驟雨の道を
しまった、と紅葉が思ったときにはすでに空は鉛色だった。学園から寮へと続く通学路の並木通りはすでに人がまばらで、遅くなってしまった暗闇には街灯の明かりがあるだけだ。月の灯りも差し込まないくらい暗い空にはぁ、とため息を付いて鞄の中を漁ってみるものの、折り畳み傘はなかった。
「あれ、おチビちゃん」
後ろから聞こえてきた声に振り返ると、巳影がヘルメットを片手にしていた。「あらー」といいながら、巳影も雨が振っている外を眺める。
「……乗ってく? 歩くよりマシでしょ?」
「雨だよ、大丈夫なの」
「おチビちゃんが俺を信じてくれるなら、ちゃんと運転するよ」
巳影が茶化すように笑う。飴を引き抜いて、紅葉の口の中へ入れてしまう。「舐めかけ……」と少し不満げに見上げてみる。巳影はちょっと持っててー、というので噛んで全て無くしてしまおうか、と思いながらカノジョ――バイクの方へと向かって雨に打たれて走っていった。
しばらくして、バイクのエンジン音が聞こえてきて、巳影がヘルメットを投げてくる。ヘルメットを着けて、バイクの後ろにまたがり、巳影の背中に手を回す。すでにしっとりと濡れているようで、すぐ帰るから待っててね、と言われる。どうせ、手を回したところで届かないので、前の方で制服のジャケットを掴む程度だ。やっぱり、バイクだと走るよりも圧倒的に早いので、殆ど濡れなくて済んだが、赤寮の方へ戻ろうとすると、巳影に腕を掴まれた。
「……何?」