伝えたいものはすべてこの心臓の中にある

「彼女に手を出さないで頂きたい」

「あら、まさかオールマイト直々とは」

ますます彼女が欲しくなるわ。
そう言ったリコルドに、オールマイトが行動したのは
緑谷が言ってくれた言葉によるものだった

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「狼森さん、ひょっとして誰かに言いくるめられたとか」

言いくるめ?そう首を傾げる八木に緑谷は頷いた

「彼女の個性はとても素晴らしいです。
だからこそヒーローも国も先に手の内に入れたいと
思っているんじゃないでしょうか?」

つまり勧誘か。
そう言った緑谷に、八木は考えたのと
1つ気になる事があり、緑谷に聞いた

「ねぇ、小籠ってさ、ヒーロー免許、取得したよね?」

その言葉に、緑谷は頷いた
そう、小籠は緑谷たちと一緒に"免許を取得していた"

その記憶がごっそり削られている
プラス、彼女の付き添いだった者のマイクも
実はその場にいなかったのだ。


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「ヴィランが直々に学校内に入れるわけがない。
かと言って、ヒーローと言っても理由がないと難しい。」

細工したね?そう言ったオールマイトに
リコルドは何のことやらとぼやいた
今日も小籠に会いに来たらしい

学祭に向けて、小籠も麗日達に誘われて参加をしている
本当はしたくないと、相澤の元に相談を持ち掛けていたらしい。
私の場所は、この場所以外にもあるのかもしれないと。

「入れ知恵はこの学校から卒業してからにしていただきたい。」

「あら、貴方は知っているの?」

あの子の隠された記憶を。
あの子、この学校内で死ぬのよ。
そう言った彼女に、八木は目を開いた

そういや最近小籠に会っていない

ーねぇ早く帰ろう。

ー何でだい?まだ日は暮れないよ?

ー日が暮れる時は悪い事が起きるの。

必ず

そう言った通りになった。


「ーーーは?」

「あら、知らないのね。
あの子、貴方を救おうとして死ぬのよ。」

知っているのに、言わないなんて酷ね。
そう言ったリコルドの目の先
八木の後ろから高い声が聞こえる

突如、頬に何か柔らかい物があたった


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リコルドが来た
その感情に、私はとても嬉しくなった。
彼女は定期的に私に会ってくれて、沢山話を聞いてくれる。

きっと彼女は私を見てくれる。
あの子を、あの子の事を伝えようと思った。
きっと、きっと。

そう思っていたのだ。

『(ーいつも、そうだったじゃないか)』

日の影で、どうしてもそう思ってしまう
違うと言い聞かせたかった
言い聞かせたいのに、頭がその思考から離れない。



八木の影に、リコルドの影が重なった


『(まずい。逃げろ。思い出すな。隠せ。)』

都佑、声が聞こえる。
またね、その声に、ぞわりと感覚が走る


何故か蝉の声が聞こえる
ヒグラシなんて、この場所に居ないのに。

何故?私の目は


子供を見ているのだろうか?



子供は、笑いながら


あの時の様に、泣いた。


突如、世界が真っ暗になっていく
嗚呼、私はこの時間を知っている。

"また、同じ時間を繰り返すのだ"

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「っ!小籠!!君ーーー」

振り返ると彼女は居なかった
その代わり、小籠の様子がかなりおかしい

先程言っていた小籠のこと
私が別行動をしていたが故に、彼女の事を見ていなかった。

その隙を、彼女は取った


小籠の目から涙が零れた


ーごめん、もう、だめ。


走り手を伸ばすも、むなしく
ふわりと文字が浮かび上がりつつも
彼女が消えた雲と文字を掴む
しかし、彼女を守れず、掴み切れていない現実に
声を上げる八木

後ろを振り返ってもいないリコルドに
緊急事態と感じた

「−っ、もしもし、相澤君。緊急要請だ」

狼森小籠が行方不明になった。

そのことで電話した職員室側がざわついた



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「夜分にすまねぇな」

フク。そう言った相澤の言葉に
フクらはいいえと首を横に振った

リコルドの件を八木が伝える。
ヴァラクが良い奴だったと言っていた。

「小籠に危害を加えそうなやつではないと判断したんだが」

少し甘く見過ぎていたか。
そう唸ったヴァラクに、フクが頷き、
生徒には?とのフクの言葉に
まだ伝えていないと相澤が答えた

「部屋に入ってみてきたけど、カードは全部あったよ。」

「と、なればヴィランの仕業か」

はたまたカードの仕業か。
恐らく後者が濃厚だが、一体何のカードなのか。
そしてどんな状態で居るのかが推測さえもつかない状態に
一体何時帰ってくるかも分からない。

ただ、

「ごめん、か」

駄目とは一体何処の事を言っているのだろうか?
そう八木が考えているのを目に、フクが
最近な、と八木らの前で呟いた

「あいつ、嬉しそうに笑ってたんだ」

ーみて!フク〜!!文化祭出ても良いんだって!!

食事の準備中だというのに、小籠が嬉しそうに
テレビ通話でも良いと言って部屋で話をしてくれる
その時間が増えた事もだが、何より笑って話す姿は
今まで会ってからあまり経験が無かった。


「色々あって、病んでるかと思ってたのに、こっちが元気づけられた」

「フク、」

ー私ね〜ダンスするの!!個性使わずにだよ!!

絶対、来てよね!!

そう笑った彼女の顔が脳裏に浮かぶ

嗚呼、もう彼女にはカードという約束に
縛られることは無くなりつつあるのだと。

それはとても良い事であり、
同時に少し寂しいような気持ちもあった。

「個性がないと、生きていけないのかと
不安がっていた時期があって
余計に不安だったのかもしれない。」

リコルド
特例個性保護法
守るは一体、どちらの立場からの話なのだろう?


「前を向いたと思った。なのに」

助けられもしない、何処にいるかもわからないあの子を
一体どうやって探せばいいのだと

フクらなら小籠はご主人
彼女が世界中どこにいるか検討がつく
だからフクは小籠がピンチになってもならなくても
彼女のそばに向かう事が可能だった

なのに、今回その気配すらもしないのだと
それはつまり、事実上の行方不明

「俺らの世界に戻っている可能性は!」

カードの回収量からしたら本来は充分な状態なのだ
35枚を超えると帰ろうと思えば帰る事は可能。
だが、帰る時にはフクたちも同行するはず

その現実に、希望がまた失われる


「小籠が死ぬ時は直感で分かる。
だが、別世界に飛んでしまったら
俺達の時間とずれるから、分かる事さえも…」

「そんな、」

「…あの時と同じだ」

そう八木がぼそりと呟く
同じ時間を二度も感じた八木に
相澤が何か手掛かりがあるのかと聞く


「小籠は、私と一緒のチームで戦った時もそうだった。」

ーなぁ、次の授業は前に教わった事やろうよ!

ーえ?私それしてないんだけど?

「おかしいと思ったんだ。
記憶が失われた次の日に彼女は行方不明になった。」


何が原因なのか、それはまだ分からないけど。
そう言った八木に、フクが気付いた

「心の傷が深くえぐれる時に、魔術が発動する可能性は充分にある。」

恐らく、小籠と八木に襲ったものは今回取得した
輪廻とまた別のカードが関係している可能性がある。
そう考えたフクに、同時発動の可能性を相澤が聞く

「嗚呼、小籠は既に5枚以上のカードをほぼ同時に使用出来る
それ以外にも俺たちの力を使い、最大限の力で立ち向かう事だって可能だ。」

そんな彼女の元に、最悪な現実が来てもなんらおかしくない。

「しかし出来ていいはずがない。
そんなもの一度だけでなく二度までも。」


"時間を巻き戻す"ことが可能なカード

それはあまりにもかけ離れている
神の領域にあるカードである


「前は人間二人の記憶で済んだかもしれねぇが
今回は場合によっちゃあ、あいつは」

「っ!!」

それ以上言うな。
そう八木がフクの胸倉を掴む
彼だって小籠が消えたのはとても辛いのだ

だが、八木は覚えている
嬉しそうに、一緒に遊んだり共に勉強をしたことを


ーねぇーやだよ〜

ーほら、やるよ!

そうやって一緒に勉強に付き合ってあげて
出来た事に素直に驚いて喜んでいた。
きっと彼女もその感情を一番大事にしていた筈だ。
どうしてそう言い切れるのかって?

彼女の目が、物語っていたのだ。
何時もは目が少し揺らぐのに
その時だけ綺麗な目をしていた
真っすぐに前を向いて、笑っていた

一番大事にしている感情を、自分に見せてくれた
それはとても大きな成長であり、同時に嬉しかった

「何としてでも彼女は探し出すさ。」

小籠がたとえ、帰って来たくないと言っても。
何が何でも連れ戻してやる。
そう言い切った八木がオールマイトのマッスルフォームに一瞬なる

すぐに吐血したが、元に戻ったことで
フクとヴァラクは笑い、そうだなと言い切り
八木と相澤の前で頭を下げた


「俺達も全力を尽くす。力を貸してくれ。」

「よせやい、奢ってくれたお礼だよ。」

そうしなくても、力は貸すけどな。
そう笑い、彼らに手を差し伸べた八木らに
ヴァラクたちは手を取った

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《後書きスペース》