行く年も、来る年もあなたと共に


 雪が降り積もり、夜も更けたせいか、人が外を歩く音すらしない静寂な家の周りにアスナは毎年のことながら、年の瀬の忙しさを思い出して、ふぅと漸く息をついた気分だった。
 おせちの準備もできているし、お餅の準備もできている。朝から大忙しで漸く肩の荷が下りると、アスナはリビングのソファに座り込んで、もうすでに夢の世界に落ちてしまっている弟の紫のふわふわとした黒髪を撫でながら、うとうとしだしていた。妹の翠は二年参りに部活の皆といってくるといって早々に家を出てしまっていた。牛島は家の関係で、年が明けてからしばし忙しいだろうと思っている。多分、年始にこちらに来ることはないだろう。翠が帰ってくるのは年が明けてからだ。紫はもう布団に入れてあげよう。と思い立ったアスナは、立ち上がると紫を抱き上げて、2階の部屋へ向かった。
 使用人たちがもう休まれるのですか?と聞いてくるが、首を横に振って、紫だけでも寝せてくるよと笑いかける。年末年始くらい家に帰っていいんだぞ、声を掛けたのにも関わらず、どうせ独り身です、と笑って答えられたのがちょうど1週間前の事だったか。そんなことを思い返しながら、紫を布団にいれると起こさないようにそっと部屋から出た。ああ、そういえば、部屋に資料を置きっぱなしにしてたな、と気づいてアスナは自分の部屋に向かった。せめて、年越しまで起きてるなら携帯とバレーの資料は必要だろうな、と思いながらドアに手を掛けると内側から開いた。
「えっ」
「アスナ」
「……若ちゃん!?」
「まだ起きてたか」
 牛島だった。アスナは目をぱちぱちさせながら、牛島の顔をまじまじと見る。何かあったのか、毎年、年末は家で家族と過ごしているはずなのに、とアスナはきょとん、と首を傾げる。
「若ちゃん、家は?」
「ああ、ちゃんと話してきた。というより、二人ともすでに休んだからな。……お前といたかった」
 手を取られて、そのまま腕の中へ。暖かくてほっとする。アスナはふわりと、微笑むと俺も、と牛島に伝える。そうか、と短くだけ答えた牛島はアスナをゆっくりとエスコートするように再びアスナの部屋へはいって行く。ここはアスナの部屋なのだが、牛島の部屋との通用口のようなものになっている。

「あ、明けたね」
「ああ」

 部屋で二人きりで迎えた新年は初めてでちょっと、ドキドキしてしまう。アスナはどことなく、顔が見れなくなって、目を逸らすが、アスナの顔を自分の方へあっさりと向けてしまう牛島に少しばかり、顔を赤らめてにらみつけた。
「若ちゃん」
「明けましておめでとう。……今年も、その先もよろしく頼む」
「……まさかそれ、これから、毎年いうつもりなの?」
 その先、を想定している牛島に、アスナは呆れを込めながらも、嬉しそうに笑った。
「おめでとう、若ちゃん。今年も、よろしくね」
「ああ」

 ゆく年も来る年もあなたと一緒に過ごしたいんです。

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