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 コトコトと音を立てて入って来たのはミルとシュナだ。スープを持って器に入れて各々前に一つの器に入ったスープが置かれる。

「コレは?」
「卵スープです。胡椒を入れて鶏ガラの出汁が効いてますのでほんの少し辛口ですが。」
「うっひょ〜うっまそ〜〜なぁなぁ食べても良いか⁉」
「はい!」

 そう言ったミルに、リムルはスプーンで卵ごと食べてみた。すると口の中に香ばしく香る胡椒とコンソメ、そして踊るふわりとした卵に思わず足がバタつく。

「〜〜〜んまい‼美味すぎる‼」
「…っ、確かに。」
「えへへ、私が上手なんじゃなくてコレを作った作者が上手いんですよ〜えへへへへ」
「いやいや、こりゃ間違いなくミルの上手さだよ。へ〜パンチ効いてて美味いじゃん。これシュナ手出したのか?」
「いいえ、私はただ調理場を案内して味見をさせて頂いたまでです。」

 ということはミルの力そのものである。スキルか?

―解、小鳥遊ミルはスキル【料理人】を取得していません。

 なんだと⁉ということはマジもんじゃねぇか…。

「これくらいだったら流石に毎日だと飽きますから偶に夜飲むくらいが丁度良いんですよ。今真昼間ですけど。」
「ん〜良いなぁ〜冬の夜とか染み渡りそうだ。今真昼間だけど。」

 そうお互い釘を刺しつつ、笑って答える。ん〜平和で何よりだ。

「これはこれは、老体に染み渡ります。」
「えへへ、白鬼さんじゃなくてえっと」
「ハクロウと申しますぞ、ミル様。」
「様だなんて良して下さい。ミルで構いませんよハクロウさん。」
「いやいや、リムル様の尊敬されるお方とあれば様はあって当然のこと。」
「あうあうあう」
「あはは、諦めろミル。」

 困った時にリムルやベニマルの方を向くミルにリムルは苦笑いで答えた。心なしかベニマルも困りつつも笑っている。素直に笑って困ってと騒がしい子なのだ。

「うう、なら対抗してハクロウさんって呼ぶもん。何なら白鬼さんって呼ぶもん‼」
「ふおっふおっ好きに呼んでくれて構いませんぞ?」
「ううううううう」
「っはははは、ほんと困らせられないと困るよなぁ〜ミル〜?」
「うわっ、リムル何するの‼頭なでなでしないで‼」

 いや絶対するだろ。あのお人好しで相手に委ねることしか頭にないあのミルがだ。相手にそれもハクロウに物申して不貞腐れているのだ。彼女が此処に来てからもう一週間程経つ。

「ハクロウ、そういや指南はしているのか?」
「えぇ、リムル様のご指示の通り先日少々戦って見ましたぞ。」
「それで?」
「正直言うと俺とハクロウ二人掛りで動き出すと慌てふためいて話しになりませんでした。加えて手抜かれました。」
「だって傷つけたくないんだもん。」
「いやいやいや、傷付ける前提で行かないと死ぬから。」

 そう言ったリムルにハクロウさんと同じこという〜と頬を膨らませるミルに、ハクロウは言ったであろうと答えた。

「自分を守るには敵に一手を出せねば意味がなかろう。一対一の戦いもない時だってあるからのぉ。」
「手抜いたんじゃなくて傷つけたくなくて避けただけだから‼」
「それを抜いたって言うんだよ…」

 っていうかうちのハクロウとベニマル二人掛りで焦って避けられるレベルって…待てよ?

「なぁ、ミル、俺とちょっと遊ばないか?」
「ふえっ⁉」
「リムル様?」
「嗚呼違う違う、戦いなんじゃなくてさ、お互い降参って言わないまで試合するんだよ。今日はしてないんだろ?」
「んまぁそうだけど…」
「じゃあスープのお礼ってことで、さ?」

+++++++++++

 ヘメラさんヘメラさん。

―なんでしょう。

 リムルってどんな生物なのよ。

―解、スライムです。

 じゃあどうして私の攻撃を飲み込みまくって攻撃出せてるの?

―解、スライムの性質だからです。

 いやそうじゃなくて。

 そう焦っているのは「はじめ」と言ったシオンからの合図から数秒後。かかってきて良いと言われたので、一先ずフォティアの力である炎【炉焔者(もえるもの)】を使って青白い炎を使って周囲を囲んだ後、軽く炎は効かないと言って詰めて来たのでヒ―ノの【神水者(せいのもの)】を使用し水で止めて距離を取ったのだ。

 そしたら吸収して動きやすくなったのか素手で攻撃をしてきたものだからホロスの【空間者(はざまのもの)】を使ってリムルの身体を空間ごと空中で閉じ込めたのが数秒前。

 そして今、その空間ごと吸い込んで戻って来た。

いや何で⁉

「ヘメラさん私どーすりゃあいいの⁉ヘメラさん⁉」
「っはは、魔素を使っての攻撃ばっかだと隙だらけになる、ぞっ!」
「びえっ、わ、ちょ、わと、ま、ってよ!」
「ほらほら〜当たるぞ〜反撃しないとしないと」
「っこっの‼」

 そう言ってリムルに攻撃を入れようとするミルに、サラリとリムルは避ける。ミルの力は確かに強い。だがそれは威力が勝っているだけであって流れは圧倒的にリムルの方が上である。

「あんな魔素抱えて一度も当てれてないっスよ…?本当に強いんすか?」
「馬鹿、威力で言えば此処に居る全員の魔素をぶつけても勝てん者だ。」
「いいっ⁉」
「だが、一ついや二つ程欠点がある。」
「欠点?」
「よく見なくても分かるじゃろうて。」

 ほれと言って顎で指した場所、それはミルが攻撃を仕掛けるところだ。右へ左へと当てる方向が若干違う。

「明らかに当てようとせんのじゃ。傷付けないという前提で動いておるからじゃろうな。力を使っても閉じ込めたり距離を取ったりと防衛しかしとらん。」
「まぁ自分の身を守るとなれば上等だがな。」

 だが、敵として当たるとなれば話は別だ。その威力も馬鹿にならない。その力を使えるようになれば今の威力も桁違いになってくるだろう。

「あともう一つは…」
「いい加減魔素から離れろって‼」
「だってこれ以外やり方分からんってば!」
「魔素を無駄遣いする所じゃの。」

 浮遊してミルは空に逃げる。狡いと言って翼を広げリムルもミルを追いかけ始めるのに驚いたミルは距離を取る。物理攻撃も精神攻撃もしてこないとなれば戦闘気力を削ぐというもの。まぁそういう戦い方も無くはないが…。

「アレ程までの力を出してたった6%だと言い張るならば、間違いなく教育しておいた方が身のためだろうからな。」
「それにしても…遊ばれてますね。」
「嗚呼、遊ばれてるな。」
「心なしか怒っておられます?」
「怒ってるな。」
「むきゃーーー‼ちょこまかちょこまか動くなこっの青いスライムが‼」
「それ俺貶されてないよね⁉」

 もう怒ったと言ったミルが距離を取って腰を低くして声を上げた。

「君がそうやって動くならこっちだってやれる時はやれるんだから‼ヘメラ変換したら攻撃出来るって言ったけどさぁ〜ソレ、【穴】だよ。」

 ニヤリと笑ったミルが更に腰を低くして、ジッとリムルの方を見つめて不敵な笑みを浮かべて答えた。

「通常の力を出そうとしなけりゃ変換しなくて良いってことでしょ⁉つまり全力で通常以下を出せばカロリー半減超楽出来るってことで戦闘モード新しく変更カロリー半減‼」

―威力半減効果発動します。全スキル無効適応します。

 適応しました。そう言った言葉を聞いてミルは走り出した。

「私の力を漫画で知ってるならコレは分かるよね‼フォティアお願い彼の者を捕らえて‼」
「だから俺に炎はきかなっ⁉」

 そう笑って居たリムルだったが、身体に青白い鞭のような形で炎が縛り上げられた。それにぎょっとしていたリムルだが、ニヤリと笑ったままたたみ上げるようにミルが声を上げる。

「アエ―ラス‼風でリムルに追い風作ってエレクシアそのままそこだけ重力3倍‼」
「ちょっまっ⁉」
「バグよ彼の者の思考をバグらせて‼ケラノスフォティアヒ―ノライフドーリシュッツエ‼」

 そう言ったミルの手が上に上がる。するとリムルの視線全方向から槍と弓矢が青白い炎や金色の光、水、氷とそれぞれの光を持ちつつ攻撃の形が決まる。

 まるでそれは夜空の星々のように、空には無数の光がリムルの方向を示しながら止まっていた。その力が一度に振り下ろされればどうなるかくらい、この場で太刀打ち出来ないであろうゴブ太でも察した。

 これは不味い。

「ど?降参、する?」
「っは、誰がするか、よっ!」
「放て彼の者を切り避け‼」
「させんグラトニー‼」
「それを待ってました‼フレイム彼の者を捕らえろ‼」

 そう言って手から広がったグラトニーをミルの手から生み出した額縁が捕える。綺麗に入ったグラトニーに、攻撃を出そうとしたリムルだったが、

「あ、あれ?あれっ⁉グラトニー‼ぐ、グラトニー‼」
「え?り、リムル様?」
「…はっ」
「っ〜〜やっべ、きかねぇ⁉」
「どうする?」

 降参、する?ニヤリと笑ったミル。これで全く力を出していないというのだから驚く。普通に力は使っているじゃないか。確かに威力は半減以下だ。でもその分動きやすさが半端じゃあない。漫画で見た力に、アニメで見た俊敏な動き。

 そしてその何処かをじっと見つめている瞳の奥。自分以外を見てどうして戦うと言っていた敵の気持ちが痛い程分かる。今なら分かる分かるぞ。何を見ている。何処を射ているんだよ。

ミル、お前は此処に生きているんだ。

「しない‼」
「そ、其処まで私の力を見せたいんだね。」

 ならばこの小鳥遊ミル、全力で行かせてもらおう。そう言って地に足を付け、ゆっくりと足を引いておじぎをした。その綺麗な礼儀に、少しだけ目を奪われた。ジッとただリムルの先を睨んでみていた。その目は何処か

「(何でそんな寂しそうにみてくんだよ…‼)」

 無き者を想う少女の姿に見えた。瞬きをした瞬間、ミルは宙に舞って足を閉じてジャンプしていた。リムル様と声があってすぐに避けたが、ミルの手に持っていた槍の威力は掠っただけで軽く体が吹き飛ばされる程。

 おいおいおい、これこの世界に慣らしてないだけでこの威力⁉待って普通に強くない⁉

「っと‼」

 攻撃がすぐにかかってくる。どうやらその気にさせてしまったらしい。

「ほぉ…やれるじゃないか。」
「速さも気の迷いも先程と比べれば数倍も速い。」
「威力は小さいように見えますが隙は先程から見て一切ありませんね。」
「(そうないから厄介なんだよ‼)」

 俺が敵として会いたくないと言ったのがコレである。ただ下手に煽ってもこうなったら聞く耳を持たない。ただジッと此方を見て攻撃を仕掛けてくるだけの人形に成れ果てるのだ。

 ジッと見つめて右左と攻撃を仕掛けてくる。間違いなく当てに来ているので此方も受けて攻撃を入れるが綺麗に交わされて追加攻撃を食らう。いてぇ。

「押されてる…?り、リムル様が⁉」
「ハクロウ、お前ならどっちが勝つと思う。」
「答え難いことを聞きおって…そうじゃな、リムル様じゃろうな。」
「え⁉どう見てもミル様が勝つんじゃ」
「見てほれ」
「…っ何で攻撃してこねぇんだよ‼」

 そう荒げた声は低く、胸の叫びの様に聞こえた。ジッと見つめたリムルが低い声で答えた。

「お前と今喧嘩しても意味ないからな。俺の向こう側と戦って満足か?小鳥遊ミル」
「〜〜っきっさま‼ヘメラハーフモードマックス‼」
「っうぇ⁉」

 そう言ったミルは身体を地面に落す。降参か?と言った者に良いや違うとベニマルは腕を組んで答えた。顎を引いて、真面目な顔で答える。

「…まずいな、本当に勝つぞあいつ。」
「え?」
「了、ハーフモード実行します。人間思考回路一時停止及び遮断します。現在時刻を持って攻撃対象リムル=テンペスト一体を攻撃します。攻撃停止コード「降参」以上、オートモードに変更します。」
「うおっ‼」

 倒れた身体をゆっくり起こしながらミルは答える。淡々とまるで機械の様に、感情のない言葉を喋った後ミルはリムルの顔面目掛けて攻撃を仕掛けた。それに咄嗟ではあるが防いだ。

 立て続けに攻撃を繰りだす。手から炎や氷等の力を出してリムルに牙を向けるが、避けて何とかしのぎつつ背後に回って手刀で意識を飛ばそうとするが

―告、罠です。

 ミルの狙いで、ミルはリムルの腕を掴み身体を投げようとするのに急いでリムルは踏ん張ってミルを宙になげる。それにミルはニヤリと笑った状態で宙に身体を飛ばし、距離を取った。

「おいおいおい、マジかよ…」
「リムル様アレは⁉」

 ミルの片手に炎と雷、水が混じり出し恐ろしい球体が出来上がる。先程威力は半分だと誰が言った。明らかにこれ以上が出来上がるのは街が軽く死滅する。急いで止めを言い渡すが、声が聞こえていないのか攻撃を仕掛けてくる。

「っまずい皆逃げろ!」

 グラトニーは悲しいことに今封じられている。飲み込むのは難しく、声が聞こえていないのに焦ったリムルだったが

「っ⁉」

 瞬とミルの背後にソウエイが入って首に手刀を入れて意識を飛ばし身体を受け止める。威力はベニマルとハクロウ、シオンの手によってかろうじて半減させ宙に飛ばすことで事なきを得たのだった。

「そ、ソウエイ助かった〜〜〜」
「いえ、一対一の戦いに入ってしまい面目ございません。」
「いやいやいや、絶対良かった。ありがとうマジ助かった。」
「はっ」
「にしてもあの威力、見たことない程でしたね。」
「ベニマル」
「おおっと、ソウエイすまん。」
「いやいい。」

 ソウエイは気を失ったミルをベニマルに手渡しするとそっと下がりそのまま消える。どうやら何処かにまた出掛けたらしい。本当に良いところ取りをして消えるなあいつ。

 気を失っているミルはそのまま姫抱きをした状態でベニマルがリムルに声を掛けた。

「リムル様、ミル様を部屋に戻してまいりますね。」
「嗚呼頼んだ。もし途中で起きたらそのまま部屋で寝るように言っておいてくれ。」
「承知しました。」

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