梟と狼がになる話


 この世界には男女という性別のほかにもα・β・Ωの3種類の性別が存在している。進学にすら影響するこの性別が判明するのは中学生のころ。俺は学校の簡易検査で通知されたその紙を眺めて、軽く絶望すらしたものだった。

 検査結果
 "Ω"

 と書かれたその紙を眺めて、呆然とする俺に学校の専門カウンセラーは「あまり絶望せずに……」とこれからどうしていくのか、という詳細を話していく。Ωには、これから訪れるだろうその性別の苦難について説明と、正しい知識、オメガという性別に向き合っていくためのカウンセリングを受ける必要性があるからだ。カウンセラーが話す声が少しばかり遠くに聞こえる。
 ――そうか、俺はΩだったんだ。とどこか納得がいったような気もするし、これから先、何かできないことがあったとして、自分はΩだから、なんて言い訳してしまうんじゃないかって、思ったら少し悲しい気持ちになった。
 でも、今は薬もちゃんとある。医者である父に相談すれば、いい薬を紹介してもらえるだろうし、"本能"にあらがうことだってできるはずだ。
 俺はそんなことを考えながら、今後行われるというΩ専用の講習会の日程表を受け取った。恐らく、俺の双子の姉も別室で同じ説明を受けているはずだから、一緒に行こうと、後で声を掛けよう。二卵性といえど、俺も葉夜も同じ双子だから。きっと、性別だって一緒だったはず。なんて、少し自分を慰めながらカウンセラーに頭を下げて、部屋から退室した。


* * *



 一度決まった性別は変わらない。Ω性に与えられた本能にあらがいながら、俺と葉夜は高校生になった。バレーはやめた。Ωだったから、とかそんな理由ではなかったけれど、やはり偏見はついて回った。Ωのくせに、と陰で言われていたのを聞いてしまってからかはどうしてもバレーをする気は起きなかった。今でもバレーは好きだ。葉夜と一緒に家でパス回しをする。葉夜だけが、自分の理解者のような気がした。いつか、自分たちに運命の番と呼ばれるαが現れたとして、どうするのか、といわれると二人ともまだ漠然としていた。
 そんな、"運命"に、自分の生涯が縛られる番を委ねるのは、少しばかり怖かった。葉夜は「ロマンチックでしょ〜」と笑っていたけれど、その内心で、αがΩを虐げたりするニュースが後を絶えない以上、怖がっているのは明白だった。現実、高校生になるまでの間に、俺も葉夜もΩだから、という理由だけで何度もαに襲われかけた。でも、強姦されたところで、αに罪らしい罪はない。αがΩを襲うのは"当然"なのだから。高校ではΩであることをできるだけ悟られないようにしよう。そうすれば、安全に生活できるはずだ、と俺は思っていた。

 ――木兎光太郎に出会うまで。


* * *



 ――こいつが俺の番だと思った。

 木兎光太郎はαだった。まだ、自分の番だと思ったΩには出会えてない。その強烈なフェロモンからか、何人かのΩに言い寄られたりもしたが、別段それに酔ったりすることもなかったし、興味なんてわかなかった。目の前で、自分が取りこぼしたボールを拾った女子生徒――まだ名前はわからない――を見た瞬間に、雷にでも打たれたかのような衝撃が全身に駆け巡った。
 こいつだ。俺が探してた番は絶対にこいつだ。
 甘く、薫るこれが所謂フェロモンと呼ばれるものなのだろう。こんなに芳醇な、何とも筆舌にしがたい香りなのか。吸い寄せられる、引き寄せられる。
「君が落としたの?」
 声が聞こえて現実に引き戻される。ぽい、とボールが投げられて木兎の手の中に落ちる。無表情で、鉄仮面で、何を考えてるか、まったくわからなかった。自分より、ずっと小さなその体はひどく細くて、白い肌と、日本人離れしたオレンジの髪に、緑色の瞳。ごくり、と生唾を飲み込む。それじゃ、と足早に去っていくその背中に掛ける声も見つからずに呆然と立ち尽くしていると、「木兎ー!」と同じバレー部の1年の木葉の声が聞こえる。
「お前、何してんだよ!!どこまでボール拾いに行ってんだ!」
「……見つけた」
「あ!?」
「俺の番」
 木葉はその時の木兎の表情に、αはやっぱりβとは別物の存在なのだと認識させられたような気がした。確かに、日頃の才能から見てαのエリートオーラのようなものを感じ取っていたが、それとは別に何か、明確に違うものがある。今の木兎はまさしくそうだった。今までΩのフェロモンとか感じたことねえよ、といっていたし、頭の良さとかがなかったせいかあまりαらしくないなと思っていた部活仲間が、ここまで変貌するとは思ってもみなくてついつい後ずさった。

「絶対にアイツは俺の番にする――誰にも渡さねえ」



 家に帰ってきて、紅葉ははぁと深くため息をついていた。珍しく父が早く帰宅して、ご飯は俺が作るから紅葉は休んでいたら?といってくれたため、ぼんやりとリビングでテレビを眺めていたのだが、今日出会った銀髪の背の高い男子生徒――恐らくαだ――を思い出していた。
「どうしたの?ご飯、お父さんが作るんだから心配いらないよ」
「そこは何も心配してないよ。……今日、αに会った」
 食事前だというのに、せんべいを食べていた葉夜の手が停まった。ばりん、と煎餅が割れて、パラパラとテーブルの上に落ちる。え、そ、れってと、まるで機械仕掛けに出もなったように片言になっていく姉の姿に、紅葉ははぁと再び覆筋ため息をついた。お茶をすする。
「すごく、強烈なαだったなぁ」
「呑気に言ってる場合?」
「しかも、同じクラスだった気がする、あいつ」
「え、何それ」
「俺が死んだらよろしくな」
「紅葉ーーーーーー!!!!」
 そんな茶番はさておいて、と紅葉も煎餅に手を伸ばす。宮城にいる従兄弟の家から送られてきた煎餅はとてもおいしい。本当にどうなるだろうか。αのフェロモンに当てられて、Ωの発情期が早く来る、なんて話も聞かなくない。このままで、生活できるのかな、などと思いながら紅葉はばりん、と煎餅をかみ切って割った。何事もないことを祈りたいしできれば、関わり合いになりたくないなと思った。
 けれども。

「お前、Ωだろ?」

 誰もいない早い時間の教室。いち早く登校してくる紅葉の次にその男はやってきた。いつもなら、紅葉が来てから向こう30分くらいは静かな教室だというのに。何のために始発の人の少ない電車で来てると思ってるんだ、と紅葉は読みかけの本を手に、昨日の男子生徒をにらみつけた。
「……違う、俺はβだよ」
「何で嘘つくんだよ」
「どうして嘘だと思ったんだよ」
 紅葉は男から本へ視線を移した。誘われるような、何とも言い難いフェロモンを感じる。ああ、これが運命、本能という奴なのか、と指先が震えるのを隠して、紅葉はページをめくった。表情をなくすのには慣れてる。無表情などいつものことだ。
「あ、俺、木兎光太郎!お前、名前は?」
 ――クラスメイトの名前も知らないのか、と思ったが、自分もさして変わらないのだからあえて口には出さない。しかし、名乗る気は到底起きず、どうしようかと逡巡していたのだが、ちらりと見た木兎の瞳に、気圧された、というか名乗らなくてはならないような気分になった。
「……う、右京、紅葉」
「くれは?」
 漢字が想像できなかったのだろう。紅葉は紙を取り出してシャープペンを走らせた。紅の葉と書いて、紅葉だよ、と教えるとへぇ、と目を見開いて感嘆した後、木兎は紅葉を見つめて笑った。
「めちゃくちゃ綺麗な名前だな!」
「……!」
 ――うれしかった訳じゃないぞ。と紅葉は首を横に振って、そう、とそっけなく返した。再び、本のページをめくり始めると、木兎が話を切り出してきた。恐らく、これが本題だったはずだ。
「なあ、紅葉、俺と番になろう?」
 ほら、やっぱり。と紅葉は思った。αが掛け値なしにΩに話しかけてくるなんてそれくらいしかないはずだからだ。頭の中を駆け抜ける、二つの言葉。"本能"と"理性"がひしめき合って、紅葉を刺激する。紅葉は理性的な人間だった。恐らく、本能をこれまでまともに抑え込んでこれたのも、理性的な自身の性格によるものだと思っている。番になろう、といったっきり木兎は何も話さない。紅葉も何も言わずにページをめくっているから、他に誰もいない教室は静まり返っている。十分に間を取ってから、紅葉は本を閉じて、木兎の瞳を見た。

「嫌だ」

 時が停まったように二人の間に静寂が走る。紅葉の決意の固い瞳が木兎を見つめ返していて、まさか、と木兎は思った気持ちをぬぐえなかった。だって、運命なのに、という言葉が浮かんで、それを読んだ紅葉が突っぱねるように言葉をつなげる。
「俺は、"運命"とか、"本能"とか信じない。αとかΩとか、そんなものには振り回されたくない。俺は、お前と番になんてならない」
「じゃあ、せめてバレー部のマネージャーになってくれ!!」
「それも嫌だ」
「何で!!」
「……バレーボールは嫌いなんだ」
 そういって、紅葉は立ち上がった。もうこれ以上話をしたくない、っていう意思表示みたいなものだったが、木兎はお構いなしに紅葉の手を掴んだ。木兎の大きな手には細すぎる紅葉の手首を強く握られて、紅葉は顔を顰めた。離せ、といいかけて声が出てこなくなったのはそこにいるのが完全な"α"で、目の前にいるΩを逃がさないようにする、獲物を狙った猛禽類の様な顔つきだった。
 ぞく、と背中に走った寒気と、今逃げなければ喰われるといった危機感を感じた。しかし、それでも動けないのは恐らく、このαになら喰われてもいい、という自分のΩとしての本能。頭の理性的な部分と、心の本能的な部分がせめぎ合って、訳が分からなくなって、紅葉は動けなかった。

 唇に触れた、暖かくて柔らかい少し厚い唇。最初は押し付けられているだけだったそれが、段々と激しくなっていって。舌で唇を舐められて無理やり開けられると口の中に舌が入り込んでくる。ぬる、とした感触に力が抜ける。ん、と吐息交じりの声が毀れる。少し長く感じていたそれが、離れて、名残惜しいなんて思ってしまった自分が嫌いになりそうで、紅葉は強く木兎の胸を押した。
「…っ、お前っ」
「絶対に紅葉は俺の番になるよ」
「……!」
「絶対に番にするし、バレー部のマネージャーにもするからな!」
 ああ、これがαだ、と思わされるほどだった。これほどまでαらしいαなんて見たことないぞ、と思いながら紅葉は頬に熱が集まっていくのを感じていた。心臓がバクバクと音を立ててうるさいし、頭の中がごっちゃになって、反射的に手が動いていた。ばちん、と大きな音が鳴ったときに、3番目に入ってきた生徒が目を見開いて、木兎、お前、何やらかしたんだよ、と呟いていた。



「なぁ、紅葉ぁ、バレー部のマネージャーやってくれよぉ」
「もう男子バレー部には1年のマネージャーが二人も入ったんだろ?なら、いらないじゃないか」
 あれから木兎は毎日毎日飽きもせずに、紅葉をマネージャーとして勧誘してくる。マネージャーになれ、と声を掛けてくるが番になれ、といってこないのは彼なりの配慮なのだろうか、と思いつつもあまりそういうのを考える性格にも見えず、紅葉はちらりと木兎を窺った。毎日毎日、休み時間になる度に自分の席の近くにやってきてはマネージャーになれという日々。もう聞き飽きてきたが、言い飽きないものかな、とあきれた様子でため息をつく。
「俺は紅葉もマネージャーに入ってほしいんだよぉ」
「……俺はバレーなんて嫌いだ」
「それは嘘だ」
「……え?」
「紅葉、本当はバレー好きだろ?だって、俺がバレー部の話すると、何も言わずに聞いてくれるし、嫌いならお前、絶対聞かないで、話すなぁ、とか怒るだろ?」
 まさしくその通りだった。もっと、それらしい態度、取っておくべきだったなと思いながら紅葉は本で顔を隠した。
「今日、見学に来いよ!!」
「はぁ!?」

 無理やり引っ張られていった体育館。懐かしいバレーシューズが体育館の床を擦る音、ボールが床にたたきつけられる音、セットアップの時、ボールに触れる手の音、選手たちが走る度、無理に忘れようとしていたバレーへの情熱をゆる起こされる気がして、一緒についてきてくれた葉夜が頭を撫でてきた。
「やれば?マネージャー」
「……」
「だって、やりたいこと我慢してる紅葉はつまらなさそうだよ。何なら、俺も一緒にやろうか」
「……葉夜」
「木兎のことはさておき、さ。せっかく高校きたいんだし、やりたいことやらなきゃ損じゃない?」
 Ωだとか、αだとか、後でどうにかなるよ。と楽天的に笑う姉を見て、握っていた入部届を眺めた。決して、木兎の言葉に揺らがされたとか、そういうわけではなくて。元々やりたかったことをやろうと思っただけだ、と何度もいいわけ付けて、両親の前に入部届を見せると嬉しそうにされた。マネージャーだから!と何度も何度も説明したが、二人は生暖かそうな笑みで紅葉と葉夜を見つめて、紅葉にはどうしても居心地が悪かった。
 紅葉がマネージャーになって喜んだのは木兎で。休憩になれば真っ先に紅葉のところに走り寄ってきて、今のはどうだった?これはどうだったか、なあ、見てたか?と聞いてくる始末。それに適当に答えていたら、いつの間にか木兎の世話係的なものを与えられてしまって、あまり関わり合いになりたくないなと思っていた木兎は身近な存在になってしまっていた。
 ――まさか、これが目的で……とも思ってみたが、そんなことを考えられるような奴ではないだろう、と紅葉は首を横に振った。それでも、バレーに関わってる時間は楽しかったし、木兎と一緒にいるのが段々と心地の良いものに変わってきてることは、紅葉の中ではっきりとしていたことだった。


「……っ、はぁ…」
 まずいな、と思った。こんなに早く来るなんて、思わなかったから薬はバッグの中だ。紅葉の体を駆け抜ける、Ω特有の感覚――発情期だった。体が火照ってうまく動かない。思考もうまく回らない。それでも、木兎からは離れなければ、と思った。今日は部活をさぼって帰ろう、何とか壁伝いに立ち上がって女子更衣室に置いてきたバッグと着替えを取りに行こうと思ったところで、誰かにぶつかった。――まずい、と思ったが顔を上げて、さらにその気持ちが強くなった。
「ぼ、く……と」
「すっげぇ、甘い匂いする。なぁ、紅葉、発情期か?」
 壁に押し付けられる。αのフェロモンが余計に発情期を刺激して、体に力が入らなくなって、ずるずると足から力が抜けて、床に座り込んで木兎を見上げた。

 ――犯してほしい
(だめだ)
 ――今すぐこのαと番いたい
(だめ)
 ――理性なんてどうでもいい
(だめ)

 本能が叫ぶ。紅葉は体を抱え込んで、必死にこらえようとする。薬さえ、のめれば。と紅葉は立ち上がろうとするが、力が入らない。体の芯から疼くような感覚。
「遠くからでもわかった。紅葉の発情期だって。こんなにΩのフェロモン垂れ流しにしてたら、βだって釣れるぞ、紅葉」
 木兎が紅葉の頬に手を伸ばす。体が熱い。真っ白な肌は、薄くピンクを帯びていて、艶やかで、今すぐに襲いたくなった。紅葉も頬に触れる木兎の手に、とろん、と目を細める。ああ、もっと触って、もっと深くまで。無意識的に手にすり寄る。
 ――俺の運命の番。わかってる。わかってるんだ。
「なぁ、紅葉、このままさ、俺と番になるのと」
 木兎が頬から首筋へと指を滑らせていく。たったそれだけの行動なのに、紅葉の体は過敏に反応する。びくん、びくん、と跳ねる体。耳元に顔を寄せて、囁く。

「他の男に無理やり犯されて番にされるのと、どっちがいい?」

 そうだ。今、ここを逃れたとしても、今の自分じゃ、他のαに捕まったら抵抗なんてできない。絶対に無理やり犯されて、番にされるかもしれない。好きでもない奴に、運命でもない奴に一時の、紅葉のフェロモンに犯された、αに。――一気に怖くなった。
 カタカタと震えだす手で、木兎の服を掴んだ。
 もし、番になるなら。
 犯されるなら。

「ぼ、くと………たすけ、てぇ…っ」

 ――漸く、来た。と木兎は舌なめずりした。
 キスしながら、リボンを外して、シャツのボタンを引きちぎらん勢いで開ける。くちゅ、と舌が擦り合わされる度に紅葉から吐息が漏れる。ぴく、と震える体を抑えつけながら、くるりと反転させると、その項に思いっきり噛み付いた。
「あっ、ああっ!!」
 胸の頂をいじりながら、噛み付いた歯に力を入れる。ぎりりと肉をかみちぎらん勢いで噛み付いていると、紅葉から嬌声が上がった。
「ひゃ、あっ、い、いた…っ、あああっ」
 両の胸の飾りはすでに硬く主張しており、木兎が指を擦り合わせるように摘み上げると喉を晒して甘い声を上げる。もう挿れたい。紅葉のスカートの中に手を突っ込むと、少し紅葉の顔に不安そうな色がともった。大丈夫、といいながら頬や額にキスをする。パンツを脱がせながら、硬いだろうけれど床に寝かせる。足を閉じようとする紅葉の膝を捕まえて、無理やり開いて秘部を見る。すでに濡れて、男を迎え入れる準備ができているのは発情期のΩだからだ。とろとろになっているそこを指でなぞると、くちゅくちゅと厭らしい水音が聞こえてくる。
「あっ、はぁんっ、やっ、ぼ…ぼく、とぉ…っ、んぁあっ!」
 指2本をあっさりと受け入れた秘部を慣らすように、木兎は指で中を押し広げていく。多少のことなら耐えられるだろうが、痛い思いだけは絶対にさせたくない。大事な、大事な番なんだ。と木兎は少し性急ながらも、丁寧に中を慣らしていく。指を曲げた時に擦った膣壁の触れる度に、膣が強く締まる。まるで指だと食いちぎられてしまうのではないか、と思うくらいだ。
(Ωやべぇ……)
 もう、苦しくて仕方ない自身を取り出す。反り返って主張するそれを紅葉の顔に近づけると、紅葉は目を見開いた。
「あっ……こ、これ…っ」
「舐めて?」
「えっ……?」
「ほら、紅葉、口開けろよ」
 唇に押し当てると、紅葉がおずおずと口を開ける。それに無理やりねじ込むと、んぐ、と鈍った声が聞こえた。両手を添えて、舌先で木兎の竿を舐める紅葉に、木兎は支配欲が満たされていく感覚がした。――このΩは俺のものだ。誰にも渡さない。一度、口から引き抜くと、追うように紅葉が顔を近づけてきて、ちゅ、と亀頭にキスをしてくる。再び先を咥える紅葉の頭を撫でる。咥えきれないところは手を使って木兎に奉仕してくる紅葉の口に再びねじ込むと、その中で射精した。
「んぐっ!!」
「頑張って飲み込めよ、紅葉」
 ごく、ごく、と何度か喉を鳴らす音がして、飲みきれず口の端から零れたそれを紅葉は指でぬぐって口にいれる。とろん、と恍惚の表情を浮かべて、自分から足を広げた。
「あ…っ、んっ」
「欲しい?」
「あっ、ほ、しい…っほしいよぉ……っ」
「ん、よく言えました」
 ちゅ、と額にキスして木兎は紅葉の中に自身を入れた。
「うわっ、きっつ……っ」
「あっ、あぐ…っ、んぐっ」
 無理に押し込んでる感が無きにしも非ずだった。十分に濡らしたつもりだったんだけどなぁ、と呟きながら、木兎は全て入れない状態で数度紅葉を揺さぶった。指が当たって気持ちよかった場所を擦りあげると、やはり嬌声が上がる。ここがいいのか、とそこばかり集中して狙うと、愛液が溢れてきて、膣の滑りが格段に上がる。体格差はやっぱり辛いものがあるんだな、とすでに30p近くある身長差に苦笑しながら、紅葉に覆いかぶさった。覆いかぶさると深く挿入され、木兎の先端にごつ、と肉壁が当たった。
「んやぁっ!!」
「うわ、ここにあたるとすっげぇ、締まる……ここ気持ちいい?」
「あ、そ、そこ、らめっ、らめぇっ!おかし、く、なるっ、やっ、やだぁっ!」
「紅葉ー、やめてほしいっていうけど、ここは俺を離さないぜ?それに、足だって俺を捕まえてるしさ」
 木兎の腰辺りに回された紅葉の足は木兎を離すまいと、力が入っている。おかげさまで離れたくても離れられない状態だ。言葉と体が裏腹に動いていて、まだ紅葉の頭の中のどこかに理性が残ってるんだなあと、木兎は頑なな紅葉の理性にため息をついた。
 ――壊れちゃえばいいのに、そんな理性。とその気持ちを体現するように、木兎は律動を始めた。嫌だといった奥をつきあげるように律動すると、膣が何度も何度も痙攣するように締まる。気持ちがいいのか、声が抑えきれずに上がり、それがさらに木兎を刺激する。番になったばかりのΩの発情期のフェロモンはそれまであまりΩのフェロモンに影響されたことのなかった木兎にもひどく強く感じて、より快感が強まっていく。
「あっああっ、ぼ、ぼくと…っ、ん、も、もう…っ」
「はっ、ん……俺も、だわ。一緒にいこ?紅葉」
 ぎゅう、と抱きしめると、紅葉が嬉しそうにしがみついてきた。ああ、不安だったのかな、とこの数週間一緒にいただけだったが、我慢ばかりしているように見えた番の頬にたくさんキスをする。
「ひゃ、あ、ああああんっ!!!」
「……くっ!」
 二人同時に達して、脱力して紅葉が呆然とする中、木兎は何度も紅葉にキスをする。そして、再び律動をする。
「んっ」
「もうちょっとな?」
「あっ、ああん」


* * *



 終わった頃には、完全に部活は終わる頃合いだった。二人ともさぼりなど、後で何を言われるかわかったものではないが、まあ、それは明日弁明するか、と疲れ果てて眠っている紅葉を抱き上げる。家まで送りたいけど、家わからないからなーと、双子の姉である葉夜に連絡を取ってみる。
Lineに「紅葉家に送りたいんだけどさー」って送ると、「何があった」とすぐに返されて、まずは、ここに説明しなきゃダメか、と苦笑いした。ん、と身動ぎした運命の番にキスする。
(多分、俺、明日全力で殴られるな)

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