思い出が美しければそれですべて正しい

小籠は全てを思い出した
それにフクは違和感を感じていた

本当に全てを思い出したのなら
マクベスの箱庭の事を何故知らないのだろう?


「(マクベスの箱庭ー別名:悲劇の幕開けとも呼ばれる程
僕らの中では有名だったがーーそう言えば)」

あの図書館の中にあっただろうか?
そう思い立ったフクは魔女に問う
魔女は前に図書館を創った時に管理をしていた者で
大体の本の知識はあるのだ


その魔女が「無い」と答えた


「‥やはり、本質に触れる事を避けているのか」

目を逸らしながら口元を触りつつ、彼女の部屋の屋根瓦に座った
今は彼女自身寮に住み始めたと言う事もあり
この家に主は居ない

夜空がキラキラと輝きを放ってはいるが
如何せんこの世界特にこの都心部付近は輝き過ぎて
本当の光を観れない



「だが何故、触れない?」

口頭(こうとう)のみという事を考えると
恐らく余程漏れてはならない事なのだろう

マクベスの箱庭の事までも綺麗に本としてなかった
彼女の祖父が唯一求めていたカードであったのだ

そう、喉から手が出る程欲しがっていた。
マクベスの箱庭の件については頭が憶える程
口うるさく言っていたあの人

元主の事を考えながら彼女、現主になった
狼森小籠について色々模索していた


「言ってしまえば行動する様には見えないがーー」


まぁ今回の件について
小籠がある程度話してくれた事はこうだ



狼森小籠という別世界で生きていた神の申し子と異名を持った魔力を持った子が
今の祖先に当たる少女(名前が分からないらしく少女という名前で通しているらしい)
が異世界に片道で行ける個性を発動し、出会ったのがキッカケだ


狼森小籠が死を遂げたのは彼女の世界(A世界としておこう)
つまり、少女がB世界(少女の世界つまり今暮らしているこの世界)から
飛んでしまい、A世界に一度小旅行位で居たが

一度別のC世界全くない場所に居て、其処でお互い別れ
お互いの世界に戻り、各々人生を終えたそうだ


どうやら魔術師とも謳(うた)われていた者が
マクベスの箱庭を幼少期で使いこなしていたらしく
ありとあらゆる情報を持ったまま、少女がかえって来たらしい



「…にしてもありえん、っちゃありえんか」


本来、生まれ変わりは存在する
するにはするが、別世界で生死を遂げた者が
何故別世界で

それも少女が生きた世界で生まれ変わりをするのか


「”お互い逆で生きていた”とか‥まさか!−−」


在り得そうだなと痛感してしまったフクはゾッと身震いした



魔術師狼森がもし、別世界…然もこの今現在いる世界で
少女のふりをし、個性という感情で放置
若しくは無個性で話を通していたのなら、小籠の生まれ変わりも辻褄が合う


それに少女の個性は「異世界移動片道切符」だ
一度行けば二度と戻れはしないと言う事になり
恐らくAの世界からBの世界のみの移動で
CからBに移動したのは片道に入らなかったのだろう

その話がAからCに飛び、Bの世界に行っていたと言う事なら‥?
瓜二つの様な存在であれば、話が合うはずだ。

魔力を持った者なら、変な場所に異空間を創り
その中に大きな図書館を創り上げ
尚且つカードを代々受け継げる様になんて出来る事しかない



「…最初に在った厄災が、降り注ぐと言う事か?」

それにしても小籠の言っていた事には幾つか辻褄が合わない


まず何故小籠が別世界の者の生まれ変わりと知れたのか
夢とは言え、夢と認知出来なかったのは何故か
誰かが観させているとしか考えられない

それに、小籠は「生きている」と言った
それはつまり小籠の精神面の中に
少女、又は生まれ変わりの者が居る可能性もある

然しそれだと生まれ変わりも何も無いではないか


幾つかあるが、唸り声を出すのも癪
意識を一度リセットしようと動き出す





「”悲劇の幕開け”か、それがどうか起きないままで在ればいい」


一度在ったのは…まさに天災で、
被害は日本全土で少なくとも1千万人を越えた

それを引き起こしたのが狼森小籠だったのだろう

そんな事が起きなければ良い寧ろ起きない様に見守りぬく迄だ
そう小籠の今日の振り返りをフクはしながら彼女の部屋に戻って行った






++









私は、呪いをかけてしまった


「君が心から痛くなった時、私が必ず助けに行く様に」


君がとても寂しそうに泣いていたから
私が助けになりたかったの

でも大人は皆私の事を要らない者扱いする

だから私は君と私自身にもう一つ呪いをかけたの




「どうか二人が互い違いに判別されますように」






そしたら、別々の世界でも、誰も気づかれずに生きていけるよね?





















「どうか、貴方だけでも幸あれ」















《後書きスペース》