エンドロールに会いたい


『(どうすればこの状況が変わるの)』

小籠はある意味死にかけであった

53話目ーエンドロールに会いたい


色んな物がある中華街みたいな場所
小籠の一番苦手とする場所だ


緑谷「どうしてあんなに顔が動くんだろう…」

フク「直さなければならない事その1」

お茶子「いっ、1!?」

”視界に入る物が多いと脳内の
情報がパンクし何も考えなくなる”

その情報はその場で観ていた者全員が
驚きの顔をする

小籠があんな状態になる様な事はおろか
余り動く様な人間とは捉えていなかったからだ

フク「教師陣には幾つかアイツの弱点を教えたからな
それなりの状態で戦う事になるだろ」

轟「お前…本当にアイツの近くに居る人間か?」

いやこの場合人間と言うよりかは
動物と言った方が正しいのかもしれないが
そもそも身近に居たフクロウが何故
この場所に居るのかもおかしい話だ

校長「狼森君には親御さんから一つお願いされていてね
ソレを組み込んだ君らと似たような試験場にした”だけ”の
少々特別な試験になっているんだよ!!」

そう説明をしてくれたのは後ろから入って来た
校長、そしてその背後からは今回の
教師人が入って来た

相澤「今回単独にしたのもそいつと
親御さんが言った事も加えての判断だ」

フク「これしきで終わる様じゃあ
ヒーロー処以前の問題になっちまうからなぁ」

カード系の個性でも最も他者に知られておらず
尚且つ扱いにくい個性である

コピーをした処でカードにも意識がある
その為「お前人の陣地に入ってきてなんだよこの野郎」
状態になり個性と身体の喧嘩が始まるので
余り他人が好んで個性を取ろうともしない

そんな扱いにくい個性を小籠は
沢山の種類を持ち現場で困難を成し遂げて行かねばならない


のだが


フク「(お前の奥深くに眠っている
”その子”を起こさない限り
今回は良しも出ないぞ)」

個性を持ち得る人間は皆多くの困難を抱えていた
またそれは小籠も同じであり
フクが思っていたよりもかなり複雑な感情を持っていた


フク「お前たちも優しい気持ちと
正義感でヒーローを目指しているだろう?」

お茶子「え?ま、まぁ、せやけど…」

フク「それだけじゃあヒーローに成れない
時には残酷な事もしなければならない」

その言葉に少し張る物が聞こえる

フク「全てアイツは”知っている”んだ」

ヒーローがどのような職なのか
それ以外に人間がどのように生きていくのか
普通生活していく上で考えない様な物ばかりを
小籠は何度も何度も考えているのだという

飯田「…そうか、だから狼森君は
”多方向の物に気を取られる”のか」

色んな情報を頭の中で考える事をするので
視界に入る物にも勿論情報が上書きされていく
一瞬の判断が鈍ればヒーローとしては
かなり致命傷な部分である

上鳴「えっ?じゃあムリゲーじゃね?」

フク「まぁいい処は勿論あるぞ?あんな風に」

画面上に現れたのは空中移動
小籠はかなり焦った顔をしながらも
カードの使用は的確に行っている

一瞬が鈍る時はランダムと言う事も
良い処と言うよりかはマシなぶぶんであるが
小籠は焦りながらも周りを良く見ている事だ

空中に逃げたのは中華街の異変を感じとり
直ぐに何もない安全な場所に身を置き
考える時間を一瞬でも作った事だ

風を操った後、小籠は異変を察知し
顔が直ぐに変わる

ミッド「…どうしたのかしら?」

何かを観た様な、そうまるで


『…嘘、何で?君が現れる
わけ、が無い、のに』

フク「そんな訳もないぞ…
お前が望むからカードも望むんだ」

緑谷「…?」


‘‘‘

目の前に見える者が夢なら
私はこの夢から速く醒めたいと願うのだろうか

『…新しいカード、さんだよな?』

目の前がユラユラと揺れたり近くの
シューマイ屋から誰も居ないのに
大きな炎が上がったりしている

1日に何度もカードを取るのは
何となく慣れて来たのだが
こう一気に来られるのは初めてだし


『落ち着け私…あれは”あの子”じゃない
違う違う、ちがうよ。』

違うのに、道の先が揺らぎ身体が見える錯覚が視界に入る
物がゴチャゴチャしているから?
現れるのでは無いだろう?

『…会いたい、でも今
君に会ってもきっと私は
同じ事繰り返しちゃう』

だからこその試練なのではないだろうか。
私が此処で変わらなければ失敗処で済まない
カードを得る事でかなり体力を使う事は疎か
扱うだけでも集中力を使う事なんて知っている事だ

だがそれ以前の問題が浮上してきた


『此処で決着付けないと…
私はこの先もきっと同じ事するの
…でもどうしても君の場所に戻りたい』

杖を構えカードも同時に出す

『ウォーター!炎を閉じ込めて!
クリエティー!大きな鏡を創って!!』

フク「なっ!?おい!同時出しかよ…アイツ前に
何度も言い聞かせたよな?俺言ったよな?」

震えあがるフクとは違い小籠は焦った顔のまま
苦い物を口に含んだような顔をした
体力がどんどん削られるのは勿論
集中力は底をつきそうになるのが
今の体力の限界と言った処だ

炎が周りを火に巻き込もうとした瞬間
水がカードから勢いよく飛び出し
炎を包み込み鏡は小籠の隣で道を映し出している

『汝のあるべき姿に戻れ!クロウカード!!』

光を放ち炎はカードの中に吸い込まれ
水はそのまま上空に上っていく
その状態に汗をかいている状態の小籠に
無茶だと一つの流れを察した緑谷は声を震わせた

緑谷「フクさん、カードに入れる時に身体の全体で
大体どれくらいの体力を奪われるんですか?」

フク「現状だと三分の1は食われる」

お茶子「ええっ!?」

梅雨「ケロっ!?じゃあ小籠ちゃんは
今かなり体力が削られた状態なのね…」


息を切らす小籠の表情だけでなく身体も動きが鈍っている
その状態のまま前を向き立ち尽くす


『君に会って笑える世界に産まれたかった』

「???」

全員の頭の中でクエスチョンマークが入る
小籠の顔は見えない処で小さな声を発していったので
耳の良い者しか聞き取れなかったのが幸いか

校長「(人間でも君はとても優しい部類なんだね
フク君が君を称賛する理由も何となくわかるよ)」

小籠の表情が観れるようになった途端
小籠はこちらのカメラの動きを察知しているのか
見えない様なしゃがみ方をした後走り出した

鏡を戻さずその場において角度を少し下に見える様にする
すると地面がチリチリと焦げる様な音を立て始める

カードに入っていたのは”陽炎”
てっきり小籠は目の前に居る者が
陽炎のカードだと思い込んでいた
然しそれは間違い手違い大違い

目の前に居る人間を映し出せるカードは限られる
ならあの子は何故目の前に立っているのだ

この時走る系のカードが無いのに
かなり悔いるが集中力の関係と
距離が短い様に見える状態で行けば
余り使っても意味がない様に感じる


『…っと、はやっ、く!!』

手を伸ばした小籠に対し影は透明で
尚且つニコリと笑ったような微笑み
それと同時に小籠の手から通り抜ける

いいや

小籠の手に取れない様にすり抜けたのだ
モヤの様に手に取れない煙の様に

小籠の表情が画面に映る

お茶子「小籠、ちゃん…」

フク「(それが現実だと知って・・
お前は、何でそんな顔が出来るんだ)」

泣きそうな顔をした直後
嬉しそうに笑ったのだ
その笑顔が唯々悲しそうで
見ているこっちが胸が痛む思いだ

『本当は君が観れただけで十分なんだ
だけど私はとっても欲張りなんだ』

小籠はそう言って目付きを変え
声を張り鏡を真上に上がる様に指示した
するとすでに周りは薄暗くなっており
上空では雨雲だけでなく異様な音が鳴り響いていた

「雷鳴…いいやアレは超高層雷放電か?」

分厚い雲の中で蠢く小籠から遠くの方で鳴る雷
実質雷ではないのだが、そう呼ばれるのは
雲の中で光る稲妻が原因だろう

そんな事はどうでもいい話だ
何故小籠がそんな状況下を創ったというところだが
フクは恐らくと声をあげて説明を淡々と話す


フク「最初にカードを取ったのはまぐれで
予め勘で「これが来そうだ」と言ったようなもので
カードを使い行動し、感情を露わにして
カードが付く隙を狙っているんだろうが…」

相澤「良い事じゃあないな」

それに深くうなずくフク
何故と聞くまでも無い
ヒーローが余り喜怒哀楽を顔に出すと
ヴィランの相手の思う壺だと言う事は
この場に居る者は誰でも知っている

勿論小籠も例外では無い
それどころか小籠はフクが言うには
普通の人間よりも感情が豊かだと言う
ならば何故あの場で嬉しそうな悲しい表情を出したのか

それは相手の隙を狙っての事?
本当にそうなのだろうか
小籠がそんな風に考える事は無いが

まぁ仮に考えていたとしても
作戦上は諸刃の剣と言った処である


『私は未だ君を受け入れたくない…なんて
フクちゃん聞いたら怒るだろうなぁー
…否全員怒るだろこんな考え言ったら、なぁ』

ニコリと微笑んだのはカメラ目線
勿論本人には一切此方の状況は分かっていない筈
ナノにも関わらず小籠は分かっている様に言った
そして微笑んだ

その感性は一体何処から得るのだろう
全く底が知れない少女であると
オールマイトは冷や汗を流しながら観ていた


『君が笑って居られたらそれだけで良いんだ
でも君が笑って居られるなんて夢なんだって
私はずっとずっと言い聞かせなくちゃならない』

それはカードを継承してから決めた事
そう、フクにも誰にも言っていない事だ


『私は君を創りだして君だけをみつめる事にした。
だって君を護るだけで他人の様に”消える”可能性は
削除される…だから幻は産まれ手に、取れない』

手を伸ばし陽炎の様な物を鏡の方更に奥で
少女の形をして微笑み立ち尽くしている
その場所を握りつぶすように手を変えるが
少女は一度も動かない

伸ばせば消えて無くなる者
あやふやな物ならあやふやで勝負するのみだ

小籠はカードを取り出し額に当てる

『私はずっと君を観るって約束したんだ…
ねぇ、おぼえてる?』

目を開け声を上げて優しい声を切り替える
出したカードはウィンディー風のカードだ

そのカードにフクが今すぐ中止しろと声をあげる
然し時は止まらない、小籠も何故か嬉しそうに笑って
走り出していた

フク「っ…アイツ死ぬ気か!!」

相澤「どういう事だ?」

フク「五大元素になるカードは体力を多く消耗する
使い処を間違えりゃ死ぬ事も在り得る話だ
目の前の壁が大きいからって…元素を乱用すりゃ
気を失って心臓や脳が止まらなくとも何時目を覚ますかわかりゃしねぇ…」

そんな危険な状態なのか
いまいち相澤達教師陣も理解が出来ない
何せ等の本人が嬉しそうに笑い走り出し
幻としていた者を捉えようとしているのだ

然し此処までくれば止めようにも止められない
カードにこのまま収めきれなければ災害として
ずっと暴走するだけになってしまう

それが嫌だからこその方法なのだろう

だからと言ってそう軽く決断出来るものではない

フク「頼む…持ってくれ」

身体が持つ事だけを今は祈るしかない
どちらにせよこの試練がクリア出来なければ
小籠はヒーロー処の話ではなくなる
命の危険もあるのだ

校長「どうする?危険させる?」

フク「…やらせてやってほしい
シャレにならんがいざ死んだとしても
一応策があるからな」

緑谷「ししっ、死ぬって…そんな」

校長「フム、良しなのさ!!」

「「(いいんだ)」」


その時、笑って大きく腕を振った小籠だが
上空の方に顔を向け口を大きく開け
土器のある店のコンクリートの壁を足で
そのまま蹴り上げウィンディーの風を使い
うまく空に身体をあげて羽を広げる

背中から広げられた羽を上手く風に乗らせ
そのまま高い位置に向かい光が音として
聞こえる場所で浮遊のカードを使い
己を空中にとどめさせる

『汝のあるべき姿に戻れ!クロウカード!!』

カードを使い雷雲丸ごとを吸い込ませている直後
赤い稲妻が走りながらカードに入っていく
それを観たフクは目を大きく開き声を失う

フク「なっ(お前まさか)」

『解除!そのまま急降下して!!』

新しいカードを取り浮遊と羽の3枚を手に取り
カード入れに入れて杖を身体に巻きつける様に
離さない様に急降下する

『ウィンディー!私を受け止めて!!』

泣きそうな声で下に居る風を使い小籠は
地面に近い処で息が出来る様になり
大きく息を吸い幻の少女に向かって
同じく封印の呪文を唱える

すると驚いた顔をした少女の姿が一瞬だけ画面に映る

その姿に見覚えがあるのは小籠とフクそして
つい最近話した事のある蛙吹だけだった


『はぁっ、っ、ぁっ、はっ』

カードに封印した直後小籠は倒れる様に地面に落ち
息を何とかしている状態でフクが助けに向かう


フク「おまっ…本当にやりやがったな」

『(だってこうでもしないと3つとも助けれないし
それに私ずっと前から決めてたの)』

フク「…救えたか?」

小籠は少々戸惑う
未だに終わりの見えない状態だ
それこそ幻の少女こそ終わりのない道のりである

救えたのかどうかは分からないが
小籠は何故かとても清々しい気持ちだった


陽炎、レッドスプライト、そして幻の
三枚同時入手に成功した上に試練達成を果たしたのだ









(幻陽炎レッドスプライト(赤い妖精))《後書きスペース》