私は貴方を
リーヴィは夜中に目を覚ました。夜はまだ明けないのか外は暗く、辺りも静まり返っている。時折、警備の者たちが巡回の来ているのか足音が僅かに聞こえるがそれ以外の音は基本的には耳には入らず、ただひとつ聞こえてくるのは隣で眠る――ラインハルザの寝息だけだった。
(……私も、また寝よう)
彼の腕の中に戻るように体を滑り込ませると、わずかにラインハルザが身動ぎした。僅かな気配でも起きるのは長らくを軍人として生き、その後盗賊に身を落としても戦いの中で生きてきた男の性だろう。僅かに開いた右目がぼんやりとリーヴィを探した。
「……リヴィ」
声がでないリーヴィは静かに、胸に顔を寄せた。その感覚にリーヴィがここにいることを悟ったのだろう、何も言わずラインハルザはリーヴィを抱きまくらにするように抱きすくめると再び目を閉じ、リーヴィの長い髪を撫でた。
眠れないの、と合図するようにラインハルザの腕を指で叩く。
それでわかったのか、ラインハルザはあー、としばし声を出した後、そうだな、と答えた。リーヴィを少しだけ持ち上げて顔が向き合う位置で下ろす。
「目が冴えちまった」
リーヴィはくすりと笑う。そして、眠れない子供にするように優しくその頭を抱く。長い、しかしながら手入れなどざっくばらんにしか行われていないせいか硬い黒い髪を指で撫でる。
「お前も眠れねえのか?」
リーヴィは静かに首を横に振る。眠れないわけではない、ただ目が開いてしまっただけだ。ラインハルザは特にそれ以上は聞かず、そうか、とリーヴィにされるがまま横になっていた。眠れないのなら、このままでもかまわない、とリーヴィはラインハルザの顔に自らの顔を寄せる。
「リヴィ、そろそろ寝るぞ」
くす、と笑って眠れるの、と口パクすると伝わったのか、うるせぇ、ともう一度抱きすくめられた。
額が合わさる。ふと、ラインハルザの視線が首元へ向いた。それを察したリーヴィは何も言わずにラインハルザの額にキスをする。大丈夫、もう大丈夫よ、と言い聞かせるようにラインハルザに抱きついた。
おやすみ。
声の出ない声でそう伝えると、リーヴィは目を閉じた。