毛糸のマフラー
「寒い」
寒いよ、と再びつぶやいたアスナの鼻先は真っ赤だ。例年よりもずっと寒いという年明け、毎年恒例の初詣にやってきて、アスナは先程からコートで身を包むようにしながらも震えていた。
「おしるこでも飲むか?」
「今、列から出たら、時間かかるもーん」
幼馴染の結城の言葉にアスナは寒い、と言いながらも答えた。お参りが終わったらでいいよ、と言って、隣の結城に向かって手を差し出した。彼はその手を見て、きょとん、とした。アスナはむぅ、と顔をしかめて、その手を無理やり握った。
「手を差し出したら、握ってよぉ」
「悪い。……冷たいな、手袋は?」
「てっちゃんいるからいらないじゃない」
寒ければ手をつなげばいいんだよ。
そう言いながら笑ったアスナは、結城の手を強く握りしめて、指を絡めて笑った。そうか、と結城は口元に笑みを浮かべて、アスナの手を握った手を自分のジャケットの中に押し込んだ。
「それにしても、マフラーはどうしたんだ」
「忘れてきた」
アスナは悪びれる様子もなく言い切った。寒がりなのだから、それなりに準備してくればいいのに、という結城の小言は聞こえないふりをしてさむーい、と声を上げてみる。
「まったく」
少し呆れた声。
そして、首にかけられたのは結城の匂いがするマフラーだった。毛糸の温かいマフラーだ。
「俺がつけてたからまだ暖かいだろ」
「うん」
温かいよ、とアスナは笑った。とりあえず、手を離すきはなかったので、片手で器用に巻いた。本当は後ろでリボンに縛りたかったけど、そのためには手を外さなきゃならなかったのが嫌だった。だから、適当に巻くだけ。
「次からはちゃんと、自分のをしてこいよ」
「ん、ありがと、てっちゃん」
本当はね、玄関ではしてたんだよ、という言葉は飲み込んだ。
だって、してこなくて、寒いって言ってたら、きっと優しいてっちゃんのことだから、俺にマフラー貸してくれるよね、って思っちゃったんだ。
「ごめんね」