時間は過ぎ、放課後
補修と言って、嘆く芦戸に
ドンマイと言いながら相澤の隣で作業をする小籠
「最近どうだ、調子は」
『それは恋愛の方ですか?それとも体調の方?』
両方、と言いたそうな目に私は首を横に振った
『調子を合わせているだけです。私の方は何にも』
「ええ!?そうなの!!」
髪が上がる前にすぐ勉強に戻る芦戸に
私は苦笑いをするしかなかった
「あの人成績良かったんだな」
『物覚えは早いわ、成績も努力で上げてましたよ。
あの人案外理科とか不器用なので…』
裁縫系は私が努力して覚えて、彼に教えていたのを思い出す。
そういえば、こんな放課後に二人で人形を作っていた。
あのお人形は、二人一緒に生きてるのだろうか?
…記憶を消すのに、恐らく消えただろう。
思いが強ければ、効果は出ない。
『彼は英語が得意だったので、私の方を向いてニヤニヤ』
ニヤニヤ…煩くなる程まで煽ってくる。
今日何度英語の授業で煽って来たか。
普通に蹴り上げそうになった。マイク先生がいなければ。
「マイクが"あんなカードgirl見た事ねぇよ!"って驚いてたよ。」
『昨日から大分エンジン全開ですからね。』
「ま、元気そうなら良いよ。」
私は全く元気にならないんですけどね?
そう考えつつ、秋の空を見上げる
『(誕生日、近いな。)』
家に帰った暗闇を思い出す
何もなく、自分が炊かないとなかったごはん
あれた机にタバコのにおいがこびりついていた
おそい
どうせ帰って来ない。そう考えながらも
今日は早く帰ってくる。そう希望を感じていた。
なのに、毎度毎度帰って来なかった。
諦めが芽生えたのは、その頃からか
小さな風のぬるさも、自分の息の温かさも
汚らわしく感じた。
『芦戸終わらないんですか。このままだと日暮れますよ?』
「日は暮れた」
そうですか。そう空をもう一度見た。
彼女には聞きたい事があったのだが、どうやら難しいらしい。
席を外す、と同時に帰宅に向かう私に、相澤先生が声をかけた
『…"気を付けてね"か』
何を?何に?
疑問を浮かぶが、暗闇を思い出し、ため息をついた
真っ暗で、恐怖に飲まれて、息を忘れる。
ぬるい水も、出したい言の葉も、忘れて。
時間だけを恨んだ。時間が過ぎても、
何も変わらないのに。
『のっくん、楽しそう。』
それでも、今は楽しい。
あの時間が、嘘のように、今が楽しい。
このまま続けばいい、このまま。
嗚呼
『…ケーラね』
封印。
昨日は、あの後夕方に撃ったバグが仲間に入った。
流石に自分の身体がプログラムの様に光ったのには驚いた。
しかし、敵の前と考えて身体に出さなかったのだ
『なんで、この時間なの。』
夕方、日暮れ
人が帰る時間
ーごめんね。
私が、一番許せない時間
『クロノスタ、バグ、ケーラときたら…』
全て、時間に関わるもの。
時間を止めて、その時間が偽りで、その時間を封印したくて。
彼が関わるたびに、カードが増える。
新しい物も、古い物が新しくなるのも。
それは、良いというよりかは
「かなり悪い、な」
『…ウェンティー』
フクと呼べ。そう言った彼は帰り際の
私が歩いている近くに生えていた木の上から声をかけた
「カードが一日に一枚ずつか、」
『此間のヴィラン騒動。』
「カードを増やせば"代償となる厄災は必ず"だからな。」
創造あれば破壊あり。
この世の摂理である。
「だが、前回からペースが大分早いな。」
『消えてなくなったカードも戻ってきたりしてるしね…アカシックレコードは?』
異状ない。そう言い切ったフクに少しほっとした
『日曜日が来て欲しくないな』
「最後か」
yes。そう言って石ころを蹴り上げた
「占いでは?」
『"廻る"だってさ』
その言葉に、フクは眉間にしわを寄せた
小籠も同じく眉間にしわが寄る
『昨日、占ったの。怖くて、』
「嗚呼」
『"停止"だった』
「そうか…」
『日に日に悪くなる。やっぱり感情は!』
止めた方が良い。
そう感じた、なのに、フクは人差し指を立て、口元に寄せた
首を横に振った
その動作に、小籠はうつむく
「今止めた所でどう変わる?そのままが良い」
『現状維持、ね。』
「あまり深く落ちるなよ。」
さもないと、すくわれるぞ。
そういわれたフク本人は、消え、目の前は
部屋の前だった
+++++++++++++++++++++++++++++
目を覚ます
変な感覚を感じた
時刻は真夜中の2時だった
『…居る』
少なくとも、感覚が3つ感じる。
一枚だけでは、ない。その絶望に、私は悲しくなった。
『どうして、どうして…』
窓を開け、空を見る
恐らくおこるだろう。
私は服を着替えようと思ったが、普通の私服も限られていた為
時刻も時刻と判断した
『…相澤先生、のっくん。ごめん。』
アステル、そう自身の名を呼び、目を醒ます
背中に三角形の杖が三つ浮かびあがる
窓からこっとり空に飛びあがった
『何処、何をしようとするの。』
ざわつく風に方角が知らされる
南西の方角に、空をかける
すぐに森の中にざわつく光が見えた
その光に向かい、右手を横にきる
『ケーラ!!!』
光が自身の胸元に集まり、カードになった
『…"ソル・デ・メディアノチェ"』
幼子が二人、両腕で円をかき、その中に太陽と月のマークが逆転している
『こっちか!』
「マテ!侵入者、侵入者!!」
チッ!!そう舌打ちを盛大にする小籠だが、
その機械の奥に何かを見つけた
胸のざわつきが合っているのなら、次はあの場所、
そう宙に浮いていた身体を勢いよく加速させた
待ちなさいとの声を無視したのか、警報が鳴る
嫌な音のサイレンに、耳がつんざく。
『ここか!!』
「狼森!!お前か!」
『っ相澤せ』
そう声を出す前に、宙を切る
舌打ちが聞こえた。夜の為、とても声が響くのだ。
捕縛で私の事を捕えようとしたのだろう。
「何故その姿でいる!」
『だって、嫌な予感して』
カードだって、見つけた。
そういう前に、物事は進む。
全く、最近言い切る事が少ない気がする。
私はすぐに速度を上げ、相澤先生の身体を掴み上がる
「っ!」
『動かないで!…おぉ…これはこれは』
お集まりなこって。
そう周りを囲んでいたのは、真っ黒な檻、だろうか?
それが1つじゃあなく、大中小まわりを囲んでいた
成人男性を空中に浮遊させた所で、奴らの目標は
"継承者の近くにいる人間"である
浮遊して逃げ切れる人であったとしても
奴らが攻撃してくれば難しい。
誰か、だれか…
誰か?
『私、嘘、』
今、助けて。って考えた?
ぞわりと今まで感じなかった感覚に鳥肌が立つ
エスカと声を出し、相澤先生と私のデコイを作る
複数作り、移動をさせたので目くらましにはなった筈だが
「っおい、あいつらなんだ!?」
『"厄災"です』
「厄災?」
『約束なんです!!だから、だから私は』
感情を殺したのに。
怒りに任せていい事はない。
この場を晦ますためにも高い場所に移動した
「お前、服」
『ご安心下さい、熱を感じません。』
冷たさも、暖かさも。
その言葉に、相澤は耳を疑った
『厄災、私の感情が戻りつつある状態で、八木俊典の記憶も開放され、尚且つ私の記憶全て取り戻した状態、そりゃあ見えるわけない人間にも見えるか』
「何を」
『貴方を浮かします。捕縛で何とか周りの鳥籠を壊してください。あと』
多少、力を与えます。
そう言った小籠に目を開くが、相澤は急な対応にはなれている
深くうなずいた後、真下に降りる
びゅうびゅうと音が鳴るはずの速度、なのに
「(感じない、?)」
音も、風も、熱さえも感じない。
感覚が分からず恐怖が沸き上がる
だが、そう考える時間を目の前が許させない
迫りくる鳥籠に捕縛で引き寄せぶち当たらせる
『グルート!熱で焼き焦がせ!!』
鳥の鳴き声と一緒に直下する方向に落ちる火の鳥に
相澤は捕縛をしまい、小籠に声をかける
「次は!」
『一度降ります!まだ攻撃態勢やめないで!』
すさまじいスピードも何も感じない
痛みさえも知らない身体に、慣れが来たのか恐怖が薄らぐ
『人に痛みを与えるとは、良い度胸だ…』
そう言った小籠は右手に力を籠める
『下す者に全ての痛みを!!カプット!!!』
手を上に伸ばし下ろす小籠に
空から白い光が差しおりる
触れた鳥籠は破壊され、消えてなくなる
その光景に、相澤は触れないとよけるが
当たる、そう思った瞬間小籠が上に重なる
「っな!!」
『だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。』
痛みは、ない。
そう言った小籠の横腹がプログラムのバグの様な色が広がる
『ケーラ!!』
そう言った小籠の手の中には
『"クルヴィ"…』
「小籠」
『あい…貴方、先生じゃないね?』
そう。先程から近くにいて分かった
『あのね、人間には私の力が伝わらないの。
継承者に近いものか、私が信頼した人が脳内で
テレパシーを使える存在かのね!!!』
そう怒りを込め、先程捕まえたクルヴィで鳥籠の檻をつくる
何者なのか分からない。その為なんでも起きて良い様に
カードを考えていた
「お前、手出しできないのか?」
なにを、そう言おうとした目の前には
ずっと手を取りたかった相手がいた
「好きだ」
『ーっ!!』
その手を、私はまた、とれない。
掴めないと、知っても尚、近づけさせようとする。
すると後ろから声がした
「小籠!!この騒ぎは」
『っ!きちゃだめ!!!』
そう力強く来ない様に否定するが、鳥籠の魔力が甘かった
「っ!」
「ねぇ、好きなんでしょう?どうして伝えないの?」
消えた好きな人は、変化し
愛おしい少女に変化していた
『っ!!離れろ!!』
「誰よりも、何よりも大切。だから壊す。それが呪い」
「え?」
「ねぇ、"君は何度でも感情を殺す"」
うるさい
そう伝えたいほどに、今までの力を終結させる
おとりをだし、目くらましを付け、外部に害がない様に
柱を9つ作り、1つを上に付け、雷で大きな鳥籠を作る
八木の首から離れる少女に
小籠は手を伸ばした
「なら、"この人を殺すのもいいでしょう?"」
許されるわけがない。
そんなもの何度だって呪ってやる。
手を伸ばす
もっと早く、速く、はやく
ピッ
赤い絵の具が目を染めた
「い、っ!!」
「優しいのね、傷つけたくなくて、保護した…なのに」
傷を負った、首に。
かなり深い、そう感じた小籠はすぐに近寄り
かの人ではない者から逃げた
『っ!駄目、だめ、だめだめ』
駄目だ。そんなの許さない。
治療を感じろ、理科でずっと受けてきた
身体の隅々の回復を
「や、めて」
『っ!』
視界が歪む
駄目だ、あきらめてはいけない。
力を使い、極限の状態に近づける
右手首を左手でささえ、下ろした彼の首元に集中する
しかし、彼が手を出す
「いい、もう、いいん、だ」
『ダメ!!貴方は此処で死ぬわけには』
「ごめん、ね」
『っやだ、やだ』
手がゆっくりと落ちる
その時間が長く感じた
なによりも、なによりも長く
『だめっ!!!』
光が強く開く、突如
「ーきて!小籠ちゃん!!!」
『っ!!!』
+++++++++++++++++++++++++++++
「力を一瞬で、最大限に使い、攻撃をねぇ」
『マ・ジ・で・ごめん』
土下座している小籠に大丈夫だよ、と麗日がいう
それに小籠は
『いやほんとマジでごめん。ごめんってダメだね、私失礼な事しまくってるのに、麗日さんの首切ろうとするとかマジでどうにかしてるからちょっと私の事一回殺して良いよ、ほんともう傷になったらシャレにならんからあの』
「ストップストップストップ!!!」
そう土下座と謝る事をやめろ、そう言い切ったことを止めたのは
相澤が駆け付けたころだった
『ふくちゃ、どうしよ』
カード、ふえちゃった。
その言葉で、何時もなら人がいれば我慢する感情を
思いっきり出し、勢いもなく、ぽすんと胸に寄った
「っ、」
撫でるべきか、否か、フクと呼ばれた青年は手を一度止めたが、
優しく大丈夫だと抱きしめてあげた
「"ソル・デ・メディアノチェ"、"クルヴィ"、"クーア"」
"アンヘル・カイド"
「マイク、翻訳」
「っ、俺翻訳がかりかよ…国は違うが、」
"白夜" "檻" "治療"
「"堕天使"」
「堕天使、?」
「月曜から見つけたカードは?」
そう言ったフクに頷いた小籠が手をだす
「っ!カードgirl、正気か?」
言え
そう捕縛で無言の圧を受けるマイクに
少々可哀想だと、招集された八木は感じた
「"クロノスタ" "バグ" "ケーラ"
最初はわからんが、プログラムの欠陥、封印…」
時間、
『時間、止めるやつ』
「停止、か…」
「フク、カード自体の出現率は」
「本来稀なことだ。1月に一度出るかどうか」
「それが、この3日で、7枚」
本来あってはならない。
そう泣きべそ、否泣いていた小籠が目を腫らした顔で言う
『っ、約束のカタが外れてるから、厄災の頻度も高いの』
「カタ?」
「前に言ったか知らんが、継承者と前魔術師の間で継承の儀式がある」
その時の約束の話だ。
「じゃ、じゃあ約束全部破っちゃったら?」
「人が生きれる世界になれたら奇跡、位だ」
「方法は!?方法は、ないん、ですか」
そう勢いが減った緑谷に、小籠が関係していた
『感情だよ』
その笑顔が、とても寂しそうで、今にも泣きそうな顔をしていた
『当時私は記憶を保持していた。
"前世の記憶"にさいなまれていた私は
未夜との間に約束をつけた時、未夜は言ったの。』
"感情を殺せる貴方だから受け継ぐことが出来るの"
そう、ごめんね。と最後に伝えて、彼女は消えた
『感情を消し、生み出す。それは途方もない辛い体験。
それを私は経験していたから、扱えた…でも生命が
生きるのに耐えれない時、感情を消す様にしたの。』
「じゃあ!!」
『だから!!!…だから、好きを殺したの。』
愛情が、全てを殺すから。
そう小籠は言って、フクの胸から離れなかった
+++++++++++++++++++++++++++++
「あの子も辛いな」
「…嗚呼、」
話を聞いたマイクと相澤は、緑谷と麗日を連れて
授業に向かわせた
精神的に厳しいと判断した小籠はフクと一緒に
学校内で精神的に回復するように傍にいると進んで協力してくれることに
「想像していたのより、大きかった」
「オールマイト、」
小籠が背負った、未夜が背負った力
それは少女たちが一人で背負うものではない力
それだけではなく、ただの破壊兵器になりかねない感情の欠如
小籠の恐怖は、八木が一番味わっていた
それは、夢の中、小籠が戦ったと同じ事が起きていたのだ
「手を伸ばしたくなかった、彼女の痛みを和らげたかっただけだった」
なのに、瞬きをした次の瞬間には、私は首を切られていた
幸いなことに痛みはなく、夢であったことを感じていた
でも、彼女は現実と思っていた
いや、現実でなくても、つらい状態だっただろう
泣きながら、必死に名前を呼ぼうとする小籠の手が
喉元から離れず、右手でさわる
「何故、あの子だけに」
いやだ、いやだと涙を流し
彼女の涙すら拭いきれなかったのか
自分が、一番許せない
「最初は優しい夢だった、彼女が笑って手を取ってくれていた」
なのに周りは暗くなり、空は赤黒く染まり、この世の終わりを告げていた
木々は朽ち果てそうになり、小籠は八木の名前を強く呼ぶ
手を取っても、辛そうな顔が、瞼を閉じても浮かぶ
「っ、自分が情けない!!!」
落ち着け、と周りも言えないのも無理はない
月曜は別としても、火、水曜日と良い時間を過ごしていた
幸せそうな時間に、周りも安心していたのだ
だが、思っていた以上に、彼女らの約束は強かった
「代償を差し出した、だがそれ以上に厄災が勝った、ねぇ」
「それよりもカードが気になるな」
"堕天使"
小籠の話を聞いていると、好きな人さえも綺麗に見せてくる
しぐさも全く同じようにして、その者を殺そうと、否殺しかける
カードの絵も、男女不明の人の背中から天使と悪魔の羽がつき、
下に落ちていく姿として描かれていた
「まぁ彼女は周りが不安がるのが一番毒でしょう」
何時も通りに、接しよう。
そう答えが出た一同は、各場所に散った
《後書きスペース》