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第二話 警戒

「リムル様」
「なんだ?」
「リムル様の仰っていた通り、やはり布団で寝ずに毛布を持って部屋の隅で仮眠を取り始めました。」
「あ〜〜〜やっぱりかぁ。」
「…絶対リムル様が言い過ぎたと思います。」
「いや、あの子の性格的にそっちじゃないはずなんだが…」

 そうため息を吐いたリムル。リムルはミルの大ファンであり、ミルのことをなんとか甘やかしたいと思っている者だった。その為ミルが落ち着きそうな家の間取りになっている部屋に連れて、ある程度の説明で眠りそうな時を見計らって履けた。

 のだが、どうやら警戒は解かれていないらしい。身体を包んでいるとは言っても顔を毛布で隠しているが目をすぐに開けて行動出来るように身体の力はあまり抜けていないことは分かっていた。

「絶対あの子を仲間に引き入れたら良いこと尽くしなんだよなぁ〜。」
「と、言うと?」
「物理攻撃は勿論精神攻撃から何から人に尽くす子なんだよ。自分よりも相手重視というか相手特化というかねぇ〜。」
 ミルは非常に思慮深い。加えて不安要素には相手が気付く前に気付いて不安要素を防ぐことを身に着けている。加えて素直に聞くし物分かりは…んまぁ良い方だろう。

「本当にリムル様のご存知の方とは言えないのでは?」
「いやそれはない。」
「一体何処にそんな自信が出て来るんですか。」
「あの子の目だよ目。」
「目?」

 そう首を傾げたベニマルにリムルは頷いた。

「普通嘘を付いたり本当のことを言う時って目を見たり逸らしたりするだろ?」
「ええまぁ」
「あいつ恐ろしいくらいに顔を見て来ないじゃん?」
「…えっまさかそれだけで?」

 それだけ。と知らない者は言うだろう。だがミルの過去を知っているリムルは読者だからこその視点で考えていた。

 ミルがどれ程愛情に飢えていたのかを

「もし俺を騙すだけの小鳥遊ミルを演じた者だとしたら、あそこまで自然に頭や身体を壁にぶつけないし、顔は多少なりとも合わせるだろうし話ももっと分かると思うんだよな。」
「あのーリムル様、尊敬されていらっしゃるんですよね?」

 リムルから貶す以外の言葉が見当たらず苦渋の決断でベニマルは渋々聞いてみる。色々考えたのだ。

「いやいや、天才的なくらいに動きを真似るなんて無理だってことだよ。特に相手が相手だからな。」
「彼女のことですか?誰でも真似れそうですが。」
「そういうところなんだよ。誰でも簡単に紛れ込ませることが出来るような素振りをするところこそが、一番難しいと言われているんだよ。」

 要は彼女の癖の部分だ。困っていると目をきょろきょろしたり俯く角度が斜めから真下に変わったりと細かいところがある。それが出来るのは本当に困ったことが、それも長い時間人に相談出来ない環境下で過ごした者でないとできないものだ。

 ミルはずっと独りで生き続けていたのだから。

「俺には何を考えているのか全く分かりませんが、彼女をどうするおつもりなんですか?」
「どうって…そりゃあ此処だけでも楽にして欲しいよ。」

 彼女は一人で歩いて生きて来た。誰でも愛される筈の母親ですら愛を受けられず、ただ出会う人全員に見放される運命に生きてきた為、己の「一番」はずっと固定されている。

 彼女が望めばそりゃあその「一番」を奪ってでも楽にさせてやりたいところだが、それを本当に望んでいる訳ではないことくらいリムルも分かっていた。

 だからこそもどかしいのだ。届きそうなのに、届かない場所で、ケースの向こう側で見守ってやらないといけない。だって

「どうせ一番を望んだって叶わない…なんて言わせねぇからな。」
「リムル様?」
「嗚呼なんでもない!あの子が笑って此処で過ごせれれば良いと思ってるよ。」
「彼女はそれを望んでいるとでも?」
「まぁ望んでいなかったら一週間で消えるさ。こっちは提供するだけしてみる。ダメならすぐに消える。あの子はそういう力を持ってしまった子なんだよ。」
「そういうって…リムル様、貴方一体何を。」
「これ以上は秘密。あの子から聞いて欲しい。」

+++++++++++

 そう、言われたのだが。

「(気配出し過ぎだろ…)」

 どうやら俺のことが気に入ったらしい。いや、これは気になるの方だな。昨日の件といい、力を持っているのに逃げる力しか使わなさそうな者に好かれるとは。

 隠れてないで出てきたらどうだと思ったが、どうやら気付いたのに気付かれたらしい。もう気配がしない。

「ったく、なんなんだ。」
「(ふぁあああ本当に赤鬼さんだ青鬼さんも居るしなんかピンクに紫にってあれなんかすごいカラフルだな?)」

 緑とかあればレンジャーとか出来そうだと思った。あの感じ明らかに私を毛嫌いしている感じした。まぁリムルが昨日ある程度私のことバラしたからな。まぁ嫌われることには多少慣れているから良いんだけれども。

「(何しよう)」

 暇である。

 かと言って何もしないわけにもいかない。とりあえずフォティアの力を試しておきたいのだが…。

「ねぇヘメラ」

―なんでしょう。

「フォティアの力ってさ、此処焼け野原にしちゃうよね。」

―解、半径百メートルは燃え尽きます。

「こう力をばば〜っと使えてさ、ぐぐ〜っと力を出せることって出来ないのかな。ほらほら、前に混合使ってたみたいに同時多発テロ的な。」

―告、理解に苦しみます。

 おい

「ま、まぁ良いや。葉っぱさんが泣かないように、誰も傷付かない場所ってないの?」

―解、此処から三キロ先の地点に焼け野原があります。移動しますか?

「いや、リムルさんの所に行きたい。嗚呼ヘメラ大丈夫、私だって一人の力で自力でリムルさんの所にいけるから!」

―…。



 結論。行けませんでした。現在半泣きで彷徨っています。うう、此処いずざ何処。そう思っていたら、開けた場所に出たと思えば熱い炎が見える。

「っ馬鹿避けろ‼」
「(ダメ避けたら葉っぱさん達が悲しんじゃう‼此処で食い止めるには)ヒ―ノお願い力を貸して‼」

―了、ヒ―ノをユニークスキル【神水者(せいのもの)】に変換します。成功しました。ユニークスキル発動。

 ドンと時空が歪む音がする。ミルの目の前に、黒く光る炎の前、大きな水たまりが炎ごと包み込む。だが、同じ炎に同じ水の量であり、くっついたら蒸発が起きることに気付いたのは爆発が起きた直後だった。

 ミルは身体を強く木にぶつけて意識を失った。

「…い、おい、起きろ、ミル‼」
「ん…んん、ここ、私…えっと」

 確かリムルさんのお家に行こうとして赤鬼さんの場所に来たと思って、其処から自力でリムルさんのお家に行こうと歩いていたら道が開けて赤い炎が見えてお水出して、それで。

「ああっそうだ葉っぱさん無事かな‼」
「葉っぱさん?」
「あうぇ⁉ここどこ⁉」
「あ、お目覚めになりましたか?」
「あうぇ⁉シュナさん⁉私炎とこんにちわしてあれ⁉」
「っふふふ、お兄様とハクロウが勝負をしていた時に、お兄様の攻撃が偶々ミル様の目の前に飛び出たんですよ。」
「流石に焦った。」

 そう言ったベニマルにミルはベットの中でぼーっとしているとハッとまた身体を動かして森は⁉と答える。

「ミル様が水でお兄様の攻撃を打ち消したおかげで何処にも傷はついておりませんと報告を受けております。」
「そっ…か、よ、よがっだ〜〜〜〜」
「っ‼」
「はわー…流石の私もアレは焦ったよ〜フォティアで相殺したら焼け野原作っちゃうし、土壇場でスキルに変換出来て良かった。」
「え、先程のは元々あったスキルではなかったのですか?」
「え?あ、はい。秒でライフさんにお願いしたらユニークスキル【神水者】って言うのに変わってたな。」
「…せ、せい、の。」
「ん?どうしました?」
「あ、いやなんでも…それよりも身体は何処か痛みはないのか?」
「いえいえ、痛みはいっ‼」

 痛みますよね?ね?そう言って腕を掴んだシュナに身体が跳ねる。うう、痛覚を消そうとしていたのバレたか。鋭い。

「…すまない、俺としたことが。」
「いやいやいやいやいや、それはこっちのセリフです。あの時よく考えたら炎を空間ごと閉じ込めればどうとでもなったものです。攻撃に水をぶつけた私が悪い。」
「…っ、責めないのか?敢えてしたとか。」
「どうしてですか?だってあの時の顔、そんな素振りはみえませんでしたよ?」
「いやだが」
「そう自分を責めないで下さい。打った方よりも受けた方がちゃんとしていれば大体ことは済むものなんです。なのでアレはどう考えても私が悪いです。」
「いや間違いなく俺の方なんだが…はぁ、本当にリムル様の仰る通りだな。」

 ほぇ?そう首を傾げるミルに、シュナが答える。

「ミル様は人を責めないお方だとお聞きしております。炎で相殺できたが、周りの草木を燃やしたくなかったから火を消化できる水をと判断に至ったのだろうと。」

 誰も傷つけたくないのは、人だけではない。草木や自分以外の存在全てを持っているのだと。その酷い程まで優しい心に、リムルは心を動かされた一つだったと言っていたらしい。

 いやいやいや、だってさ?

「燃えたら、痛いと思って…傷つけさせたくなかったから、でもえっと鬼さんの力が悪いって訳じゃなくて!えとえと…あの、その…ごめんなさい。」
「いやいや、謝らなくて良い。あと俺の名前はベニマルだ。鬼さんでも赤鬼さんでもない。」
「あえ?鬼さんは分かりますが何故赤鬼さんを」
「普通に聞こえてたからな。」
「ぴ」
「っくくく、それ程の力があるというのに、使う時は草木すらをも護ろうとすることか。確かにリムル様が慕うのも分からなくはない。」

 気に入った。そう言ったベニマルに、ミルは二度見する。正気かと。それに嗚呼と頷いて答えた。

「傷物にしたんだ。それなりの対応はさせて欲しい。あとついでいうが今日から俺はお前の護衛を務めさせてもらうことになった。」
「あう、ででですが…」
「どうせ炎の扱い方を教わりたくて声を掛けようとしたんだろう?俺が警戒していたのに気付いてすぐ気配を消して逃げたが、炎の事を考えていて戻って来た。違うか?」
「それはリムルさんのお言葉で?」
「いいや、俺の勘だ。」

 違うか?そう首を傾げたベニマルにミルは首を横に振った。どうして此処まで分かるんだろうか。やはり危険だから消える方が良いのかもしれない。…ん?

「うう…合ってます。」
「別に声くらい掛けて良い。寧ろ声を掛けれずに傷付けてしまえば元も子もない。」
「いやはやほんとそう。って待って?今なんて?」
「あ?声くらい掛けて良いって」
「違うもっと前」
「…護衛?」

 それだ。

「待って⁉何で私護衛付けて貰うの⁉私一人で何とか出来るよ⁉」
「正直なところ本気を出されたら誰も太刀打ちできないから絆させろと仰せつかっている。」
「もっと待って?」

 私が絆されるとでも思っているの?うん合ってる。っていうかさ?

「凄い素直ですね、はっきり言わなくても隠したって良いのに。」
「っはは、それは貴方もでしょう?俺やシュナに自分の力をサラッと言わなくても誤魔化すくらいできたでしょうに」
「…はっ!」
「…あっひょっとして思いつかな」

 そんなことないよとミルはベニマルが言い切る前にそっぽを向いて答えた。それにシュナは苦笑いして見守っていた。まぁ良いでしょうと思い、うんうんと頷いたミルに、説教じみたなと少し困った笑いをするベニマルに、えへへとミルは苦笑いした。

「それにしても一体何処に向かおうとしていたんだ?」
「嗚呼、木が生えてない焼け野原みたいな広い場所が欲しくてですね。」
「それなら西の原っぱが良いだろう。」
「ではそこに行きますか。」
「ミル様?まさかその身体で行かれるんですか?」
「…ヘメラ。」

―なんでしょう。

「まさかまさかと思うけど、…今この傷クーアを使ってスキル獲得とかできちゃったりしちゃったりたりする?」

―告、可能です。取得しますか?

「あ〜〜〜〜お願い。使ってあげて見せた方が凄い分かると思う。」

 自分がどれ程遺脱している人間ではない者なのか。魔物ですらない私がどんな存在か、彼らに見せた方が良い。あわよくばこの場所から出て行けと言われた方がマシだと思う。

「何をなさるつもりですか?」
「良いから待ってて下さい。ヘメラ。」

―告、クーアの解析が完了しました。ユニークスキル【治癒者(いえるもの)】を獲得できます。成功しました。ユニークスキル【治癒者(いえるもの)】が使用出来ます。使用しますか?

 勿論。

「ユニークスキル【治癒者(いえるもの)】」
「っまぁ‼」
「なっ‼」

 そう言ったミルの身体に、手が触れられる場所全て綺麗に痛みも焦げた場所も綺麗に傷一つ無くなってしまった。それに目を丸めて固まった。

「ほら、私はこれくらいの身体なら力で何とか回復出来るし、最悪痛みなんて消し飛ばしてしまえば身体を動かす事も出来る。なんら心配しなくていいですよ。」
「いえ、そういう問題では…‼」
「ん?これじゃないのか。ん〜ラティアを使える状態ではないし、アステリではないし〜う〜ん。」
「ミル様、私が申したいのは力ではなく気持ちです。」
「え?キモチ?」

 そう首を傾げるミルにはいと答える。

「傷を負う前提でお話しないで下さい。木々を守ろうとしてお兄様の力を相殺したんですよね?」
「え?うん。」
「その木々と同じように、私も貴方が傷付いて欲しくないのです。」
「…私は何度でも戻る子だよ?例えこの身体が傷付いても、魂ごと消滅したって、私はふとした時に戻ってしまう悪い子だよ?」
「いいえ、悪い子なんかじゃありません。ミル様はとても良い子の様に見えます。」
「見た目に騙されていてはいけないよ。」

 人間はずるがしこい生物だから。誰でも信用してはいけない。そう言ったミルに貴方が仰いますかと苦笑いする。

「例え魂ごと消滅しようが、そういう状況に陥らないようにしてほしいだけです。どうしようもないことは仕方がありませんが、身体を投げ出すことはしないで下さい。」

 まるで、私がそうしようと思ったかのように…いや、そうしたのだ。正直なところ、そうした。

 ミルは俯いて、あのね。と我ながら幼い声が出た。

「…ほんとは、死んじゃいたかった。」
「…はい。」
「でも、死にたくなくて、記憶が曖昧で、話してるの全部本当か分からなくて、嘘つきたくなくて、嫌われたくなくて、よくわからない。出来ないかもしれない。」
「えぇ、心掛けてくれるだけで良いのです。」
「…ごめんね?」
「えぇ。」

 そうニコリと微笑んだシュナにミルはニコリと笑って見せる。それにふっとベニマルは息を吐いた。どうやらもう仲が良くなったらしい。

「さて、俺はリムル様を呼んでくる。」
「あ、それはしなくても良いですよ、ベニマルさん。」
「ん?何故だ」
「だって「ミル目覚めたって⁉」ほら。」
「ちょ、なんでリムル様気付いたんですか!貴方遠征にいってたんじゃあ」
「そんなんミルから思念伝達あって急いで帰って来たわ‼ベニマルもベニマルだけど、今回はミルのせいだな。」
「ちょ、リムル様⁉」
「ど〜〜せ警戒されてる奴に反感買ってわっざわざ自分から悪い方に持っていて殺されてしまうか、綺麗に消え去ってスッキリさせるように種を撒く予定だったんだろうけど……な?」
「あ〜〜〜…………やっぱり分かっちゃう?」

 そう色々と目を飛ばした後、左下を見ながら苦笑いするミル。どうやら正解らしい。はぁとため息を吐いたリムルが続けて言う。

「あっっのなぁ〜〜ミルさんや。」
「はいな。」
「此処には君を敵対するような人間は居ないの。なんなら全員魔物だし。俺も元人間でも今は魔物だし。」
「はい存じておりますです。」
「君が渡り歩いてきた人間達ではないんだよ。わざわざ嫌われるような方向にもっていかなくていいの。」
「いやでも何時か嫌われるなら最初からの方が良いかなって。」
「それ悪い癖って嗚呼そうだな、うん。それがいい、ミル、お前今日から嘘つくの、禁止な。」
「びえっ⁉」
「嗚呼何ならシュナ達と仲良くしろよ?こいつら身内には甘いから。」
「リムル様、お言葉ですが、シュナはまだしも俺は其処まで甘くしませんよ?」
「そんなことありませんよリムル様。お兄様は身内に甘いんです。此間だって私がちょっとお役に立てるようにとこっそり鍛錬をしようとしたらそんなものは必要ないだなんて刀を取り上げられたんですよ?」
「いやアレはどう考えても必要ないことだろう。」

 そんなことありません!いざという時に身を守れずしてどうするんですか!と兄妹喧嘩が勃発してしまった。いやはやどうしよう。

「ねぇリムル〜」
「ん?どうした?」
「この二人って何時もこうなの?」
「嗚呼いっつもこうだよ。どうした?何かあるのか?」
「あ、いやその…あのね?」
「うんうん。」
「その、私ね…いや」

 お兄ちゃんと妹欲しかったんだと言いかけて止めた。なんだかそう言うのも違う気がしたから。

「おっと嘘はダメだぞ?【ミル】?」
「っ⁉あれ⁉」
「おあっ…?あれなんだかねっむ」
「「リムル様⁉」」

+++++++++++

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