掌に祈りがわだかまる

嗚呼、私は死んでしまうのではないだろうか

それもそれでまた良いのだ

ほんとうに?


「ほんとうにいいの?」

目を覚ますと青々とした世界が見えた
辺りは花畑で囲われ声がした方向には
黒い椅子に白い服を着た少女が座っている

嗚呼、私はこの世界を知っている。
知っているのに、目を背けてばかりだ

やせ細ったその姿はある意味惨めで
その姿に、私は目を背けた
ずっとずっと、背けている様に
何時もの様に、目を、逸らした


『いいの、いいの、良いってどうか言って』

そうしたら私はそれだけで良いってなれるから
そうしたら、きっとどこかで報われるから

ほんとうに?

報われなかった事に今も縋っているだけでは?

杖を使い少女の喉元にソードを使った
寸止めの小籠に少女はきょとんとした顔で
ころしていいよと言っ…え?


今なんて言った?



「ころしていいよ?」

『…なんで、そんな言葉は言えるの?』

何時から君は自分を殺せる様な抑え方を憶えた?
何時から?一体私は何時から?


私のこの世界はずっとずっとずっと昔から


『私は、ほんとは、でも口に出したら
きっと叶わないから言わなくなって』

そう、私はずっと口に出さなかった
秘める様になったのは、周りの人の顔で察したのだ
嗚呼、困らせてはだめだ。
母が良く言い聞かせていた言葉

その言葉が妙に頭から離れなかった
ずっと父も言っていた
ずっとずっと

ねぇ、私は

『ほんとは、かなわせたい、でも
もう遅くて、私じゃなくて別の誰かが
笑ってくれたらいいやって言い聞かせて』

そうして私は私を上手く殺せる様になっていて
そのまま落ちる様に感情は落ちて行って
傍にあるものだけで幸せを得られたら良い

そう言い聞かせないと
言い聞かせて居ないと
私はまだ叶わない事も叶うと思いそうで

いや、本当は思っているのだ
願って願い続けているのだ
だから少女は此処で座っている

何も知らない様にして
何もかも知っている筈なのに
私はずっと少女をこんな世界に閉じ込めていたのだ


この場所が幸せだと信じ切って
それが本当の少女が求める幸せとは違うのに


「貴方がしたい事をすれば良いよ
だって私はずっと居るから!」

『…私は、わた、しは』

"私に言わされていただけだった"んだね


小籠は其処から立ち上がり少女を抱きしめながら隣に座った
ごめんなんて、言葉はきっと少女は望まない
本当の望みは、私の、


『ありがとう』


嬉しそうに笑う人の笑顔と言葉だ。


それを観た少女は嬉しそうに笑って
どういたしまして。と言って薄くなっていく
それに驚く小籠に手を握って頬を擦る少女に
小籠はやり返すとなんだか楽しくなってきた

手を握って空気が澄んでいて
たった二人だけの世界で笑って笑って笑って居るだけ
そんな世界はとても素晴らしいと思う

でも


『…ずっと此処には居られないし
君も幸せになって欲しい、だから』

だから私はたった一つだけを望もう
君の願いを叶える為に、私は、いいや

私の願いを叶える為にも
君に手を差し伸べて救いたいんだ

あの時、差し伸べてくれたように
無個性でいじめられていた私に
手を差し伸べてくれた君の様に

そして、あの日の様に


『私、君の事好きだよ?でもこの場所に留まるのは
…もうおしまい、にしなくちゃね!』


君が手を差し伸べてくれた
心が壊れた日に起きた、奇跡の様に


本当はずっとずっと居たい
でもここに居てもまだ集めなければならない
カードさん達はたくさんいるし

緑谷君達にも報告したい事沢山あるし
フクちゃん達にも立ち向かいたいし
色んな先の未来を観てみたい

それは唯の傍観では無くて
私から、足を使って経験したい。

そう心から思ったのを感じ取ったのか
少女は嬉しそうに「それがいいよ」と言ってくれた

すると少女は椅子に立ち上がる
一体何を始めるのだろうか?
嫌な予感が頭をよぎる

「大丈夫、貴方が決めたのなら何も怖くないよ」

そういって少女はゆらりと私の
座っていない方向に身体を傾けた
嗚呼、時間が進んでいく


そうして目が醒めるんだ。


時間が進んで、醒めるのだ。
本当の道を見定め、確信した心が
今、時と共に世界の光を浴びる。

++

「おっ…っと、神のお出ましかな?」

瓦礫から立ち上がった小籠
もう体力はない筈だった
寿命さえも削った様に思えるタフなものだったが

目を開いた瞬間フク達はその威圧を肌に感じた
目の色が違うと言った魔女に対してフクも大きくうなずいた
心情の中で何かが起こっていたのだ

それを感じ取っていたのは
小籠の隣に居た少女だけでは無かった



梅雨「…今、感じた?」

「ええ、感じ取りましたわ」

一部の生徒や教師も小籠の奥底に居た状態を体感したと言う
哀しそうにもしないあどけない少女の姿と
唯々いたたまれない小籠の姿を観るだけだった

「小籠ちゃん、すごく寂しそうだった…」

痛々しい顔なのに、少女の言葉に感化されたのか
刃物も持つが最後は抱きしめて笑いあっていた
そう、声は聞こえなかった

声を知るのは本人のみ

それでも何となくわかるような気がした
梅雨たちは小籠が異様な姿になっている事に
不安を抱いていた

涙が出そうな勢いで少女は椅子から飛び降りたのだ
嬉しそうなのに、後ろ髪を引かれるような
寂しそうな姿に小籠が手を伸ばした瞬間に目が覚めた


その後どうなったのかは知らないが
目の前に映る様な姿を観れば分かる

小籠は全てを、命を投げ捨てる様な者ではない。

少なくとも小籠の一つ一つの動きがかなり鮮明
且つ意外な行動を表しているのが決定的な事だと
緑谷は心の中で分析していた


『君が笑ってくれたら、どれ程良かっただろう?』

「…彼女を押し殺さずにどうやって戻って来た?」

『殺さなくても良かったって気付いたんだよ
隣に居なくても居ても初めから居なかったとしても』

私が創り上げた幻想でも
彼女はあの空間は私の見方だと
観方を変えればすぐに分かった事だったのに

其処まで私は頭がカッチンコッチンだったと言う事だ


『さぁ!始まるよー!行くよー!!れっつ!』

ファイアー!!

そう言ったミーネは今回何度目かも忘れた
カードをばら撒き、同時にカードを発動し始める
それはある意味で自殺行為である事を知った上でだ



「おいおい!俺達を焼いて食っても美味くな…?まさか」

手で風を吹かそうとしたフクも気付く
これは

この火は”幻(イリュージョン)”の仕業であると


「来るぞ!!」

上から小籠が一気に攻撃をし始めたと同時に
間一髪で防御に成功したフクたちに舌打ちする小籠
それもまぁ大きな術を使用したのに
大きなダメージも与えられないのであれば舌打ちもするだろう。


然し、小籠の不安げだった目の色は今


「良い目をするじゃないか、狼森少女は…!」


強く、笑って、その場から新しい世界を創り上げようと奮闘していた




『(嗚呼!君が傍に居てくれるから、
私は何度でも立ち向かえる勇気が溢れ出て来る!!)』

声を出さずに杖を使用して次の攻撃を打ち出す
幻を見せていた炎は揺らぎ本物の炎になる
敵であるフクたちを囲んだ後、綺麗に打ち消される事は把握済み

惑わせて惑わせて、その先に待っている物を
私はずっとずっと前から、望んでいた事を

今、想い出したんだ。


「っ、何故だ、何故そんなにも強い感情が湧き出る!!」

「ヘル!油断するな!!」

『君が!みえなくても!私は此処に居るからだよ!!
私は此処で息が出来るんだ!!君が』

君が笑って居られたら、私は笑って居られるから。


ならば、そう魔女が術を使い始める
それに小籠は何でもいいとカードに杖を振りかざした瞬間


大きな霧が小籠を飲み込んだ























主人公絶体絶命の時と
少女との時間軸が交互していく
そして主人公が苦痛の全てを声に出して答える

これでもう終わりなのだと
これから始まるのだと
また同じ時間を繰り返していくのだと

然しその時間はずっと進んでいるのだと
君は私、主人公の幼い頃の時間だったのだと
《後書きスペース》