肌を灼くような微笑みで

謹慎中が解け、晴れて私は外に出ていた

『ふぅ一服一服』

山崎「あの未夜さん!?今僕ら仕事中なの分かってる!?」

分ってる分かってない
何故か本音が駄々洩れだと言う事に気付いたのは
山崎に指摘されてからだった


私の謹慎が解けて、もう二日後
あれから三日も月日がたったが
未だにその存在を掴めないでいた

『(朝狼だけでなく私達は大体人間の姿のまんまだし
物理攻撃が弱い者が多いけど、夜狼だと話は別になっちゃうしな)』

髪の毛が明るい暗いと言っても所詮人である
気を隠すなら森の中というのもあり
江戸では人であふれている為
一人一人探すのには骨が折れると言う事だ

そして今日は此間教えてくれた人に会いに行くという
いやぁにしても今日は晴れて風も心地いいという
良い散歩日和の為…私は絶賛団子屋でみたらし団子を堪能していた

嗚呼勿論、山崎のおごりである。

『その人って名前は?』

山崎「え?嗚呼、柏木さんって人だよ。名前は教えてくれなかったけど」


ん?

か、柏木?
ってあの柏木?

さっと肝が冷えた気がした
というか現在進行形でなってるなってる
私よよそ見厳禁じゃろ今は

そう焦っている心境を落ち着かせようと速く呑み込んでしまった
お団子に慌てて山崎がお茶を持っていき、詰まらせた喉を快適に戻す


山崎「何焦って食べてるんですか!」

『余りにも美味し過ぎてつい』

山崎「もう、会計は終わったので家に行きましょうか」

ソウデスネ、出来るのであれば行きたくないですけど。

そう思いながらも彼が嘘を付いてくれると信じつつ私は
この散歩日和の日を恨んだ

+++

ごめんくださーいと声をかけた山崎に
柏木が声で返事を返す

ガラガラとドアを開けた後出て来た長身の男柏木は
昨日来た山崎を観て何も言わないまま返そうとしたが
その後ろに隠れていた真選組の小柄な子に眼を向けた

柏木「…お?お主、ひょっとして未夜か?」

山崎「え!?未夜ちゃんのお知り合い!?」

『よーし!柏木さん!中に入らせて詳しくじっくりお話聞かせて貰いますねー!』

そうにっこりした笑顔が逆に怖いような気もする
山崎は地雷を踏んでしまったと後に後悔する



場面は変わり、診察室内
入って右側に設置されている白を基調とした白いベットに
黒い真選組の隊服を着た未夜が座り込んだ


柏木「いやー真選組に入ったという情報は聴いていたが
まさか顔を見せずに今迄ほっつき歩いておったとは」

『病院通うと精神異常みたいにみられるから
様子も見に来れんかったんだよ馬鹿』

そう毒を吐く未夜に嬉しそうに微笑んだ柏木
それに水を差す様で悪いですがと山崎は二人の関係を聴く

柏木「何って、この嬢ちゃんが幼い頃から面倒を観ているだけじゃよ」

そう言った柏木は何年振りじゃろうかねと嬉しそうに笑う
然し、そうふられた未夜の顔はすぐれなかった

というよりかは、嘘でしょう?と言いたそうな顔で


『え?柏木さんって江戸に元々居たんじゃなかったっけ?』


その言葉に目を細めていた柏木の眼が開いた
困惑している未夜に山崎も不安を覚える

柏木「なぁ未夜ちゃんや、お主今何処まで憶えておる?」

『え?ええっと‥柏木さんが江戸に住んでるって聞いて
江戸に入ってその流れで真選組に入ってここら辺守ってるって感じ…』

その回答がまずかったのか、ややこしい事になったと柏木は頭をぼりぼりとかきながら
デスク前の椅子に座りくるりとパソコン画面を見た

何が可笑しいのかも山崎と未夜は分からずその答えを聴く


柏木「酷な事じゃが、未夜お主は一部の記憶が飛んでおる
いわば記憶喪失ってやつじゃな」

『私?が?』

いやいやいやいや、冗談は後にして欲しい
然しそう言ったが柏木の眼は真剣そのもので
恐らく記憶がないというのは本当の事だろう

然し一体何時から?


柏木「山崎君と言ったな?」

山崎「あっはい!」

柏木「私は正真正銘の狼族生き残りである」

そう言った柏木に未夜は何で!と声を荒げた
言ってしまうの?なんて言っても良かったが
言う前に片手で止める様に仕草をしたことで抑えた

柏木「未夜ちゃんや、お前の観た狼族を探して居ると言った者の髪色は?」

『え?た、確か白かったんですが』

柏木「ふむ、攻撃もしてこない上に周りの様子をかき消していると言う事は恐らく朝狼(ちょうろう)であろう」

山崎「朝狼?ってあの優しい人と聞いていますが」

情報が早いのぉと嬉しそうに笑った柏木であったが
山崎の方を向いて指を三つ出す

柏木「此間は狼族という種族を捕まえるのは無理じゃという警告を出したのじゃが
どうやら死人が出たようじゃな、仕方がない。話すよ」

そうため息を入った柏木は、身体を無理矢理勢いに任せて立ち上がり
部屋の奥に進んだ

それに伴い山崎は未夜に何故彼の事を知っている事自体話さなかったのか迫る
うーんと唸りながら未夜も記憶が飛んでいた事を今知って状況が整理出来ずにいた
その為か目の前がグルグルとまわる様な眼に柏木がそう攻めるなと柔らかい声で制す

柏木「狼族には朝夜そして薄狼というみっつの存在が生きておることは知っておるな?」

頷いた未夜と山崎に柏木も頷いた


柏木「大きく分けての三つであるが、恐らく未夜ちゃんが観たのは朝狼であろう。
朝狼は基本的に朝力を発揮する為、夜は隠れている事が多い。
コソコソ路地裏を回っていたのは単に隠れているついでに情報収集していたと言った処じゃろう」

山崎「え?でも未夜ちゃん何も知らなかったって」

『ん、ごめん山崎さん。ソレ嘘なんだ』

サラッと自白したのも、これ以上嘘は通せないと分かったから
未夜は立ち山崎の方を向いてお辞儀をする様に謝った

それに顔を上げてよと慌てる山崎に柏木が説明の続きを促す


柏木「朝狼は攻撃系以外の術つまりは今聞いた処でいう”幻想”を得意とする
簡単な話、重大な事を知っている者を綺麗に記憶を消して回ってる事じゃな
朝狼自体害はないが、如何せん話が可笑しいんじゃよ」

『何故人が殺されたか、ですよね?』

柏木「朝狼は温厚な性格が多く、攻撃系を取得した処で
幻想等の得意分野を取得できないと言われて居る。一人でやったとなると話が可笑しいんじゃ」

山崎「複数人という可能性が?」

柏木「ならコソコソするより手分けした方が良い
わし以外殆どの者がこの国に保護されている状態じゃろうしな
生き残りが居て、その者を探して居ると言う処じゃろう」

死んだのは何らかの事故という可能性がデカいという
それにちょっと安心した未夜であったが
自分が記憶喪失というのが納得できない

柏木「未夜ちゃんや、また顔を出しにおいで。そしたら少しずつ君の事を教えてやる。
安心しなさい、君のご両親が偶々ワシ等一族と仲良くしていただけで、お前さんが狼族と言う事は無い。」

それにデスヨネーと言った山崎の足を踏み(何か癪に障った)
未夜は急に顔を出して来て済まないと、屯所に戻ろうとした処を
柏木に止められる

山崎を先に返し、柏木が二人っきりで話しておきたいと言う事に
未夜は一度部屋で着替えてこいと言われ不思議に思っていたが
診察用の服装におかしいのが無いか確認して、彼の言う通りにして診察室に戻った

柏木「…良し盗聴もされないままになったな」

『かしわぎ、さん?』

柏木「未夜ちゃん、君は本当に記憶が無いのじゃな?」

そう心配そうにした柏木は、心配している実の祖父の様で
自分が狼族であると言う事は知っているが
朝狼や夜狼であるのかも定かでない事を言うと
ホッと柏木は全てを忘れた訳では無いのかと安心した

柏木「山崎君の事もあり敢えてお主が普通の人と言う事を言ったが
本当は狼族の一員であることは確かじゃ」

服を着替えたのも山崎を返したのも全部真実を喋るのに邪魔であったからだと
柏木は説明し、それに納得する自分がいた

『”岡本都佑”を探して居ると聞いたけど、彼女の名前が分からなくて』

柏木「薄狼の事を指して居るのじゃろう…薄狼は産まれるのに幾つか難があっての
その名は恐らく本名であり、下手に知られては困る名前じゃろうし」

薄狼は、既に絶滅している。と柏木は言うが
それにしてはおかしいのでは?と未夜が言う事に頷いた

『何故朝狼が探してるんでしょう?』

柏木「薄狼が生きている証拠が掴めたからじゃろうな。
薄狼が産まれる事は稀であるが、今ではもう難しい事じゃ」

何故と問う未夜に
今日は此処までにしようと柏木は話した

曖昧そうな着替えた未夜を柏木は夜道に気を付けてのうと
夜になっている事に気付いたのに慌てて帰路につく
その子を遠くになって行く頃柏木はボソリと呟いた



柏木「ー嗚呼、お主も断ち切れなかったんじゃのう」









































山崎「未夜さん!!!」

『っ!!いけぇ!近くにいる奴連れてきて!』

付けられているのを知った未夜はすぐに山崎を
土方達のもとに向かわす

急に空から、いや後ろから来た奴に驚いて怯んでしまったが
直ぐに力を増幅させ刀よりも強く押し出すと相手が怯んできたので
その隙を狙い、あえて後ろに下がった


「その動き力、お前は”岡本都佑”か?」

『…知り合いと言ったらどうする?』

彼の眼の色が変わる
知り合い等いるのか?とも言いたそうな顔だ

『生憎その子の名前は知っているが誰かすら憶えて居ないもんでね
でも知り合いとなってしまえば教えてくれるかね?』

君がその子をどうして探して居るのか。

それに敵である男性は刀を下ろしぽつりと言葉を紡いだ

「…狼族を知っているか?」

『ろう、ぞく?』

聞いた事ある様な名前で、首を傾げた私に
知らないなら斬ると言い出してきたので
嘘でも「知ってる知ってる知ってるから!!!!」と焦って
その刀を受け止めた

「…その狼族、名を汚している。処罰に来た」

『態々江戸に?つか江戸に居るとも知らないんじゃ?』

「貴様」

本名である事を知っていた敵は朝狼の人間であった。
「朝狼の名を汚す者は処罰すべし」
そう向かってきた人間に未夜は軽く左腕を斬られる
血の不快感をまだ持っている未夜に回復のやり方を教える敵に
「どうして?」と問うが「これも罰の内」と
詳しくは教えなかった(本当は生きる術を教えてあげただけ)
そのまま回復に力を入れすぎて気を失い倒れた
未夜の元に沖田が路地裏に入り敵の胸の中に気を失っている
未夜を見つけると静かに怒り走るが
未夜を突き放して沖田の腕の中に入るのを見てから姿を晦ました