月よりも星よりも近いところで

「よ、目覚めたか?」

そう言った男性に私は悲鳴を上げることはなかった。


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「にしても嬢ちゃん、こっち側に来れるっつーことは何かしたか?」

そう言う男性はかなりマッチョで、
工事現場で働くボディービルダーと言っても
納得される方は多いのではないだろうか?

近くに緑谷がいるものの、彼の口には黒い煙が舞って
どうにも会話は難しそうだった。
彼の目や仕草を見ていてすぐにこの世界に何度か入っている感じに受け取れた。

緑谷の目が焦ってはいるものの、何故私が入れたのか
そして何故今なのか。って複数の疑問に悩まされているものの
一番悩んでいる事は私の考えている事とは少々違うものだと、信じたい。


「いいえ。無意識の為何が今起こっているのか分かりません。」

先程までフクの命令に基づき、個性を、カードと感情を入り混じろうとした瞬間
暴走し、緑谷に止めてもらう瞬間までは覚えている。
しかしそのあとすぐにこの場所に来た為、今現実がどうなっているのか理解も想像もつかない。

「俺の自己紹介をしておこうか、」

『ラリアット、OFA継承者5代目』

で、合ってるかな?そう言った小籠に緑谷は目を開いて驚くしかなかった。
声を出す事は出来ない上身体も自由に動けない。
そんな緑谷を置いて、ラリアットと呼ばれた男性は正解と言い
肩を落として驚きを隠さなかった。

『デクは9代目。彼には6つの個性が宿り使えるようになる…其処までは話してるっぽいかな?』

「すげぇなお前。」

『私は狼森小籠、貴方は"カードキャプター"って言葉を聞いたことがある?』

もし、もし私の記憶が"ダミー"だとしたら?
そう考えたのは数日前の事だった。
私の事を考えて優しく接してくれる同級生や先生に
申し訳なくなってきた私は記憶があやふやな事が
自分の身を護る術ではないかと考えた。

そう、この状態こそがカードの仕業だとしたら?

「いいや、聞いたことねぇな。」

『私みたいに八木の時、オールマイトの時には?』

「いいや。オールマイトの時はそもそも個性すら発動していない。
その上も同じで、つい最近こいつの時にやっと来たばかりだ。」

となれば

『私のカードがそうそう長く厄災を産んでない、または誰かが操作している。のどちらかか…』

もしくは…私が望んだことが現実となっているか。

「っつかお前どうやって入ってきた?この場所に関係者は入れるわけ…」

そのまさか、の可能性がある。

『私は魔力を使ってカードを自由に操れる。
只のカードじゃなくて、本物の厄災を自由に出せる
悪魔の箪笥みたいなもんだよ。』

自分で悪い事言っちゃってるよこの子怖い。
なんて小学生の女の子みたいに緑谷の後ろに縮こまって震える
ラリアットに、冗談は良いからと小籠は強めに答えた


「でもよ、何でOFAとの関係が?」

『それが分かったらこっちも探してねぇっつーの。
ラリアット、出来る限りで良い。他の人にも聞いておいて欲しいの。』

これはひょっとしたら、緑谷達の個性の派生な可能性もありえる。

「おう!…その坊主にちゃんと教えてやれよ?」

ちょっとやそっとじゃ消えない奴だからよ。

そう言って消えたおじさんを知ったのは緑谷が私に声をかけたお昼頃だった。





「…そう、そんなことに」

『前に魔導師の人が言ってたのよ。"強き魔力の意思で世界が変わる"とか。』

元々カードにしていたのは厄災として生きとし生けるものを殺さない為だった。多少の被害は別としても、死ななくてもいい人が死ぬのは避けたいものだ。

「強き魔力…それって、」

『考え願えばその通りに世界が変わるの。』

厄災が起きてから私がカードにしていたのだが
この間自分の手持ちは変わるし、カードに触れるだけで扱えるようになるし…

このまま行けば無詠唱…念じるだけで変化する。


『だからね緑谷君。もし暴走したら私を殺して欲しいの。』

ザワっと風が吹いた
一体何を言っているのか分からない顔をしていた

「…それは聞き捨てならない言葉だな。」

そう風で揺れた木の葉だと思っていたのだが、人が来ていた。

「オールマイト!」

「こごちゃん、一体僕の弟子に何吹き込んでるの?」

『厄災が私の一部になる。それは災害の一欠片に過ぎない。人殺しを頼んでいるわけじゃないのよ。』

暴走。それはどんなことよりもタチが悪い。
落ち着けば優しいその人に戻るからだ。
なのに、人は繰り返す。

『もし私がカードに取り込まれて二度と戻れなくなったら倒して欲しい。』


少なからず恐怖を感じたのだ。


「…さっきの授業で、か。それなら先生に」

『大人は駄目。すぐ忘れちゃうしいざとなれば止まる。この子は守ってくれると思ったの。』

「(嗚呼、あの時の事か!)」

授業中、狼森さんがピンチに陥ったことがあったのだ。上鳴君の雷に横から爆破下に降りれば捕まる事は不可避。
そんなピンチに、狼森さんの髪の毛の色が変化した。真っ白な髪の毛に、真っ赤な目で、告げた。

ーこんな奴らに多くの知恵を絞って、嘆かわしい。と


「狼森さんあの時の記憶」

『ある。ってか、あいつ私の身体乗っ取って話やがった。いつもは心の中で話すのに』

そう力を入れた手に緑谷は目を背けた

「あいつを出せ」

「かっちゃん!?」

「そうそう出ねぇ奴が出るっつー事は、危険な状態なんだろ?言わねぇならそいつ出せ」

そう言った爆豪に私は無理だと答えた
あの時はピンチだったから変わっただけだ
それにあの人にかわった時、とてもじゃないが
生きた心地はしなかった。

まるで本当の自分は彼女みたいに感じてーーー


『(いや、そもそも、のっくんとの記憶は彼女で、私はこの世界を見ていた筈)』

魔術師と彼女の力を持った子が生まれるのは明白
なのに今まで魔術として発動すらしなかった。
大きな力を手に入れようと必死な親戚だったが
この力を知るのは、器が成り立つ者


『(ねぇ私、知ってる。だから教えて上げて)』

この人達に、本当の出来事を。


「…ったく、あーいつったら一体何処で入れ替わる術を学んだんだァ?」

気配が違うと構えたのは小籠以外に見ていた者達
爆豪は笑った。まさか本当に来るとは思わなかったからだ。

「私を欲する者はどいつだ?」

俺だァ!といいながら、爆豪が殴り込みにかかる。近距離での攻撃なら立ち向かうと思ったのだ。

「踏み込みは丸、作戦も丸。だがやることがバツだな。」

「っ!かっちゃんの爆破を近距離で防いだ!?」

「ちっ!!」

赤い目が細くなる

「あいつからこっぴどく叱られたから、お前と戦うのはまだ先にする。」

「アァ!?舐めんな!!」

まぁ待て。そう言った爆豪に赤目の彼女は指を弾くだけで爆豪の周りを鳥かごで囲った。
壊そうと爆破も試みるがビクともしない事に目を開く

「何故これ程の力を手に入れても、お前らと本気で戦わないか、戦わせないか、分からないならば戦闘も行わない。」

「アァ!?」

「狼森さんは、凄く大人しい人です。」

優しく、誰かに声をかける
笑う姿に皆が嬉しそうに笑顔になるが
ふと笑顔が仮面では無いかと心配になる時がある

「ああ、いや、別に侮辱するつもりじゃ…ただ」

誰かを責める事を知らない位には、優しすぎる。

何かしらの原因に、自分のせいにしたがる傾向で
そこまでじゃないと言い切れることでも
素直にそうだと言っている所は見た事ない。
もし見ていたとすれば、大体聞いてないパターン
ばかりで

「なるほどな。お前、緑谷っつーのか。」

脈絡もなく、苗字を当てられて緑谷本人は困惑する
「いい、いい。別に取って食うつもりは…今はねぇから」

「さっきまであったの!?」

「はっはっはっは!頭の中から何から何まで考えが止まらねぇ子だな!気に入った!お前から相手してやらぁ!」

そう言っている小籠の中の人に、爆豪が黙って居なかった。俺と闘えと言わんばかりにかかって来るのは、小籠の真後ろだ。

「いいか?坊主。コイツはとんだお人好しだ。今からちょっとだけ怖い扱い方するからな。」

言っている間に爆豪が爆破攻撃を仕掛ける


だが、小籠には当たらず、寧ろ爆豪にかかって来た


「っ!?」

「お前から手を出した。あとあんま騒ぐな。困る子が居るだろ?」

コイツみたいにな。

そう言った彼?は手を上から下に勢いよく降ろした。すると爆豪が地面に叩きつけられる。庇えない状態の為か、痛そうにころがる事もままならない。

それもそうだ。彼?がまだ術をといてない。


「お子ちゃまみてぇなコレをすれば皆ハッピーエンドで自分は王様気取りは止めた方がいい。ろくな人生あゆまねぇぞ?」

「うるっ…!?」

「なんで何も喋らなく、何も行動していないのに、防いでくるか?…コレがコイツの最高の戦い方だからだよ。」

そう言って睨みつけた後、彼?は少し俯き
爆豪から離れる。
爆豪の周りに緑色の光が舞うのと
爆豪自身が不思議そうに動き出すのを見て
恐らく痛みを全て取り去ったのだろう。

「いいか?お前達。この力はな、思った事が全て叶ってしまうものだ。それを恐れた者がこの子の核に呪いをかけた。」

ーね、だからね、だめなの。

「ずっと手の届かない夢を、見続けさせる。
その事で、こんな力の発動をさせないようにした。
カードに入れて詠唱するなんて、発動するのに
慣れていないのもあるが、本当は未知の力に
恐れた愚か者共の呪いだけだ。」

「あの、その、呪いを解くことは」

「あるにはある。だが残酷なものだ。この子は、小籠は今までの継ぎと同じ、いや、それ以上に優しい。だからこそ、このままで置いとくのもいいとは思ったさ。」

そう言った彼?は少し寂しそうに笑って返した。

まるで、自分ではどうにもできないと、分かり切っている様な姿に
緑谷は少し引っかかった。
《後書きスペース》