子供のように
「阿含、年越しそばは?」
「食う」
「ん」
台所から居間のこたつへと声をかけると、完全にこたつむりになっていた阿含から返事が来たので、紅葉は頷いてそばを二人前取り出した。天ぷらはスーパーで買ってきたものだが、文句を言わせるつもりはなかったし、そばつゆも準備はできている。後はそばを茹でるだけだ。
本当なら実家に帰ろうかとも思ったが、阿含はなんとなく実家に帰りづらかったのか、紅葉が実家へ帰ろうかと思った日に荷物を持ってやってきた。おかげで帰るわけにはいかなくなったので、葉夜には実家に帰ってもらって、雲水にはこちらから連絡を入れた。すまない、と謝られたが仕方のないことだ。
そばを持ってこたつに行けば、阿含が散らかしていた雑誌を適当に払って、こたつの上を綺麗にした。
「天ぷらは作る気なかったので、スーパーで買ってきた」
「おう」
夕食は既に食べ終わっていて、これは本当に年越し前の軽食程度のものだ。だからあんまり重たくしないように具も少なめにした。元旦は互いに一応は実家に顔を出さなきゃならないから、向こうで一杯食べてくると思ったのだ。
「食べたら、初詣行こう。んで、そのまま自宅帰る、と」
「……おう」
今年はどんだけ帰りたくないんだ、こいつはといいたくなるくらい反応が鈍いが仕方ない、と紅葉はそばつゆを啜った。さすが父さん直伝のレシピだ。美味しい。
「阿含」
「ん」
「来年も一緒に年越しできたらいいね」
「……そーだな」