優しい木漏れ日
私はこの場所を知っている
午後の時間
風が優しく吹いている時間
蝶々が綺麗に舞っており、その不規則な動きを
追いかけたくなる本能に負ける
「まって〜!」
ふわりふわりと掴もうとして、怒ったのか
背中から同じ羽が生える
優しい色で、何処か深い青を感じさせるその姿は
まさに妖精
「ん?どうしたの?」
そう言った子供が手を伸ばしたのは
『ん?私?』
生きてるの!?
ってかこの世界はどこだ?
そう慌てふためく小籠に少女はくすくすと笑う
「貴方この世界が本当に分かっていないのね」
そしてこの場所さえも
そう振り向く少女の羽はいつの間にか消えており
近くに飛んでいた蝶々も消えていた
『ええ、さっぱり』
「無理もないわ。私の願いが此処まで繋がるとは思っていなかったんですもの」
まさか今から私がその話し方をしろと?
流石にそれは難しいのでやめて頂きたいのだが
そう考えていると少女が笑いだす
この子、私の考えている事見れるな?
そう思っていると、バレたのを正直に話す
本当に彼女は私の中身が聞こえていたらしい
「貴方にもいつかできるようになるわ
もしくはもう出来るんじゃないの?お友達と一緒に。」
『お友達?』
貴方が言っているカードさんのことよ。
そう言ってくるりと回る少女
よくみたら青いワンピースにフリルのエプロンが付いていた
少女はレンガの上を歩き、薔薇のトンネルに入る
どうやらついて来てほしいらしい
此方を振り向いて、此方にこないの?と上半身を横に傾けた
『この世界は?』
「ここがマクベスの世界よ」
『え?樹木が入らせないって、』
「あんな頑固爺の話聞いても無駄よ。
貴方本当に昔の私そっくりね。」
お前も頑固な真面目っ子だったんかい。
っていうか
『貴方が、生まれかわり、?』
そう言った小籠をもう一度後ろを振り向いた
少女はにっこりと笑った
真っ黒な髪の毛は胸が隠れる程まで伸びており
ストレートに見えなくもないが、何処か
うねっている様にみえなくもない
「ええ、私の名前はミーネ。このカードを生み出した張本人よ。」
いい?そう小籠の顎下に入る
「貴方は自分の出来る範囲を恐れている。
だからヴィランに近づかれたのよ。」
『え!?なんで、』
それを?そう考えた小籠は自分の記憶が今までどうなっていたのかに気が付いた。
明らかに情報が、止まっていた。
先程までいた空間で時間が止まっていたのか知らないが
今は鮮明に思い出す事が出来る
私は先程、彼にキスをした女性に
全てを打ち明けようとして、
「本当の自分を見せたいと思ったのに、裏切られた」
『えっ、いや違っ』
「違わない。貴方は自分に嘘を付く事に慣れ過ぎているわ。
もっと正直になって良いのよ?誰も貴方を叱らないわ。」
どうして、其処まで私の事が分かるのだろうか?
彼女は、私にそっくりと言っていた。
昔は、私と同じ風に生きていたのだろうか?
だとしたら、きっと
『辛かったね』
本心だった
母親に見捨てられた記憶が鮮明に思い出される
要らない子。出来ない子は、必要とされない。
だから私は出来る事は何でもやろうとした
食事は作るし、お風呂は入るようにしたし
でも、彼女は私の希望を打ち砕いた
涙を流して、夏の暑苦しい時間が終わり
ヒグラシが泣き終わる頃に
夕立が終わり、夜になりつつある時間に
置いて行かれた自分という感情を
「ええ、辛かった。周りを何とかするのがね。」
『そうね、誰も信用しなくなった。』
誰も私を見てくれない。
それなら、私が私を見てあげればいいじゃないかと考えた。
私だけがすべてを知っていればいい。
この先、私だけが私を愛してあげるしかないのだと。
そういう小籠に、ミーネは笑った
本当に、何処まで似ているのだろうかと
『所で、マクベスって一体どういう事?』
「マクベスは災いそのものよ」
そう真面目な顔をして話すミーネに小籠が首を傾げた
小籠が災いのカードを既に持っているからだ
「それの比じゃないわ。マクベスは本当に居た…いえ、私の夫なの。」
貴方既婚者だったの。
そうびっくりして目が飛び出そうな勢いの小籠に
何でもできるのねと引いていたミーネ
「マクベスはとても優しく強かった。王になってから変わったの」
「彼は不安に飲まれ、自分の息子でさえも暗殺者に駆り出すようになった」
それからというものの、彼の心は不安で一杯になり
心の安定を求め、魔女に占って貰ったの
敵対してた子孫が自分の首を狙ってくるだろうと
そんな話に更に心が不安になり、やがて
「悪魔となった」
『悪魔…』
小籠は思い当たる節があった
それは八木が堕天使に誘われていた時だ
あの時、本当に止めれなかったらと思うと恐ろしい
悪魔の様な状態に、怒りに飲まれていたのだ。
不安と怒りの押し問答
永遠とも言いたくなる程の長い時間を過ごしていたのに
一瞬だという事を聞いたのは二日後位だった
「私は彼が幸せになって欲しくて、彼の呪いを箱庭に閉じ込めたの」
『それが、マクベスの箱庭』
そう。と言ったミーネに小籠は
なんという事を作り上げたのだろうかと思った
だが、夫と言ったミーネの気持ちは分からなくはない
『私も、きっとそうするだろうな、』
昔、この世界で生きていない時に、夫も子供もいたのだ。
こんなバカでもいたというか、向こう側がとても頭が良く
ずっと私は聞いていた。何で私を選んだの?と
彼は言ってくれたのだ
"優しい君だからだよ"と
「私はこの箱庭が暴れない様に封じたんだけど、
誰が開けたのか、一時期開いて、
誰かに呪いとしてかかってしまったの。」
『それで貴方が管理しているの?』
「ええ、彼は彼で死んでしまってね。
私は魔術師という事もあって、死ぬ時は選べるのよ。」
まぁ、ある程度の魔力を維持しなきゃいけないから
大分苦しかったけどね。そう彼女はさらっと笑い言うが
かなりの苦労だっただろう。
『大事な人が消えても、呪いを見守るなんて、苦しいよ』
「だから代々見守ってくれる器を探しているのよ。
7代目は未夜、8代目は貴方よ。小籠。」
いいえ、都佑と言った方が良いかしら。
そういうミーネに小籠は驚いた
彼女も私の名前を知っているのかと
「ええ、昔の方が可愛らしいじゃないの?」
『う、煩い…アレはアレで頑張ってたんだよ』
で、本題に戻ろうか。
そう小籠が脱線していた路線を元に戻した
『カードキャプターの実態は、
愛した人の悪魔みたいな感情が暴れない様に
箱の中に保管して監視する為なのね。』
「大当たり〜。流石感が鋭くて助かるわ〜」
『なるほど、私が感傷的になっても耐えれるなら
大丈夫だって言われて引き継がれた理由が分かったわ。』
何故辛くても私だけが生き残れるのか
多くの人が経験していないであろう
幼い頃に一番愛されたい人に愛してもらえなかったからだ。
愛されなければ自分で生きるしかない
悪夢なんていくらでも現実で見てきたのだ
だから深い悲しみは永遠に耐えられる自信がある…が
『怒りは耐えきれないからなぁ』
「怒りを覚えなかったんじゃないの?」
あらそこまで知っているんですか?
貴方私ですかね?何処の子ですか?
「気を付けてね。"マクベスの箱庭"に取り込まれると
悪魔になるわよ。」
『既に体験しましたので、ほんの端っこだけどね。』
こないだ体験した状態は本当に指先を触れる程度だろう。
本気で飲まれたらたまったもんじゃない程の威力から
災害で終ったら良い方になるレベルになることだろう。
「だからこそ貴方なのよ。貴方は自分の核を知っている。
その核が貴方を救ってくれるわ。必ずよ。」
深い悲しみには弱いもの。
そう言ったミーネに本当かなぁと考える。
確かに怒りを感じた時になったが、悲しい時には収まっていたが
そういわれても、請け負うという事だ。不安は出るものだ。
「個性としてあの世界で生きていくと決めているのよね?」
『うん』
「…わかったわ。私もなるべく貴方に協力をしたいの。
だからこそこの世界に連れて来たんだけど。」
もうそろそろ元の世界に戻らないとまずいわね。
そう言ったミーネに小籠は首を傾げた
「いい?この世界に来ると今までの記憶はリセットされる。
その代わりこの世界の事は思い出す事が出来るの。」
それがヒントにもなり、核を維持する事が出来る。
そうミーネが言う事に小籠は頷いた
「この世界は夢の中でなら少しずつ話が出来るわ。
でも、前日の記憶が消えるから気を付けてきてね。」
忘れたい記憶があれば、来ても良いけど
そう笑うミーネに小籠は今後もお世話になる予感がした。
『ありがとう、ミーネ』
「いえいえ、貴方が笑っていられることを願っているわ。」
貴方もね。そう言って消えていった小籠に
ミーネはぼそりと呟いた
「どうか、報われて。」
きっとあの子が貴方の不安を拭い取ってくれるから《後書きスペース》