がさらわれてしまいそう


 白いワンピースのフリルが彼女が駆けてゆく度に揺れて、森鴎外は目を細めた。夏の日差しがいつもよりも眩しく見えて、その先にいるくれはの姿が霞んで消えてしまいそうな錯覚を感じる。美しい青い空の下に、たっぷりと広がっていく大輪の向日葵畑の中を駆けていくのをついていくように歩いていく。
「くれはちゃん」
 森の声にくれはは一度足を止めて、たっぷりのフリルを翻して麦わら帽子のつばを両手で持って振り返ると、ニコリと笑ってみせるだけ。再び走り出してしまう彼女に、少し呆れたようため息を付きながら森は足を止めずについていくことにした。真っ黄色の向日葵の中を夕日色の髪が流れていくのはとても美しいと思った。時折、陽炎の中に消えていくようにくれはの姿が消えてしまうのは、くれはが異能力で悪戯を仕掛けてきているのだろう。
「あまり遠くに行かないでね」
 おーい、と声を掛ける。陽炎の中に消えてしまっていたくれはが向日葵の茎の影から顔を出して、はぁいと大きな声で返事をして、再び向日葵の中へ。真っ白な雲が空の上に見えるようになると、森は一度足を止めて、額から流れ出てくる汗をそっと拭った。
「くれはちゃーん」
「はぁい」
 こっちだよー!
 向日葵の中からひょこと顔を出したくれはに柔らかく微笑みかけながら、森は見失わないように進んでいく。

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