風邪引いたっぽい
そうチョロ松にLINEをしたら、
熱は?
薬飲んだ?
てか病院行った?
食欲ある?
ちょっと引くくらいの返信が音とともにすぐ画面に映し出される。
体温計ないからわかんない。病院行ってない。
とりあえず会社は休んだ
でもやっぱり心配してくれるのは嬉しいなぁと、たぶんあるであろう熱に浮かされた頭でぼんやり思った。
今から体温計持って行くから!待ってて!
あ、しかも来てくれちゃうんだ。
チョロ松くんやっさしー。待ってます*
そーゆーのいいから寝てろ!
これみよがしにハートマークなんてつけてみたけど、どうやら本気で心配されているようだ。彼が来るまであと40分くらいかな…。でも急いで来そうだから30分くらいかなぁ。そんなことをなんとなく考えながら、寒気がする体を震わせて布団を深く被りなおした。
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あれから予想通り30分後に我が家にやってきたチョロ松にテキパキと熱を測られると、なんと38.5°を超えていた。「ちょっと!バカじゃないの?!」と半ばヒステリックに叫ぶチョロ松に引きずられて、強制的に着替えをさせられ、家を出る頃には普段絶対着ないようなモコモコスタイルになっていた。
「う、動きにくい…」
「いーから!昨日雪降ったからあったかくしないとダメだよ!」
言われて気がついた。辺り一面真っ白だった。あぁ、どうりで昨日寒いと思ったんだよ。そういえばテレビでそんなこと言っていたような気もするけど、最近の忙しさに、少し感じてたけど気付かないフリをしていた体調の悪さに、そんなこと気にかける余裕もなくベットに倒れ込んでしまったんだ。
銀世界を見回しながら息を吸うと、肺に流れ込んでくる冷気にぶるっと身を震わせる。いくら着込んでいても、体の芯が冷えてしまってぞくぞくする。
「さ、寒い…」
「…ほら!手!」
チョロ松はそうぶっきらぼうに言うと、私が口元に持って行った手をさらっていく。恥ずかしがり屋のチョロ松が、いくら人通りが少ないからって人目につくところで手をつなぐのは珍しかった。しげしげと、2人の指が絡まった手を眺める。そして、少し前を歩きはじめたチョロ松の方を見遣る。いつもより歩く速度が少し早く、口から吐き出される息はいつもより濃い。また、しっかりとつながれた手に視線を落としながら、ふと思い出したことを口にする。
「そういえばねー」
「ん?」
「手をつなぐとね、細胞レベルでその人の手と融合してるんだって」
「ふーん」
「だから今私たち一つだよ」
「…へぇ」
えへへって言えば、そう事も無げに彼が返すもんだから、感想それだけって思ってチョロ松の方をみたら、存外そんなことはなかったようで、ここから見える耳は周りの景色に反して真っ赤だ。
「何考えてんの、えっち」
「もーーーーーおぉぉ!お前が変なこと言うからだろぉぉ!!」
顔から湯気でもでてるんじゃないかってくらいに真っ赤になり大きな声をだすチョロ松の歩く速度がまた早くなる。自然に強く引っ張られる形になったそのつながれた手を、彼に気付かれないようにほくそ笑みながら、強く握り返した。
「心配かけてごめんね」
「…うん」
「風邪が治ったらさ、たくさんえっちしようね」
「っ……うん…」
彼もまた私の手を強く握り返した。ほら、またどんどん2人が1つになっていく。
風邪が治るまであと2日。
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