あざとい唇に敗れて
腹の上に掛かる重さに阿伏兎はまずいと思ったが遅い。少し上を見上げてみれば腹の上に座っていたのは紅千である。
第七師団団長補佐にして、前第七師団長夜王鳳仙の実子である。第七師団内では姫の愛称で呼ばれており、阿伏兎もかねてから彼女のことは姫さんと呼んでいた。別段敬意があるとかそういうわけでもないが、そういうどことなく触れがたい高貴な見目をしているのだ。銀の髪、赤い瞳はまさしく真っ白な兎の如く、神々しい。そういえば、地球の神話で真っ白な兎は神聖なものみたいな話があったな、と思いつつ、挑発的に笑う紅千を見上げる。
「あーぶと!」
「……楽しそうね、姫さん」
「シよ?」
「どこで覚えてくんだよ、あれか、俺以外の男たちか、後でシメる」
少しはだけさせられた服から見える肌にそっと指を置いた紅千。白く、爪の先は丁寧に揃えられ今日は紅い爪をしていた。触るか、触らないかギリギリのところで指を這わせた紅千がふふ、と笑う。生娘のくせにどこでこんなこと覚えてくんだ、と思いつつ指を敢えて止めなかった。いや、そもそも紅千を本気で止めようとするには既に体勢が悪いし、片腕ではそもそも分が悪い。紅千はチャイナドレスの袷を外して、すとん、と腕を伝わせて落とす。
(あー……)
一瞬見惚れてしまうくらいだ。自分も男だ、まるきり女に興味がないとは言えないし、まだまだ枯れてない。性欲も十分ある。ただ、日々が忙しすぎてそれを考える暇が無いというだけで。今の紅千の下着は、レースの少し角度を変えれば見えそうな感じの布の面積が少ないセクシー系のものだ。絶対普段使いしないような、所謂勝負下着。紅千の真白い肌と相まって、十代後半に入ったばかりの女の子とは思えない、色香がある。
(まあ、少し物足りない気もするけどね、オッサンからすると)
まだまだ若い、というか色香も乗り切れていない。
「姫さん」
阿伏兎が諭すように呼べば、びく、とその肩が震えた。
「……阿伏兎は、私の事、嫌い?」
挑発的な表情はない。
泣きそうな顔で紅千は阿伏兎を見下ろす。赤い瞳は歪められ、紅く塗られた爪は僅かに震えていた。はぁ、と阿伏兎がため息を付くと再び体が大きく震えた。ああ、そんな怯えなさんな、と阿伏兎は腹に紅千をあげたまま体を起こした。そして、右腕を紅千にまわしてなだめるように背中を叩いた。――昔から、泣きじゃくる紅千を落ち着ける方法はこれしかなかった。
「泣いてない……っ」
「姫さん、これしないと落ち着かなかったでしょうが」
昔っから。
何か辛いことがあると阿伏兎のところへ逃げてきていた。他の大人たちが自分を助けてくれないことはわかっていたからだろうが、たしかに、子供が泣いているのを見ているのは気分が良くなかった。宥めて、飴玉あげれば、紅千は涙で濡れた目のまま阿伏兎を見上げて笑った。あの頃と、何も変わってないなどとは――もう言えない。
「はぁ……」
「……阿伏兎?」
自分を見上げてきた紅千の後頭部を押さえてそのまま唇を塞いだ。
「んっ、……ふぁ」
ほら、見たことか、やっぱり何も知らない。舌の使い方ひとつ知らない子供が、と思いつつ阿伏兎は紅千を押し倒した。ベッドに押し付けるようにしながら、キスを繰り返す。角度を変え、途中で息をさせるように離す。ぷは、と息をしたのを確認した再び唇を押し当てると、今度は舌を押し込んだ。びく、と怯えたように震えたが、ここまでけしかけて逃げるのは許さない、と阿伏兎は僅かに身じろぎした紅千の足を自分の足で押さえ込んだ。
「……っん、あ、……あぶ、と」
「姫さんからけしかけてきたんだろ?」
――逃げんなよ、と唇の端を舐めながら言えば、頬を赤く染めて、紅千が小さく頷いた。
いい子、と頭をなでて額にキスを落とす。こういう時片手が無いのは不便だなとは思うが、まったくできないわけではないからいい。ブラジャーを片手で下にずらして胸に噛み付いた。
「んっ、あ、っ」
噛み付いたところに舌を這わせる。舌と、唇と歯で愛撫すると、紅千がもどかしそうに身をよじる。
「くすぐったい?」
「……ん、あんまり、よく、わかんない……」
「ま、初めてはそんなもんだ。オッサンにまかせて大人しくしてなさいな」
鎖骨辺りに噛み付いて痕を残す。むぅ、と頬を膨らませた紅千は阿伏兎を睨みつけている。
「阿伏兎は初めてじゃ、ないんだ」
「そりゃ、この年になってまで女に手を出したことがないってほどじゃないな。それに、ここ宇宙海賊春雨よ? 団長だって女の一人や二人知ってるだろうさ」
男の習性だ、気にすんな、と阿伏兎は紅千への愛撫の手を止めず、片手で下着の紐の結び目を解くと、紅千を何もまとわない姿にした。傷一つ無い。まあ、夜兎の生命力は高いから怪我をしても痕が残らない。故に紅千の肌はどこまでもなだらかで綺麗だ。その中で――一つ、紅く咲く紅い痕がやけに目立つ。
「……っ」
「今更照れんなよ」
散々オッサンに絡んできておいて、と薄っすらと笑いながら紅千の肌を舌でなぞる。片足を肩にかけさせると、足を開かせる。流石にそこまでくると羞恥心が出てきたのか、紅千が顔をそらして枕に顔を埋めるように必死だ。柔らかい太ももにキスしたり、噛み付くと、反射なのかもう片方の足が、びくん、と浮いた。こんなんで、照れててこの先どうすんのかね、と思いつつ顔を秘部に近づかせた。
「!? 阿伏兎!」
「何だよ、姫さん」
「〜っ、ま、って」
「今更……こういうことするってわかってて今まで誘ってきてたんじゃねえのか?」
「あっ、や、やめっああ!」
バタついて抵抗しようとする足を膝裏から掴んで抑えるとしっかりと足を広げさせるように動かした。俺、今、口しか使えないから、と言えば、紅千はわなわなと体を震わせた。舌で入り口の少し上にあるしこりを押した。
「ひぅっ、や、あ、んっ、ひあっ」
(おー、いい反応)
ぐり、と舌で押しつぶすと背中をのけぞらせた。背中に走ったびりびりとしたような電流の感覚は全く知らない感覚だ。シーツを掴み取って、喘ぎが止められず、口が閉じられない。ちゅう、とそれを吸えば、甘い声が上がった。腰を抑えて逃げないようにしていたが、既に体に力は入っていないようで、腰にかけていた手は外した。そして、その手で秘部をなぞる。随分と濡れてきており、なぞっただけで指に絡みつく愛液を眺める。
まだ、何も受け入れたことのないそこに指を一本入れる。
「ひ……っ、あ、あぁ…っ、んっ、は、」
「余裕のありそうな顔ももうねぇなァ、姫さん」
普段からそれくらいしおらしかったら可愛らしいもんだが、と指を引き抜きながら体を起こすと服を脱ぎ捨てた。片腕は相変わらずなく、紅千はその鍛え上げられた体を眺めて、ふと、笑った。今、自分は、阿伏兎に抱かれている。――女として。そう、思えば、ぶるりと身が震えるほど嬉しかった。
「んな、顔しなさんな。――手加減できなくなりそうだ」
まだまだ濡れ具合が足りないかもしれないが、夜兎の体は頑丈だ。多少無理しても問題はないはずだ、と阿伏兎は自身のそれを取り出した。その大きさに、紅千は目を見開いた。
「……? 何、それ」
「あ? そりゃ、俺の息子さんだな」
「…………大きすぎない……?」
怖じ気付いたわけではないが、待ってほしい、と紅千は腕で体を起こして、後ずさろうとした。確かにしたいと言ったのは自分だし、その気持は変わってないが、自分は処女だ。そんなもの、受け入れられる気がしない。絶対に無理だ、と思った。
「無理じゃねえよ、入るから大丈夫」
「痛くないとは言わないのね!?」
「そりゃ、痛ぇよ、普通に」
初めてだしな。
逃げる紅千の足を掴まえて無理やり引きずり戻した。そして、足を開かせて、ベッドに押し付ける。
「あ、あ、やっ、阿伏兎……っ」
「はいはい、大丈夫〜、息はいてー」
「……っ、あ、あああ、ひっ、ひぐっ、あ」
まだまだ狭いそこに無理やり押し込んでいけばさすがの紅千の表情も曇った。奥までは行けそうになく、紅千は口を開いたまま、ぱくぱくと酸素を求める魚のように動かしている。目は見開いて天井を見ている――といっても、おそらく視界に入っていっても意識などしてないだろう。そういう顔だ。
「ひ……っ、あ……んっ」
口を塞いで舌を絡める。キスされると安心するのか、そのまま少し頭をなでてやると力の入っていた体が少しだけ弛緩した。再びゆるゆると腰を動かすと、阿伏兎を一番奥まで迎え入れる。こつん、と奥まで入ったのを確認して、阿伏兎は紅千の唇を解放した。
「ひ……っ、は…っ、ぁ……あう……」
とろけた表情で阿伏兎を見上げる紅千は浅い呼吸を繰り返してシーツを掴んでいた手をゆっくりと阿伏兎へと向けた。
「阿伏兎……っ」
「……煽んな、紅千」
阿伏兎は紅千の腰をつかむと律動を初めた。
* * *
「はぁー、あ、っ、あぶ、阿伏兎っあ、ひぐっ、あ、あっ、ひあっ、」
「……っ、紅千」
腰を打ち付けながら阿伏兎は顔にかかった紅千の髪を払うと紅い瞳が蕩けている。どろどろに蕩けた紅千の中は阿伏兎をしっかりと受け入れている。先程まで処女だったとは思えないほどに。すでに数度射精し、紅千も阿伏兎も汗や、互いの体液でぐっしょりと濡れている。はっ、と阿伏兎は息をつくと、一度紅千から自身を引き抜いた。
「あ……っ、」
「残念そうな顔しなさんな、まだ、終わってねぇよ」
阿伏兎は片手で器用に紅千をうつむかせると、腰を叩いて尻のみ浮かせさせた。紅千はゆるゆると腰を上げて枕に顔を埋めた。
「ひっ、あ、阿伏兎……っ、あ、あああっ」
「……は、紅千、いい子、いい子だなあ」
奥まで押し込んで覆いかぶさるように重なった。髪をなで、耳を甘噛して、律動した。肌が合わさる音が甲高く響いてる気がして、紅千はたまらなくなった。望んでいたことが起こっていることが、たまらず快楽を加速させる。喘いで開けた口に指を突っ込まれた。
「んぐっ!?」
「噛むなよ、紅千」
言われたとおりに舌を指に絡めた。噛まないようにと唇をすぼめる。阿伏兎に指を出し入れされるのが、中に阿伏兎を突き立てられている行為に似ていて、たまらなく気持ちが良かった。口の中を犯されている事実がすごく気持ちいい。
「んっ、んっ、ふー……ふん……っ」
「気持ちよさそ―だな、紅千」
「んっ、んんっ」
中も締まって、気持ちいいけどな、と阿伏兎は紅千の口から指を抜いた。唾液がしっかりと絡みついて糸を引いている。律動を繰り返して、奥を何度も犯せば、紅千は身を震わせた。互いに限界が近い。律動を早め、阿伏兎は紅千を抑え込むように更に覆いかぶさる。紅千の細い体ではすっぽりだった。
「あ、あ、あーっ、あ、ぶと…っ、ひ、ん……あっ、あああ」
「……くっ」
奥に射精すると、阿伏兎はしばらく余韻に浸るように目を閉じて紅千に覆いかぶさったままだったが、それを終えるとゆったりと緩慢な動作で起き上がって、紅千の中から引き抜いた。ぶるり、と身震いする紅千の中からは白濁がどろり、と溢れ出てくる。
(あ……こりゃ、まずかったな)
下手すりゃ妊娠かもしれない。と妙に冷静になってきた頭が理性で訴えかけてくるが、本能にまかせてしまった以上もうどうしようもないな、と阿伏兎は半ばあきらめたような顔で、紅千の髪を撫でる。うっとりと、眠たそうな紅千は阿伏兎の手に擦り寄ってくる。
「……阿伏兎………」
「はいはい、ここにいるから。もう寝なさいな。後始末はおじさんがしておくから」
「ん…………ちゅー」
「はいはい」
言われたようにキスすると、紅千は満足そうに笑って眠った。
その髪をなでて、阿伏兎はとりあえず、風呂の支度だけしてくるか、と立ち上がった。