の買い物


 木枯らしが吹くこの季節にもなれば熱く着こみ、暖かくしている人ばかりが街中で目に付く。スーパーにいる親子連れもどことなく、厚着になっただろうか。紅葉はぼんやりとそんなことを考えながら、カートを押していた。野菜が並んでいるコーナーを物色しながら今日は何食べようかな、と空腹を訴えてぐるぐるとするような感覚を見回せる胃のあたりを摩りながら、隣を見上げた。
 相変わらずのドレッドヘアーにパッと見ただけでわかる――不良です――という立ち居振る舞い。先ほどから見る人見る人が、こちらを遠ざけて歩いているのが紅葉にはよくわかる。阿含と歩くといつもこれだから、仕方ないといえば仕方ない、と紅葉はふぅとため息をつきながら、肩を落とした。どうせ、何食べたいって聞いても何でもいいとしか帰ってこないような男だから、と紅葉は白菜を手に取った。後は何が必要かな、と片腕で彼の服を掴んでぐいっと引っ張ると子供に見上げられて泣かれていた阿含が後ろからいつもよりも遅い歩調でついてくる。
「鍋かよ」
 不服そうな声が上から降ってきたがそれに見向きもせずに紅葉は阿含の腕を引いて歩いていく。次はお肉コーナーだ。
「鍋はやだ?」
 野菜コーナーから精肉コーナーへ移る頃、漸く紅葉が阿含へ返答を求めた。どうせ寒いし、という紅葉の指先は少し紅くなっている。それを見下ろした阿含が掴ませていた腕を振りほどいた。急なその動作に、紅葉は視線を手に持っていた肉から阿含へと変える。元から少し大きめだった瞳は驚いてきょとん、としている。振りほどかれた手は少し宙に浮いていて、どうしていいものかと彷徨っている。
「つめてぇんだよ、お前の手」
 無理矢理つなぎ直して、手を自分のポケットの中に詰め込む。身長差のせいで、紅葉が少し体制を崩して阿含の方へ凭れ掛かってしまったが阿含は気にせず開いている手でこっちのほうがいい、と少し高めの肉を差し出してきた。でもその顔は寒さとは違う赤みをさしていて、紅葉もへへ、と笑って頬を染めた。
「阿含も雲水も葉夜も俺もいっぱい食べるから、いっぱい買えるこっちの肉」
「ふざけんな、お前」
 ポケットの中の手を、握り返した。阿含が一瞬びくり、と驚いた顔をしたが見下ろした紅葉は阿含には視線を向けておらず、でも、確かに薄く赤く染まった目元と、じんわりと伝わってくる体温の高さに互いの感情がリンクしていることを悟った。

(あーあ)
(らしくないなぁ)

 それから家に帰るまで、ずっと手をつないだままだった。家に帰ると葉夜に思いっきりからかわれて、阿含になぜかどつかれた紅葉は納得がいかなかった。

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