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「…あれ、此処は。」
「はわ気が付いた……おはようリムル。」
「あれ、ミルどうしたんだ?っていうか心なしか…なんだか身体というか身長伸びた?」
「うむぅ…勝手に名づけしやがってこのやろう。なんなら丸々五日は寝てたよ。」
「あれ⁉そうなの⁉」

 一人に対して丸々五日もスリーブ状態とは…ミルの見た目は前が16歳くらいだとすれば今は二十歳くらい、ほぼ成人に近しい状態だった。髪の毛は背中まで伸ばされており、漫画で見た状態となんら変わらなかった。

「全くも、私種族魔物なったんだからね?」
「えっ」

―解、名づけにより小鳥遊ミルは種族***から魔物にランクが下がりました。

 え?下がった?あれ?元々は滅茶苦茶ヤバい感じだった感じ?

―解その通りです。

 えぇ〜マジかよ。まぁ逆に言えば封印したみたいな感じなら地形が抉れる心配もないし良いんじゃないのか?

「全くも〜リムルったら無茶無茶するんだから。」
「いや〜ごめんって今なんて」
「え?呼び捨ての方が良いって言ってたし、私も余り堅苦しいの好きじゃないから良いかなって…だ、だめ?」
「いやいやいやいやいやいや、ぜんっっぜん良い!」

 寧ろこちら側としたら凄く嬉しいものだ。だって考えても見ろよ、漫画やアニメで見ていた「推し」が俺の為に話しているんだぞ?普通にテンション上がるしなんなら申し訳なさも多少込み上がってくるくらいだ。

「でも俺がこういうのもなんだけど、良いのか?」
「ん?何が?」
「いや何処かに行く予定があるとか…それこそ誰かに呼び出されたりとか。」

 そう、リムルは転生以外の方法で呼ばれた状態、異世界召喚の疑いを考えていた。それなら召喚者がミルの身体を握っている可能性もあるし、実際リムルの元になっているシズも元々異世界召喚から来ている。

 それに対してミルは首を傾げて空に顔を向けて話す。脳内で話しても良いのだが、それだとヘメラが可哀想だと答えたのに、うちの大賢者さんがため息を吐いている。えっ何で?

「ん〜限りなくゼロに近いって。どうやらこっちに来る予定があったそうっていうか憶測?予言?」
「憶測?ミルの勘か?」
「うん。変な勘は当たるからってこれも知ってるか。」
「嗚呼まぁ…うん、なんかごめん。」
「あっはは、良いって〜にしてもリムルって良い名前だよね。」
「えっ?嗚呼そりゃあどうも…」

 天然っ子だとは知っていたが、此処までペースを乱されるとは思っていなかったな。リムルはそう思いつつもミルの話を聞いていた。

「あーーそうだ!リムルちょっと撤回して欲しいものが!」
「嗚呼先に言っておくがベニマルの件なら却下だぞ?」
「な・ん・で・っ‼」

 どうやら当たっていたらしい。あのなぁとため息交じりにリムルは答える。

「ベニマルの炎を直で喰らって軽い火傷で済んでいるとは言えども、周りの木々すらも傷付けずに動くだろ?」
「うぇ?あ、嗚呼まぁ。」
「ってことはだ…まさかとは思うが、敵に情けを掛けるんじゃあって思ったんだよ。」
「うぐっ」

 リムルの言葉にそんなことはないと言いたかった気持ちよりもギクリと言葉が出て来たことにミルは驚き口に手を当てている。それにやっぱりなとため息を吐いた。

「自分の身体を傷物にするのは許すが敵味方問答無用で傷付くのを嫌がるようじゃあ幾ら命があっても足りないぞ?」
「いやでも身体修復出来るしいざとなったら魂消えてもなんとか生き返らせるようにするし…」
「そうして戻って喜ぶ奴居ると思うか?」
「うぐ」
「その優しさが仇とならないようにもベニマルを護衛として付けたんだよ。あとその人懐っこさというか警戒心の無さも心配でな。」
「うぅ、ちょっと顔を変えれば出来るの、リムルも知ってるでしょ?」

 私はまだ知らないけど、そう言ったミルにリムルはそうだけどとくすぶった。そう、ミルは自由に化けることが出来る。敵に回したくないと言ったのは此処が一番の理由となっているのだ。

 ミルはやろうと思えば人を容易く傷つけることも出来るし、役者も顔負けくらいには空気にのまれて演技も可能だ。それは自分の心さえも騙し取れるということであり、同時に感情を殺すことが容易に出来る無謀者ということでもある。

「それをやって精神が壊れたら元も子もないだろ?」
「そりゃそうだけども…でも、どうしてベニマルさんなの?」
「んお?何でって…単純にミルが懐きそうだなって。」
「うぇっ⁉っなななんで」
「鬼さんって言ったろ?あの距離を置くミルが。」

 本当に知ってるんだねと軽く引きつつもミルは答える。

「そうだよ、ほら泣いた赤鬼って知ってる?」
「ん?嗚呼人間と仲良くなりたい赤鬼の話だよな?確か青鬼が村で暴れて赤鬼が最終的に泣いたっていう。」

 優しい鬼だと看板を立てて人も来ず泣いていると友達の青鬼が赤鬼の為にひと肌脱いでやった物語だ。作戦は成功し、赤鬼は無事友達もできて、毎日毎日遊び続け充実した毎日を過ごすことが出来たものだ。

 だがそれも束の間、青鬼は村から出て行ったのだ。赤鬼と友達だと知られたら今度こそ人間と仲良くなんて出来なくなってしまうから。それに赤鬼は泣いたのだ。

「うん。絶対違うとは思ったけどさ、赤鬼さんと青鬼さんのこと思い出しちゃって。私で良ければお友達になって居れば青鬼さんとも仲良く出来たんじゃないのかなって。」
「ミル…」
「鬼さんはとっても怖いけど、ベニマルさん達はとっても優しいって直感が言ってくれたから。だからこそ、距離を取りたいって思うの。」

 どうせ私の周りに居たら苦しい事が起きるから。

 そう言いたそうに、ただ口を閉じたミルにリムルはそれでもだと答えた。

「あいつ何だかんだ面倒見は良い方なんだよ。甘え下手な所直して貰ったらどうだ?」
「びぇっ其処まで私のこと知ってるの⁉」
「っはは、一応俺お前の推しだったからな。」
「…今は?」
「推して良いならするけど、っていうかこう嫌じゃないのか?俺だけ知ってるっていうのも。」
「嫌ではないけど…まぁ少しずつ知って良ければとは。うん。ベニマルさん達優しいし。」

 おお、早速絆されてる…ベニマル、お前一体何をしたんだ。

「それにしてもミル、お前何か変わった処ないか?っていうかそれこそベニマル達は?」
「リムルが起きたって話を「リムル様お目覚めですか⁉」ほら。」

 嗚呼なんかデジャヴを感じる。そう思いつつ、スライム状態になっていたリムルの身体をシオンが分捕り抱きしめる状態に、ミルは苦笑いしている。その間に噂をしていたベニマル達がやって来た。

「やっとお目覚めになったか、リムル様。」
「おお、色々世話になったな。」
「いやいや、今の処これと言った大きな問題もありませんよ。至って平和です。」
「うむうむ、平和が一番だな!」
「ミル様こんな所に‼」
「うげっシュナさん…」

 うげっ?そう青ざめるミルが警戒して腰を低くし下がる状態に、リムルは首を傾げる気持ちで見つめる。

「ベニマル、コレは一体?」
「はい。一応シュナとミル様の仲は良いんですが…一つ問題が。」
「問題?」
「ミル様いい加減そのようなお召し物では無くてちゃんとした着物を着て下さい‼」
「いい〜やぁ〜〜だぁ〜〜‼この服じゃないとしっくりこないの‼動きにくい服は嫌です‼」
「服が映えると気付いたシュナがミル様を追いかけまわしている次第で…おいシュナ、嫌がっているだろそれくらいにしておけ。」
「ですが…」

 そう困るシュナの両手にはミルに着て欲しいだろう和服があり、ミルは首を横にブンブンと振っていたのが縦に変わった。あ〜なるほど、ベニマルを護衛にと任せて本当に当たりだったな。これは懐く。

「戦闘用の衣服も要望していただろう?そっちを渡せばいいだろうに。」
「それはそうなんですが、一度気に入ったお召し物ばかり着ていましてですね。」
「コレ一着で良い。私リカちゃん人形じゃないもん‼」
「っぷ、ははっ、くっ、ふははっ」
「リムル様?」

 ミルは余りにも怖いのか何なのか、ベニマルの背後に回ってシュナから距離を取っている。腰の引け具合と言ったら叱られると困る子供のようだ。

 それに対してベニマルは父親と言った処か。兄弟喧嘩が家族喧嘩のように早変わりしてリムルは笑ってしまった。

「いやごめんごめん。シュナ、衣服をコロコロと着せ替えたい気持ちは痛い程分かるが、相手のことも考えて声を掛けてやってくれ。」
「すみませんリムル様…」
「ミルも其処まで拒絶しなくたって良いだろ?高々数着着せ替えさせられるだけだろ?」
「…じっと一時間動かずに居られない私の気持ちが分からないと?」

 あっ大体予想付いた。大方ミルが外に何か気になるものが見えてソワソワしていたところシュナが何か言ったのだろう。それに過剰反応したミルがシュナからひたすら逃げる状態になってしまっただけだろう。

 一応言い聞かせたら素直に聞く子なんだよな。数日前に来たばかりというのに、もう数か月居たかのように振舞っている。その溶け込み方は、居なくなっても空気の様に溶けて分からなくなるようでも見えて恐ろしいものなのだ。

「嗚呼そうだ、ミルお前料理は得意か?」
「ん?男飯なら作れる程度だよ!」
「じゃあ早速で悪いんだが…アレを作って欲しい。」
「アレ?」

 そう首を傾げたミルに、シオン達も首を傾げる。そうだ、アレだ。

「お前が飲んでいたアレを作って欲しい。頼むマジで飲んでみたいんだよ!」
「作るのは良いんだけども…この世界にコンソメスープの素とか無いでしょ?」
「いや作らせるってか出せるぞ。」

 大賢者に何とか言ってコンソメスープの素を手に取り出す。それにミルは声を荒げながらリムルの手にあったスープの素を取って驚く。

「おおおおおすげええええええ‼リアルコンソメスープの素だあああああ‼」
「ふっふっふ〜ミルさんや、此処は等価交換といこうじゃないか。」
「ん?等価交換?」
「アレを作って披露してくれればある程度この町を回ることを許そう。ついでにシュナの件もな。」
「ちょ、リムル様⁉」
「俺は幻のアレを食べて満足したいし、お前はもう少し楽にこの町で暮らせる。お互いメリットがあるだろう?」
「んむ〜〜〜………調理場借りる。」

 おお話が早くて助かる♪そう言ったリムルにミルは移動し始める。それに対してベニマルが話を聞いた。

「リムル様、アレとは一体何ですか?」
「それは見てのお楽しみだ。」

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