満開の愛
ばさ、とくれはの前に差し出されたのは大輪の花束である。アネモネやアルストロメリア、チューリップにかすみ草の大きな花束を抱えた森が跪いているのに目をぱちくりさせながらくれはの腕にはあまり大きなブーケを受け取って埋もれてしまいそうになりながら森を見た。森はいつもどおりのポートマフィアの首領としての黒い外套に綺麗な白の襯衣を着ていて笑っているではないか。――といっても、くれはが森から花をもらうのはこれがはじめてのことではなかった。
まだ、二人が出会って間もない頃は、森は先代の主治医だったし、くれはは先代の子飼いの暗殺者だった。当然のようにすれ違いばかりで偶然にも会えたときに、森が一輪、くれはに花をくれたのだ。その花を花瓶に差して、仕事以外はそれを眺めているのがたまらなく好きだった。結婚してからは服やぬいぐるみの贈り物が絶えなかった時期があったが今はそういったものも鳴りを潜めており、久しく何も受け取っていなかったなと思った矢先にこの大きなブーケだ。
「どうかな、綺麗だろう?」
花屋さんで見繕ってもらったのだよー、と楽しげに笑う。そうですか、といいながらなんとかブーケに埋もれないようにくれはは顔を上げた。花のよい香りに目を細めた。
「懐かしいだろう、昔は一輪だけだったけど……せっかくだからブーケにしてみたんだ」
重たいだろう、持つよ、と森は再びくれはからブーケを受け取り、くれはも抱き上げた。紅い花が多いだろうか、とくれははブーケを眺めながら考える。すると、森と目があい、自然と目を閉じると唇に触れるだけの接吻。たまらなく幸せそうに目を細める森が視界一杯に映り居たたまれなくなりくれはは視線をそらそうとして、しかし、
「ちゃんと私を見て」
森の声に制止されて目が逸らせなくなる。たまらない恥ずかしさでくれははうっすらと瞳に涙を貯める。すると森は楽しそうに笑って額に接吻を落とす。花束ごとくれはを抱きしめて歩き出す。
「お花は花瓶に挿しておこう。ああ、気に入ったからと時間を巻き戻す必要などないよ。いくらでも用意させよう」
――今はいつでも、会えるのだから。