タイトル
寝てる。
それはもう、すやすやと。
紅葉はお風呂から上がってくるとソファの上で、阿含が寝ていた。疲れていたのだろうか、眠かったのだろうか、と濡れた髪をタオルで拭きとりながら、ゆっくりと起こさないように近づいた。サングラスは外され、目は硬く閉じられている。
(珍しい、近づいても起きない)
距離は残り15センチほど。でも阿含はまだ起きることなく、目を瞑っている。寝息も聞こえてくる。やっぱり、疲れていたんだろうか、と紅葉は何か毛布でも持ってこようと思って、ふと、足を止めた。そして、ローテーブルの上から携帯を取り出した。
(撮っちゃえ)
珍しいし。
ぱしゃり、と音が鳴ってびく、と肩が震えてしまったが、阿含を確認するとまだ寝ていた。うん、うまく撮れたな。と満足げに頷くと、ボタンを押して、保存した。
「くれー、ごめん、手伝ってー」
「はーい」
紅葉は阿含の頭を撫でて、立ち上がると葉夜の元へ走っていった。
「……阿含、いつ起きたんだ」
「……カメラで撮られたとき」
紅葉と入れ違いで近づいてきた雲水が声をかけると、目を腕で隠すように置いて阿含が答えた。寝たふりを続けていたらしい。
「……同じ思考回路してるな、お前ら」
「やめろ、雲子ちゃん、まじ黙れ」
「お前の携帯にも入ってるだろ、前に撮ってた紅葉の寝顔」
「…………」
鍵つきフォルダに入ってるタイトル無題の写真。ソファで丸くなって眠る紅葉の姿。消さずにいたのを、知られていたとは。