ーなぁ、お前はどうしたい?
この世界にいる人達を助けたい?救いたい?
それは悲劇の海に投げ出した人さえも?
君の救える人数は計り知れない。
故に、全ての者に迷惑という名の厄災を降りそそぐ事だって可能で。
ーお前は、本当は救われたかったんだろう?
優しい声で、褒めてくれる人に
ずっと酔いしれていたかったんだろう?
暖かな午後、昼下がりの温かい時間。
笑って、ずっと、笑っていられる時間。
そう、本当は欲しがった。
確実に、叶わないと、分かった"上で"。
ーだから、俺はお前に出会った瞬間、悲しくなった。
嗚呼、この子も、瞬時に知ってしまったんだと。
ただ、今までの子を見て来て違うと感じた。
君は、誰よりもすぐに察知し、
誰よりも欲を前に押し出す事は無かった。
それが例え、本当に必要とする筈の行動だったとしても、だ。
ー何度も、こんなに繰り返して、壊れていないのがおかしい。
いや、もうとっくの昔に壊れているのかもしれない。
壊れたビデオテープを繰り返し再生するブラウン管テレビのように。
何度も何度も、必要としては捨てたふりをして。
たまたま、目を付けた奴らが君をこの世界に引き入れた。
本当は、必要としていなかったんではないのか?
ー君は、本当は、その夢が叶わないだからこそ夢に仕立て上げたかったんじゃないのか?
夢は何時かは達成してしまう。
それは終わりが来てしまい、次の世界に行くチケット入手でもある。
そんなチケットを、君は必要としていなかった。
寧ろチケットを受け取る必要性も、資格さえもないと断言していた。
それならチケットの存在を遠い存在にすればいい。
いっそのこと、チケット自体存在しないことにさえも可能で。
ー君は、確実に叶わない、醒めない夢を"作り上げた"
そうすれば、誰もが君を慈悲深く見てくれる。
そうすれば、誰もが君を優しく接してくれる。
そうしないと、少しでも、希望を持っておかないと、
存在意義すら否定された時間を乗り越えられなかった。
ーだから"醒めない夢を作り上げ、存在する事への理由を作るしか生きる方法は無かった"
笑って、どうか笑って。
そうしないと、私は生きている感覚がない。
口の中が見えるように開いて、眼を細めて声を出す。
ねぇ?ソレが、"笑うっていうことなの?"
そう感じた君の感情に、俺は絶望した。
そんな喜怒哀楽すらも、理解に苦しむ程の世界に、
どっぷりと浸かりきって、前も後ろも分からなくなった世界に
ー君はどうして、何度も"帰りたい"と願うんだ?
俺だったとしても、恐らく世界中の人に君の様な体験をさせたら
間違いなく全員が"帰りたくない"忘れ去りたいと口をそろえて言うだろう。
こんなの悪夢以外の何者でもないと。
なのに、君はそんな時程、綺麗な笑顔で笑いながら言う。
"どうして?こんなにも綺麗な悪夢なら、とっても幸せなのに。"
悪夢が、恐ろしい夢というのであれば
君は見てくれもしない両親が消えること自体が悪夢なのか?
見てくれもしないのであれば、逃げてもいいのに。
君は親も周りも否定しない。ただ、君自身を否定する。
悪い子だから。
ー優しい子だからこそ、もう見えない世界に…居たくなる程まで、麻痺させたんだろうな。
世界も、環境も、この子の、思考さえも
どうか、この子の時間が少しでも良いものであればと、
ずっと見守ってきたのに、ずっといい様にしようとしたのに
今まで確実に良い夢や良い出来事に振れていたのに
ー君ばかり、嫌な方向ばかり向いてしまう。なのに君はその度に嬉しそうに笑う。
とびっきりの笑顔で、眼を輝かせて、君は笑ってくれる。
その笑顔が、余りにも寂しそうにも見えて、こっちが悪夢を見ている気分になる。
おおっと少し話過ぎたかな?
いや、そんなこともないか。
話を続けよう。
狼森小籠…という名の全く違う人間が
小籠という姿形を偽って居ると思っていた。
最初は、違う人間が来たと思った。
誰しも迷うことはある。
彼女も悩み迷い込み出れなくなった人間では?
そう思いつつも様子を見ていた。
危険な状態になって手を伸ばそうとするのに
彼女は何度も自分の作り上げた形に手を伸ばす。
違う、そこに手を伸ばしてはならない。
離そうとするも、先に彼女自ら離れる。
まるで同じ磁石のように
触れそうな時に反発して離してしまう。
そんなことを何度も繰り返して
君は一体何が望みだ?と考えていた。
暖かな午後の夢を見る。
嬉しそうにただただ目を輝かせて
見たかった。そのままずっと見ていたかった。
そう思える程、現実離れしているようで
とてもリアルに感じれたのだ。
割れ物を扱うかのように、そっと抱くのは
真っ黒なストレートの女性で、
嗚呼、君は何度でも夢を見る。
暖かな午後に、ピクニックに出かけた両親に
笑顔を見せて、子犬と戯れるただの夢を。
…なぜ、この子なのだろうか?
この子が何をしたのだろうか?
前世から見ても、この子は純粋に
世界に馴染もうと努力を惜しまない良い子だ。
なのに、世界はこの子を否定する。
優しい子を、突き飛ばして
この子は笑うのだ。
嗚呼、まだ夢は叶わないだけなのだ、と。
『…ん、』
「起きたか。」
『ここ何処?』
「昔よりも頭の整理が良くて素晴らしいと思う」
おっと、独り言が漏れてしまった。
そんな失敗を彼女は全く見ずに
話を進めようとしてくれた。
全く、素晴らしい程に出来た人間だ。
…いや、出来ないと生きれなかった?の間違いか。
「ここは精神世界だ。今お前は病院で眠りにふけてる」
『なんで!?』
「お前が人ならざる者になりそうだったからだ。いや、正確には片足を既に勢いよく振り落として驚いた。」
『…人ならざる者』
おっ?気付いたか?
まぁ彼女はそこらの人間とは訳が違う。
何せ個性では無い存在なのだからな。
「お前、この間からカードを作り上げる上にカードを直接触れているだろ。」
『っえ?う、まぁ…』
「そもそも災いはないんだ。」
理解に苦しむ顔に、話を飛ばしすぎたと
僕は少し後悔した。
「君のカードは厄災ではない。自然災害を取り込んでいる状態が正しい。その災害を君は自分の価値観で操作しているに過ぎない。」
『…心はないってこと?』
「あくまでも作りの話だ。カードは君の意志に基づいて動く。」
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時は過ぎ、緑谷が個性の操る力として
麗日や瀬呂に教えを乞う姿を見つつ
フクロウのフクが都佑の説明をしていた。
「逆に言ゃぁ、コイツが悪だと判断すればこの世界を滅ぼすことだって可能なだけだ。」
「悪…」
「おい、あいつの個性と何か関係あるんか?
あいつのピンチの時ばっか個性が暴走する。」
「!…流石に勘が鋭いな。そうだ。あの個性が
オールフォーワンとワンフォーオールにだけ
共鳴をするものだ。」
そもそもカードにしまわれているのは
災害にもなる力そのもの。
今で言う個性そのものと言っても過言ではない。
「カード自体ひっきりなしに力を使うものでは無いが、人の気持ちにとても左右されてしまう。真っ白なシーツのように、色もかえれる。」
だから恐ろしいのだ。
「カード自体増えることが良くないのかい?」
「いや、増える分には本来問題ない。
ただ、所持者の感情に触れやすい為…」
「わぁーー!なになになに!?」
そう叫ぶお茶子にフクらも目を向けた。
緑谷が落ちそうになったのを瀬呂が
テープで拾おうとしたのに対して
攻撃と判断したのか、シールドが何も命令せずに
勝手に飛び出して緑谷と都佑を包んだ。
「あんなふうになりやすくなる。」
「…成程」
「思った事がそのまま伝わんのか。」
「逆に言えば思ったこと以外は伝わらない。
この間の心操君みたいな個性はな。」
だから最強ではない。
確かに多くの個性を複数持っているように見えるが、1つの個性で多くの努力が必要なのは明白だ。
個性を身体の一部として認識するのに中々理解しても動かすとなると難易度は跳ね上がる。
なのに都佑の状態は厄災となる力をカードに保管及び利用しているのだ。
1つではなく多くの個性を自由に扱うことが可能で、尚且つ人からの指示は通らないときた。
その姿はまさしく
「チート」
「爆豪少年!?」
「なぁ、お前ーあいつの事どれ位知ってるんだ?」
そう言った爆豪の顔はかなりまじめに見えた。
《後書きスペース》