最期こそ美しくあれと願う
夢を。
見た。
「……、アスナ」
ふと目を開けた先、女の姿は既になく呼んだ名前に返事はなかった。薄暗いのを見るとまだ夜明け前。静まり返った空気から察するに既に宴会は終わっている。ベッドに寝ているのは自分ひとりであり、アスナの姿は当然としてなかった。シーツに残るのは一人分のぬくもり――ということはアスナは随分と前にベッドを抜け出しているのは容易に想像がついた。ゾロはベッドから降りると素足のままアスナを探して、医務室の奥にあるアスナの小部屋から外へ出た。見聞色の覇気を使って探すまでもない、すぐに見つかった。
夜の月の下。
結ばれていない赤い髪が潮風に流されて揺らめいている。まるで、月に、空に連れ去られてしまうような錯覚すら感じる細い小さな背中。――服は来ていなかった。誰もいなければいいという問題でもあるまいに、女は何もまとわず、ただ月を見上げているだけだった。
「おい」
静寂を破ったゾロの声にアスナは振り返った。ゾロが来ていたことを知っていたのだろう、わずかに視線を向けるばかりで何も答えない。再び月へと戻る視線。ゾロは少しばかりのいらだちを感じて、アスナを抱きしめた。
「何だ、恋しいのか」
「……うるせぇよ」
けたけたと笑った。
アスナは何も言わずにそっとゾロの腕に手を添えた。
「そういえば、坊やは誕生日だったか」
「……おう」
「おめでとう。人が年を取るのはあっという間だなぁ」
感傷にふけるように女は呟いた。
ゾロはそうだな、と答えてアスナの肩に顔を埋めた。
(早く追いつけねぇかな)
そんな願望を思えば、アスナがクスリと笑って、ゾロの頭を撫でる。
「焦るな」