たったひとつの幸いがあるために

「お前、あいつの何を知ってるんだ?」

そう言った爆豪の声に、フクは少し戸惑った。
それもそうだ。何せその意味が深い気がしたのだ。

「もっと直球に言ってやる。"あいつの感情を良い様に扱っているつもりか?"」

「爆豪少年!」

「オールマイトは黙ってろ!!」

「…正直、恐ろしい位には思っていた通りに進んでいる。」

だから、怖いんだ。そうフクは呟いた。

「あ?」

「まるで高速道路だ。スピードが出ている状態で下手にハンドルを切ると大事故になる。それ位あの子の成長はすさまじいスピードで、尚且つ最悪の現実に向かって一直線だ。」

だから怖い。寄り道も何もしないで、ただカードは新しくなるし
全く知らないカードだって手元に来るし。
その度に彼女の都佑の心がかなり不安定になる。

「最近幼稚になってきた。知ってるか?
魔法を使えば寿命が短くなるって。」

「!!」

「オールフォーワンの様に、
僕達の関係も"望まれた呪い"なんだよ。」

例え、その継承者が受け継ぎたくなくても、
どんな力を使ってでも必ず継承される。

「昔な、都佑は嫌がっていたんだ。
私には出来ない。無理だ。
なのにあいつが変わった。
緑谷や爆豪、お前達に出会ってからだ。
あいつはどんどん自分を見せない様に
塞いでいた感情を変えていった。」

それがどれだけ凄いことか、
彼女もお前達も知らない事だろうと
フクは言い切った。

「"俺は"あいつを都佑を継承者としてみなかった。
今までの継承者も早死にした。
優しくて、触れた手が今でも昨日の様に感じる。
それを都佑は、一瞬で察知した。
歪んだ顔で、"ごめんね。"と謝ったんだ。」

何も傷つけていないのに、何も知らない筈なのに
なのに彼女は謝った。フクが傷ついている心に、同情をしたのだ。

「俺は背筋が凍った。この子もまた、あの人たちの様に無残な死に方しかしないのかと。
だから俺は自分を偽って、あいつの不安を消し去ろうと必死になっていたんだ。」

大丈夫だよ。もう大丈夫。
だから何も心配なんてしなくていいんだよ。
優しく触れていた時間が、あまりにも心地よくて、いつしか"俺"の感情は忘れていた。
最悪の現実を、最悪の事実を、聞きたくも見たくも思い出したくもなくなっていた。

だから“僕”として接していた。
君には心を開かない。
均等で平等な距離を置こう。

「都佑はもう緑谷以上にオールフォーワンの操作を知っているし、カードの操作も知っている。
だがそれを扱わないのは自分が扱っていいのかという不安と、ただ周りに知られたくないと思っているからだ。」

そんな自分の足かせで、周りを傷つける位なら、思い切って動けばいいのだが、そうも言っていられない。

「知ってるか?毎晩毎晩悲しそうに笑って泣いて寝るのを。その感情がこっちまで入ってくるのに、救えもしない現実を。」

救えば最期なのだ。
笑って優しく皆口を揃える。

ごめんね、なんて。


「だから忘れさせたんだ。今回の件にしては
初代の生まれ変わりとしたら尚更だ。」

同じ過ちなんて繰り返して欲しくない。
なら?高校生として普通の生活だけでいい?
普通の生活を彼女は望んだか?

「それはエゴだ。」

「分かってる、分かってんだよ…だから嫌なんだ。だって俺たちは」


かつての継承者なのだから。








































































《後書きスペース》