君の幸いの日、星の降る夜

「ここなら君の答えを聞いて良いって事かな?」

『なっ何でそんな強気なんですか!?』

余りの驚きに敬語になる小籠に
まだ戻っていない筈なんだけどなーと
うーんと言いたいかのように何とも言えない顔をする

『だっだって、…しないと、記憶無くしちゃうから』

「んー???なんて?聞こえなかったんだけど。」

そうニヤニヤする八木にビクりと肩を上にあげ
分かりやすい位に驚き反応する小籠に
自分の事で反応するのに可愛らしいと感じていた

『あっえっあの、さっさっきは恥ずかしくて連れて来ただけで!』

「急に言われたから?それとも」

キスしたくなったから?
そう耳元で囁く八木の低い声に想像したのか
真っ赤な顔で固まる小籠

それに大丈夫、からかっただけだよ。
そういって笑う八木に小籠が泣きそうな顔で
頬を膨らませ無言で胸を叩く

確実に彼女なら殺せるのだろうが
小籠のその痛みを感じさせないほどの力で
胸を殴って反論をするそのしぐさもまた可愛らしく

「(他の男にこんな姿みせさせるなんて嫌なんだけどな)」

そう頬を触り、彼女が頬に行った手を目で追う瞬間

ふにっとした感触に小籠の目が開く
少しだけ、触れるだけ。
そう思っていたのだが、欲は高まる。

あの後、ありがとうと言った後に彼女はちゃんと言っていたのだ。

ー好きだよ。

そんな言葉を言ったのに、答えない男はいないだろう。
そう考えながら、八木は頬から首筋に方向をかえる

んんっ、そんな甘い声がしたが、その声に
更に長い時間触れていたくなる
甘い声の後に目を瞑った小籠は何をしていいのか分からず
八木の服をぎゅっと掴んでいたが
少しして離れた八木に対して目を開けた

『っぇ、』

「−っ!そんな顔、他の男の前で絶対するなよ?」

そう目を細めた八木に、小籠は少し右に首を傾げる
どうやら理解していないらしい…
こういうのはもっと別の時間に、というか

「普通に逆だったんだけど、聞いてくれる?」

ー好きだ。私と付き合ってくれないか?

そう言った八木に、小籠はこくりと頷いた
嬉しくなった八木は小籠を少し強く抱きしめた

「痩せこけた私でも?」

『あー…大丈夫だよ。』

イケメンだから。そういった小籠は
先程の熱い抱擁を思い出しまた顔を赤らめる

キスをしてお互いのお付き合いが始まった
まぁ本来は逆の筈なのだが、少しお手付きしてしまった
…勿論吹っ掛けたのは小籠だ。そう八木は自分の中で言い聞かせた

ベンチで座った小籠は隣の八木に対して
目を合わせては顔を赤らめてそっぽを向きを
ここ3回程繰り返している

その現実に八木は自分の事で
頭がいっぱいな彼女が可愛らしく思う一方で、
慣れていないっていう事に、
今まで男として見られていなかったのでは?
という悲しい現実に喜んでいいのか
悲しんだ方が良いのか困惑していた

『えっ、あの…その、』

「ん?」

『いっ、いつから私のこと?えっと』

「好きだって?」

その言葉に顔の温度が引いていたのに
ゆでだこと言われても文句は言えない程に
真っ赤になりつつも頷く小籠にくすりと笑いが漏れつつも
答えを返した

「高校の時だよ」

『え!?』

「それまで君と話すって言っても
君の行動って言ったら男そのものだったからね。」

いつだったか、高校の秋ごろ
君が笑って帰っている姿が綺麗だった

「本当はずっと前から一目惚れだったんだけどね。
そんなはずない、色目でずっと一緒に居てないって
言い聞かせたくて、君と距離を置いてたんだよ。」

『嫌われているわけじゃなかったのか…』

嫌っていると感じてたの!?
そう驚いた八木に小籠は頷いた

『一時期嫌われてるのかなーって思って
周りは君がオールマイトって名前付けてからも
引っ張りだこだったから』

「見た目よりも君は木陰を望むからね。」

悪かったな。陰キャで。
そうふてくされる小籠に
八木は謝りつつも昔の彼女を思い出す

うつむいてばかりの小籠
八木が声をかけようかと迷ったが
迷う時には何処かに消えていた

男と女は別々に行動をする
小籠は特に一人で行動を好む為か
周りに人はずっといるわけではなかった

「君と一緒にペアを組めた高校3年の時、嬉しかったんだ。」

嗚呼、少し強くなった自分をみせられる。
そう思って、お互いの気持ちを確かめ合って
すぐに追いついた小籠に八木は当時嬉しくなった

だが、小籠らに襲い掛かったのはその直後だった

「あの時なんであの事を?」

代償を。そうヴィランが帰り道のトンネルに立っていた
その状態に八木が前に出て小籠を逃がそうとしたが
小籠の力の代償と知った八木はそれでも彼女が危険に
晒されるのは間違いないと感じ、ヴィランに攻撃をした

しかし、攻撃が当たったのは八木の方で、
小籠はその瞬間に初めて街中で力を使った
雨が降る中、小籠が泣きながら八木を抱きしめて言った

ーどうか!どうかお願い!!この人を…助けて。

力を使用して、小籠は眠りにつき、八木は生き返った代償として
小籠の記憶全てを失って、ベットで起きて学校に行ったときには
小籠が居た形跡等一つも見つからなかったのだ

『あの時頑張って隠れてカード集めててね
寝不足から体調不良から本当に必死過ぎて前を向いてなかった』

この時間が戻ればいいのに。
そう強く願った後、ふわりと眠りが襲った
それだけなの。そう小籠は話す

『私の力は当時強力ではなかった。それは知ってるよね?』

そう頷く八木に小籠は話を続ける

『あの時私の器はカードと喧嘩の毎日でね、カードになっても
すぐに出ていっちゃって、どうしてこんなにも上手くいかないのか
ずっと考えていたの』

でも、あの時、のっくんが死にそうになった時に感じた
私には必要なものが足りなさすぎると
かと言って、のっくんを捨てる訳にはいかない。

最初からずっと私の事を見てくれていたのだから。
そんな大事な友だちを見捨てる訳にはいかない。
そう感じた小籠は強く祈ったのだ

『強く願い、強く叶えと望んだ。すると目が覚めた後、カードは元の場所に戻っているし、何もかも持っていた。』

でも、一番好きな人達は居なかった。
恋という感情さえも、なかった。

『私は、これは代償なのだ。そう感じる筈だった。
でも、予想以上に記憶を無くしていて、
そう考える時間は無かった。』

いきなり雄英高校に行くとか言い出すからね。
フクは急に本棚から出てくるし
カードの記憶だけはあって疑問に思う事が増えてくるし。

『段々自分の記憶に否定が入っていたのに
カードが反論している事に気が付いて
私は友達って感覚を掴んでから
皆一緒に居てくれるようになったの』

傍に居てくれる。ずっとみてくれる。
なら、私も皆に協力する。自分の力に自信をもって。
それからどんどんカードにはなるわ
フク以外の人たちにも出会うわ
力は大きくなっていくわで

挙句の果てには記憶が失われているって気付くわ、
この半年で大きく変わり過ぎて困っている。


『でも、また会えてよかったの。』

もう一度、貴方に会えて、好きって思えて。
また、同じ時間を過ごせる。
まぁ少しの時間だったけどね。

そう風がふき口に入らない様に横髪を耳にかける小籠に
今まで感じていた感情をぶちまける

「最初に出たのは、怒りだった。
どうして私にこんな大事なことを話してくれなかったのか。」

そして気付いた。
私の力よりも、君が一番苦しんでいる時間
私は君を知らずに努力していた事に

何も知らないで、守るなんて笑わせてくれるよ。
そう鼻で笑う八木に小籠は名前を呼んだ

「私の前にフクが来たよ」

『え!?』

「"特例で人間を救ったのに、
こんな金髪の間抜けとは馬鹿かあいつは"
って言ってたよ」

馬鹿

お前のはねをもぎ取ろうか?
そう思考が停止する小籠に、フクの後の話をする

「何故私が生き返ったのか、小籠はどこだと問った。」

"自分のキャパシティー以上の願いと魔力の使用に
代償が伴う。彼女の全ての記憶とお前の記憶をな。"

待て。何故だと、小籠はとその言葉に笑止と声を荒げた

"お前は救われたんだ。あんな小さな餓鬼の手でな。
お前らに何が足りないのか、何が必要なのか、
二人仲良く考えるんだな。"

『仲良く』

「事実小籠は此処にいる。
私は寧ろそれに疑問を抱いているんだけど。」

『嗚呼、多分コレのせいだよ』

そうカードを差し出す
先程手に取ったカードで、輪廻の言葉に
目を細めた八木

「これは、」

『一度時間が停止して、戻ったんだ。恐らくね』













































































《後書きスペース》