愛してるを傷にしたい

目を覚ます

悪夢を覚えているのは私だけだと信じて私は何も言わない

それ以前に言う権利もないだろう

発言は彼らにある


巻き込まれた彼らに

私は加害者だ

この感情を持っていた事に罪があったのか




愛してるを傷にしたい




ヴィランの事から二日目の朝
私は普通に学校に行きクラスの席につく
ざわざわとクラスがざわついているが
まぁヴィランの事も聞きたいのだろう


何故死柄木を知っているのか

何故都はあえて緑谷達を外に出したのか

何故都は1人相澤先生と闘っていたのか


答えは簡単至って簡単
だが、喉から出ない事は確かだ
言えるか?アニメで知りましたなんて。


だから私は押し殺す

この感情を、この張り裂けそうな叫びを


ズルりとクラスとの関係が無くなって来た処だ
このまま何も無ければ元に戻るんだが・・・


まぁそうは問屋が卸さないか


この軽く重い空気の中ガラリとHRを
始めるぞと言わんばかりに相澤先生が入ってきた


「体育祭!」

「クソ学校っぽいもの来たぁぁ!!」


「待って待って!
敵に侵入されたばっかなのに
大丈夫なんですか!?」


相澤「逆に開催することで雄英の
危機管理体制が盤石だと示す・・・・
って考えらしい
警備は例年の五倍に強化するそうだ

何よりウチの体育祭は、最大のチャンス
敵ごときで中止にしていい催しじゃねぇ」

(だよなぁー)

当然私も参加しなくちゃいけないんだろうなぁ



「いや、そこは中止しよう?」

緑谷 「峰田君・・・・雄英体育祭見たことないの!?」

峰田 「あるに決まってんだろ
そういうことじゃなくてよー・・・・」

相澤 「ウチの体育祭は日本のビックイベントの一つ
かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した

今は知っての通り規模も人口も
縮小し形骸化した・・・・」


相澤 「そして日本に於いて今
「かつてのオリンピック」に代わるのが
雄英体育祭だ!」


八百万 「当然全国のトップヒーローも観ますのよ
スカウト目的でね!」


『スカウトかぁー』

おっと声が出た・・駄目だ私押し殺せよー??
心の中で色んな事考える位にしておかないと

・・ってあれそれ前からの戦法だな?


上鳴「卒業後(資格修得後)はプロ事務所に
サイドキック入りがセオリーだもんな」

耳郎 「そっから独立しそびれて万年
サイドキックってのも多いんだよね
上鳴あんなそーなりそう。アホだし」

上鳴「くっ!!!」



相澤「当然名のあるヒーロー事務所に
入った方が経験値も話題性も高くなる
時間は有限。

プロに見込まれれば
その場で将来が拓けるわけだ
年に1回・・・・
計三回だけのチャンス
ヒーロー志すなら
絶対に外せないイベントだ!」




出久「・・・・・・・・・・・・」

『(此処でカードを使えば全世界に
私の行動が分かってしまう・・

使い処に迷ってしまうが、地味なコピー
とかで初戦落ちすりゃ何とかなるか)』



サイドキックやヒーローになる為に
この学校に来た訳ではない

私の本来の狙いがバレなければいいんだが


相澤「嗚呼、忘れていたが、
羽黒、お前は後で職員室にこい。
大事な話がある。」

『え?私?なんで?マジすか』

相澤「何でもだ。つか敬語外すなよ」

『はーい』

相澤「(キャラが剥がれて来たか)」

そう思いながら相澤はとりあえず
言ったからな、と言って席を立った






四時限目終了後

私はすぐに席を立って荷物をしてから
教室を出た。

それと同時に教室の前に現れた大勢の生徒に
私はふーんと言いながら出て行った




「おい」

『あ?』

「お前もヒーロー科か」

『そうだけど、何?私職員室行くんだけど』

「・・体育祭で勝ってヒーロー科に移転してやるからな」

『あそ、どうぞ?ご自由に。』

私はそう誰かも知らない
人間に適当にあしらって言った

何かぴりっとした緊張感が取れたが
私にはどうしようもない事だと
言い聞かせて怠い身体に鞭打って
その場から逃げるように歩いて行った



正直ヒーロー科に居る意味が全くない
ただ言うならば意欲が高い人間レベルが問われる

私の家系の継承個性は本当に受け継ぐとその
オーラも見える様になる
オーラの中に居ればカードを育てるのが
恐ろしく早く育つのだ

まぁ所謂ゲームでのポイント稼ぎみたいなものだ
これがかなり重要で、オーラの中に居ないと
最初のうちは本当に実力が落ちてしまうのだ


オーラ
それはカードの成長に左右される大事な感情
その人間の個性をどうやって使うかによって
彼らのオーラはごろっと変わってしまう

例えば轟君、彼は月の様な白く輝くオーラが強い
ヒーローで何か強い目標を持っていると大概
こんな色をするのだが・・・


『(明らかに強すぎないか)』


あの個性、体育祭で何とかしないと
私がなんとかしないといけない羽目になるので
これから先を知っている私は

お願いだから緑谷君助けてあげてね
と強く願って職員室のドアを開けた







私は軽く失礼しまーすと声を出して相澤の元に行った

『せんせー来ましたよ』

相澤「来たか。よし、行くぞ」

『は?まって何処に?』

相澤「こっちだ」

そう言って私を連れて何処かに連れて行く相澤先生に
私は少しため息をついた


歩いている途中にそうだと
思いだしたかのように聞いてくる
相澤に珍しいなと思う都

普段は歩きながら言う先生じゃないからね。


仮眠室に放り込まれた私は首を傾げる
はて、何かあっただろうか?


相澤「単刀直入に聞く
お前、まだ何か俺に隠しているな?」

わお、悪夢の結論ですね?その答えが出るのって。

逃げられない様にあえて捕縛武器を使わずに
出口に居る相澤先生に私は大きなため息をついて
それがどうしたのかとソファーに座りながら要件を聞く


相澤「蛙吹や八百万の様な冷静さが無くおちゃらけて
笑顔で振る舞う姿は良いが・・夢の中の記憶がしっかり
残っているからな」

『嗚呼、おちゃらけているけどそれはカモフラージュで
悪夢ですよね皆からしたら、あんな感情を普通精神年齢
高いめの梅雨ちゃんらみたいには見えないと』

まぁ私臆病で通ってるから多分それ先生も分かってた筈
それなら矛盾しているわけだ

相澤「お前がヴィランじゃない事は明白なんだが
死柄木の事を知っていた事も気にはなる」

『あー・・色々とあってですね。』

話せるのなら全てを打ち明けたい
然しこれはいとも簡単に言って良いものではない
伝承個性なら変な話良いとしてだ


前世の記憶があってこの場所に居るだなんて
口が裂けても言えるわけがない
此処は耐えるしかない

どんな苦痛だって耐え抜いた私だ
押し殺せ、この教師はプロだ
私もそれなりに年齢を重ねている


暫く見つめ合った後、相澤先生の方が折れた
私は案外すんなり通った事にちょっとばれていないか
凄く心配だったがもう下校のチャイムが鳴る


相澤「・・今日は良い、さっさと帰れ」

『はい・・さようなら』

相澤「はいはい。またね。」


がチャリとドアを閉めて私は手で顔を覆う
久しぶりに付け始める事が起こりだした
この感情は私だけが持っていればいい

この絶望は私だけが知っていればいい




『(この幸せは私だけが味わいたいから)』



だからどうか誰も私の事を知ろうとしないで
全てを知られたら私が私じゃなくなる気がして

怖い怖い怖いのだ


心臓が痛むが、こんな痛み最初に感じた想いとは
全く痛むに入らない・・そう入らない


『ごめん皆ごめんね』


懺悔をただするだけしか出来ない
私の心休まる場所はもうないのだ



この世界の何処にもない




そう言い聞かせて私は1人悶々と考えながら帰宅した


家に帰るとエフが待ち構えていたってか何その顔


抱き付いてお帰りと言ってくれた
それに私はただいまと返した


エフ「また君が何処かに行ったと思った」

『行かないよ、何処にも行きはしない』

何処にも行けない

エフ「本当に?」

何処にも行けないんだ仕方がないだろう?

『嗚呼、本当だよ。ほら、ご飯食べよう?』


愛犬だった今のヒーローは良く分かってる
私も一人で泣いていた時良く傍に寄って来てくれた
泣きそうな顔で「大丈夫?」と言わんばかりに

だから今度は心配かけたくないのだ
貴方には沢山の愛を注がれて今を生きてほしい
折角人間になれたんだ、それ位許される


エフ「今日は君の好きな肉団子なんだ!ほら食べよう!」


そう手を取られた手は少し汗ばんでいて
私はもう少し深く掘り下げようと思った



落ちて落ちて、皆の手が届かない処に行って


眼を瞑って何もかも忘れて


少女の事だけを願って願い続けたい



もう誰も傷つくことのない世界があればと
私は前世からの根強く残るこの記憶を胸に秘めた




嗚呼、こんなにもご飯が美味しくないだなんて
味覚も遮断してきたのだろうか?
まぁ私が悪いんだけども


美味しい?と聞いたエフに私は美味しいと答えた
味がしないとは言えなくて



黙ってそのまま風呂に入って夜を明かした































目を覚ますとその世界は真っ黒だった
辺りを見回しても真っ暗な世界
私がずっと居た世界


『(自分を追い込んだのと
クラスの眼が冷たかったのが原因だな)』

案外納得してすんなり許した
だって本当の事だもの、知っていたら
まぁそれなりには納得するさ


幸い誰も居ない事に思いっ切り少女を探す事が出来る
この世界は私だけが知りたいのだ
誰にも指一本入って欲しくない世界


早く会いたい、会ってじっと見たい


そう思っていた矢先だ
母に「ごめんね」と言われながら涙を流す
少女を見つけた

鮮明な記憶に私は胸が酷く苦しくなる
嗚呼、でも会えてよかったのが一番だ
少女に会う事なんて夢の中でしか出来ない


手を伸ばしても届かない世界

その世界に私はもう戻れないから

だからどうか幸せにと願うしかないのだ


『(私は好きだ、彼女が愛おしくて堪らない)』

別にレズって訳じゃない
レズだったとしてもまぁ別にいいじゃないかと思う

人間○○がいけない。って言う理論はおかしいと思う。
頭沸いてる発想なんじゃなかろうかとも思う。


私は頭がおかしいんだ



この世界を何度もリピートしてしまう処


もう、壊れ切っているのだ




理想は遥か彼方に


手を伸ばしても届かない世界


伸ばした所で無駄だと言うのに

私は届かないからこそ笑ってみせた






嗚呼、世界はこんなにも残酷なんだと知る為に











愛してるを傷にしたい
(私はそうやって人を遠ざける)
(そうすれば前世の記憶が鮮明に想い出すから)

(そうやって私はずっと縛られるのだ)








《後書きスペース》