刀剣ショートストーリー

×××翡翠の約束 6

玄関に着くと既に出迎えに来ていた燭台切が居た。

「おう!光坊早いな!」
「鶴さんと"未定"くん、一緒だったんだね。
 君にも会わせたいなぁと思ってたから、
 ナイス鶴さん」

ーー未定くん?、みんな無名って呼ぶのにな?
「会わせたい?ですか?」
「うん。僕らと同じで伊達家縁の、、」

「みっちゃーーん!!ただいまー」
「貞ちゃん!おかえりー」

元気な声で駆け込んで来た少年は勢いのまま、燭台切に飛びつくと二人はそのままぐるぐると回る。

「光坊が楽しそうで、
 面白いものが見れただろ?」
「……はい。」
「これも一つの驚きか?」
ポカンとする無名の反応に鶴丸はまた嬉しそうに笑っていた。


回り止むと、貞ちゃんと呼ばれた一振りは無名に興味を持って燭台切とやって来る。一方で鶴丸は「俺は別な奴に話があるからまたな」と帰還組を追って奥へ行ってしまった。

「よっ!俺が噂の貞ちゃんだ!よろしくな!」
「さ、貞ちゃん?」
「彼は太鼓鐘貞宗。通称貞ちゃん。だよ」
「あ、えと、よろしくお願いします」
燭台切が間に入って話を理解している間に、太鼓鐘は顎に手を当てて首を傾げていた。
「んー。なんて呼ぼうかなぁ。
 無名だからむっちゃん?…は陸奥守が居るし
 未定だと、みっちゃん。はははっ
 これじゃみっちゃんが二人になっちまうな」

ニカっと笑ったかと思うと、太鼓鐘の身体はゆっくり傾いた。その身体は燭台切が抱き止めると、腕の中からは寝息が聞こえて来る。
「ふふっ。寝ちゃったね。」
「本当ですね」
「じゃ、僕らも部屋に戻ろうか」

「派手に行こうぜー。むにゃむにゃ」

太鼓鐘の寝言に燭台切と無名は顔を見合わせて笑い、玄関を後にした。
 

ーーーーーー

審神者の部屋には、遠征及び調査任務から戻った三日月、そして鶴丸の姿があった。
「やはり、主の言う通り、あの社に
 納めらているはずの刀が消えていた。
 今の所大きな歴史の改変となっていない
 とはいえ、社の守刀が無いが故に、
 社の加護が希薄となって居った。今はまだ
 影響が出るに至っては居らんが、
 些か問題であろうな。」
「時間遡行軍が持ち帰ろうとした刀とはいえ、
 俺が持ち帰ったことは問題だったか、、」

今議題とされているのは"無名"の事だった。
そもそも、彼がこの本丸に来るに至った経緯は鶴丸にある。

時間遡行軍が死人から刀を奪い取るのを目撃した鶴丸はそれを追い、そして倒した。時間遡行軍は塵と消えその場には一振りの刀が残った。刀は持ち去られずに済んだのだ。
しかし、本来ならばその歴史になくてはならない刀なのだから、死人の元にその刀を置いてくると言うのが正しいはずなのだが、その刀自体に黒いモヤがまとわりついていたのだ。

手を伸ばすとモヤは霧散して消えたのだが、
今までに無いその違和感にその刀をその時代に残して戻る事は出来ずに鶴丸は持ち帰ったのだった。

そうして顕現したのが、あの"無名"だ。

「じゃあ、あいつを主人のところへ
 送り届ければ……」

「それは出来ません。
 そんな事、しちゃいけない…」
「主、、」
「心を宿したあの子を、
 あなたの居場所はここだからって、
 亡くなった主人の所に置いてくるなんて
 そんなの酷すぎます」

「しかしな主、、」
「それに、黒いモヤ。
 私はそのモヤに、未来に残るはずの名前も
 奪われたと思っています。
 そっちが解決していない以上、
 そちらの解明の方が先です。」

「三日月は"未定"を見て
 何か感じる所は無かったか?」
「それを語るには、まだ時期尚早だな。
 月の明かりでは闇は上手く姿を眩ます…」

「ではとりあえずは引き続き、
 様子を見るとしましょう。
 三日月さん、鶴丸さん
 よろしくお願いします」

2023/09/18BACK)
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