失くしたファンタジー





ヴィラン襲撃から一時間後
外は夕方になりつつある
後日事情聴取を取るけど、いいね?

そうオールマイトの親友である塚内刑事が言った後に
梅雨が相澤先生と都ちゃんはと聞いた

塚内「相澤先生も
都ちゃんも一命を取り留めているよ」

それに一同は安堵してその場は解散
明日は振替休日となってしまった


塚内「(そう、一命だけは・・ね)」


1人恐ろしい事になったと1人で考えながら
相澤らが寝ている病室に向かう


******************

失礼します

そう塚内が来たのはとある病院

そこにはピ、ピ、と音を立てながらも
まだ意識のない相澤先生の姿があった

そこに居たのはマイク
ただひたすら悔しそうな顔で
相澤の事を見ていた



塚内「相澤先生は両腕粉砕骨折に顔面骨折
・・・幸い脳にダメージが無かったが
目ん玉の皿になる骨が粉々になっているらしいね。」

マイク「お疲れ様です、塚内刑事
目に何かしらの後遺症が
残る可能性があるらしいっすよ、
全く、クレイジーにも程があるもんですよ・・・」

塚内「都ちゃんの方は?」

マイク「嗚呼、こっちです」


そうシャッと隣のカーテンを開けて観る
そこに居たのは全身とはいかないが
グルグルと包帯を巻かれて眠っている都の姿があった



マイク「イレイザーよりはまだマシですが
血の量が半端じゃなくて、生きて骨もヒビ位で
終わっているのが奇跡だって言ってました」

塚内「こんな身体をして・・・
そう言えば親御さんは・・」


マイク「ヒーローでエフが居ますけど
生憎数日の出張で今緊急で帰ってくると聞いています」

塚内「分かった、じゃあ僕は出直そうかな」


そう言って塚内が行った後マイクは
起きた時にと食べ物を買いに行く



『・・フク、居るかな』

フク「嗚呼、お前の近くをうろついていたさ
全く、此処まで生きれたのは日頃体調管理
出来ていただけの事だな」

『嗚呼・・・ねぇ、やっぱり継承したい。
私、命を捧げれる人が居るの』


フク「お前・・まさか前世の」

『フクちゃんお願い、私』


駄目だ

そうフクは言う


フク「仮にお前が継承して、此処に居れると思うか?
トンボの個性と偽ってなんとか居るのにお前が乱れてどうする」


そう怒鳴ると都はそっぽを向いて眼を瞑った
それにフクは相澤の様子を見に空を飛びながら
行こうとした



『悪夢を見たの。』

フク「悪夢?」

『今回のヴィランが出て来た。
"継承して私に立ち向かえ出なければ
お前の近くに居る人間がどうなっても
知らないぞ"って』

フク「あのヴィラン・・・どす黒かったが
其処までとは・・気分は?」


『ちょっと悪い』

フク「ならたっぷり寝ておけ
体力はまだあるんだろう?
リカバリーガールに治させて
完治出来る様になっておけよ」


『フクちゃん・・』


そう涙を流す都にフクはため息をつきながら寄り添った
白いもこもこが何時かの愛犬を想い出す

フク「俺がずっと寝てお前に栄養を与えてやる
大丈夫だ、死にはしないし次の日には話せるさ」


悪夢だって見ない

お前はそのままでいい

そう声が聴こえたのに


何故だろう



胸騒ぎがずっとするんだ



++++++++++++


次の日、朝方目が覚めた都は起き上り歩いてみる
思いの外歩けた事に驚くが今日は明日、明後日の事を
考えて一日ずっと寝るのが良いだろう


そう思いながらカードや鍵は何処にあるのか考えるが
よく見たら頭の上の棚にあった事に少し安心した
手に取り相澤先生や轟君らの個性を見る


『継承すれば個性は無くなり、無個性になる。』

その代り目の前の個性がずっと使える

人間を生き返らせる事だって出来る能力

ヴィランの手に私が入ればと思うとゾッとするが
洗脳やらなにやら手を打ってこない限りは大丈夫だ



『そうだ、相澤先生・・』

シャッと少し大きな音が出たかと思いながら隣が
見える様に間だけを開けた
電子音が鳴り響く中相澤先生は身体全てが包帯で
巻かれて悲惨な物だった


『(アニメや漫画で観たもんじゃ比べ物にならない)』

息を整えて相澤先生の方に行こうとするが
ベッドに戻れと低い怠そうな声がした

『相澤先生!!』

相澤「よぉ、怪我殆ど無いって聞いたぞ」

『私に、比べたら・・』

あのまま世界を変えても良い程に私は貴方を助けたかった
無事のままで居れたらどれだけ良かったのだろうか?

そう思うが相澤先生は「あのなぁ」とベットから
起き上ることなく話を続ける


相澤「お前が庇ってくれてたから俺は死なずに済んだ」

『え?』

相澤「正直あの時来てくれたおかげで大分助かった
確実に褒められた行為じゃない事は・・分かってるんだろ?」

そう言う相澤の眼を見る都は何時しかの人を想い出す
ベットから出れなくなった何時も元気だった人
嗚呼、二度も三度もこんな処見たくない


涙を流しながら「うん」と声を振り絞った


相澤「何かされなかったか?」

『ぐすっ・・あ、された事と言えば』

相澤「なんだ?」

『ヴィランに首元かじられた位で』

それを言った途端相澤先生が何も言わなくなるので
私は焦って名前を呼ぶが一切反応なく言うとしたら
さっきまで眠っていたフクちゃんを呼ぶ


フク「嗚呼?なんだ全身黒ずくめイレイザー」

相澤「ヴィランに噛まれたとよ
おい、潰しに行く予定組みてぇんだが」

フク「奇遇だな、僕もちょっと刃物に近い
風を創り出したから切りつける奴が欲しかったんだよね」


待て待て待て待て!!!!

『相澤先生もフクちゃんも待って!!
今は体力を回復して明日に向けて休むの!』

フク「だが・・」

『大丈夫、見つけたらとっちめればいいんでしょう?』

そう首を傾げる都にフクは歯切りの悪い言葉で終わらせた





*******************



相澤「寝たか?」

フク「嗚呼、数日後の為に体力を維持する為に寝てる」


その後マイクや警察の人が来てほぼ昼まで何も出来なかった
都はぬいぐるみだと言うフクロウ姿のフクを抱きしめて
笑ってご飯を食べていると疲れて寝てしまった

勿論傍には相澤も居て同じように食べて終わったが
正直何も出来る事がないのでこのまま寝てしまおうかと
思っていた処だ



フク「それにしても・・・すまないな。
こんな状況で何も出来なくて」

相澤「・・お前も謝るんだな」

うるっせぇと声が上がるがすぐに話を戻す



フク「お前にはかなり助かっている
毎日都が家に帰るとクラスやお前ら教師の事を
沢山話して嬉しそうな顔で言ってくれるんだ」

相澤「・・昔はそうでもなかったのか?」

フク「出会って二週間ちょいだが、恐らく
昔は感情も顔に出ずにぼーっとしていた事が
幼少期に会ったと都が言っていた事がある」

笑顔も、喜びも、悲しみも、苦しみも

分からずに只々心の中がぽっかりと空いた穴を知る

それに困った笑顔で笑う位しか出来なかったそうで

そんな事は聞いたことないと相澤は驚いた



フク「こんなの序の口で、都の中に入れば
多くの不幸や幸福が頭の中で心の中で入り乱れているさ
僕の前でさえも殆ど話さないんだけどな」

相澤「・・幾つか聴きたいことはあるが
羽黒が、"皆も知る筈がない名前を呼んで"
とか言っていたが知っているか?」


それにフクは眼を開けて相澤を見る
その時フクは記憶が殆ど抜けていたらしく
聞いて「そうか」と笑った


フク「昔の名前があってな、その名前の時は
今と比べ物にならない位優しくて笑顔が絶えない
良い子ちゃんだったらしいぞ」

相澤「そうか・・・」

フク「外の人間からすれば只の日常なのに
あいつからすれば悪夢でしか無くなる事を
都は本当に望んでいるんだか」


今の現状で既に五枚程のカードをゲットしているが
正直このペースで行けば普通にクリアするんだが
そんな生易しい個性で済むなら死亡者なんて出ていない


フクは全てを相澤に打ち明けようかと思ったが
この先の事、都が決めるものだ



すぐに都の頬の場所に丸まり眼を閉じて夜になるのを待った



















眼を開ける

真っ白な場所に電子音が続く世界


隣を見れば眠る顔の見えない男の人らしきものが寝ていて

反対の方向をみれば相澤先生が眠っている場所だ



っていうか此処何処



「やっと君の中に入れた
本当に今の今迄入るのに手こずったよ・・
君どんだけ中に入れない様にしてるの」

後ろを見た

其処に居たのは今回被害を出した本人
トラウムが居た


『何の用?君は私を殺さないの?』

トラ「おや?君は自分が好きではないの?」

『いいや?私別にどうでもいいんだけど
っていうかどうやって此処まで来たんだか』

トラ「僕の使う個性は夢の中に入って
幻を見せる事が出来る個性でね?」

嗚呼、何となく分かったぞ?
私こういうの前に見た事ある気がする
っていうか脳内妄想ですね?痛い痛い・・

トラ「って僕の話聞いてる?」

『うーん、聞いてる聞いてる』

ウソだっ!って何か何処かで聴いた様ないい方しなくても
と思いながら都はどうしてこんな幻を?と聞く
此処は冷静に単純に疑問に思った事を言うべきだ


トラ「うーん。単に君に興味が沸いた」

『あ?』

トラ「いやそんな顔で"あ?"とか言わないで・・」

いやいや、ヴィランが精神面強くなくてどうするんですか
馬鹿なの?団体様ご一行じゃないと生きていけないの?


・・まぁ私もそんなものか。



トラ「君に幾ら悪夢を見せても点で無視じゃないか!
こんなにも辛い悪夢を見せても何で苦にならないの!?」

本人曰く、私のお祖父ちゃんの時からなんか闘っていて
お祖父ちゃんはお婆ちゃんが悪夢を見て止めろと
止めてたりなんかしていて(ごめん詳しく聞いてなかった)

そうしてお祖父ちゃんは不死身になってしまったらしいんだけれども

待って?ちょっと話飛んだからとりあえずもう一度聴きたいな?


トラ「まぁ・・とにかく君のそのマイペースさには
呆れたから、ちょっと数人だけど連れて来たんだよね」


そう言って指を鳴らすと私とトラウムの周りに六つ
球体が現れてその中に居たのは


『え、梅雨ちゃん?待ってやおももに轟君かなそれ』

梅雨ちゃん、やおもも、轟君、
相澤先生、緑谷君、お茶子ちゃんが眠っていた


球体を見た後近くに居た男性二人の
寝っ転がったものは消えていて

案外ヤバイかもしれないと思う



トラ「君には地獄を見せてあげたいんだ」




《後書きスペース》