと、たっぷりと糸を引いていて、獅子劫は唇を舐めた。手で足を割り開くと、秘部の入り口がひくつき、愛液が滴り落ちる。すっかりと獅子劫を受け入れる準備の整っている紅葉の中に入るために、獅子劫はベッドサイドの引き出しからゴムを取り出そうとして、紅葉の手に止められた。
「……いらない」
「お前なぁ……いくら、俺が子供ができないと言っても」
「どっちにしても、夫婦なんだよ?」
うるうる、と涙をたっぷりと貯めて懇願してくる紅葉の手を振りほどくのは獅子劫にはできず、獅子劫はゴムを付けないまま紅葉の入り口に自身をそっと押し当てた。少し入り口に押し当てただけだというのに、入り口は少しずつそれをのみこもとうしていて獅子劫は笑った。
「あっ、ん……ひぁあっ」
「――っ」
紅葉の中には一発で全部はいるわけではない。半分ほど入ったところで獅子劫は一度腰を止めて紅葉の様子をうかがった。目を見開いて口をパクパクとさせている紅葉の口を塞ぐようにキスをしつつも、ゆっくりとその頭をなでた。
「んー……っ、んっふ、あ……」
くちゅ、と舌が合わさり、紅葉の体から適度に力が抜けてくれば獅子劫は奥まで自身を押し込んだ。最後まで押し込めば、こつり、と先端に子宮の入口がしっかりと当たり、吸い付いてくるような感覚がする。畝るような中の感触にはぁ、と一度息をつき、紅葉の頭をなで、キスも何度もした。
「はー……あ、か、いり……も」
「ああ……わかってる」
腰を掴んで律動を始めると紅葉から再び嬌声があがる。獅子劫はそれを見下ろしながら、ぐ、と歯を噛み締めた。何度も自分を呼ぶ妻の声、汗が額から伝って堕ちて、紅葉の肌へ落ちる。唾液や汗や愛液で濡れた肌やシーツと、律動が響く部屋の温度はやっぱりいつもよりも高い気がする。
二人で高まるような快楽はあっという間に終着が来る。紅葉の高い嬌声の後、強く締めてくる膣の圧に獅子劫も限界を迎えてくっ、と奥歯を噛み締めて中に熱を吐き出した。
しばし熱に浮かされたまま互いに動かないままだったが、しばらくして紅葉に覆いかぶさっていた獅子劫が腕の力だけで体を持ち上げると汗で額に張り付いた紅葉の髪の毛を払った。まだその瞳からは熱が抜けきってはおらず、紅葉の中に入っているそれが熱と硬さを取り戻しつつある。
「ん、界離……」
「ありがとう」
紅葉が腕を伸ばして獅子劫を受け入れる。まだまだ甘い時間は終わらない。
* * *
ちゃぷ、と紅葉のお気に入りの入浴剤の張られた湯船に二人で浸かりながら体を清める。一回目のお風呂はシャワーにしておいてよかった、と紅葉がなんだか楽しそうだ。
「界離」
「ん? 酔いは抜けたか?」
「うん。ね、界離、キスしてもいい?」
「……一回だけな」
それまで背中を向けていた紅葉が向き直るように座りなおすと肩に手をおいて獅子劫の唇にキスをする。触れるだけのキスだが、紅葉はたまらなく嬉しそうに顔を赤らめて獅子劫に寄り添った。