刀剣ショートストーリー

×××翡翠の約束 7

くらい暗い闇の中、僕が僕に問いかける。

 ねぇ?正しいってなんだろう?
 ねぇ?正しいのに悲しいの?
 ねぇ?悲しいのは正しいの?

 僕は、正しいなら笑っていたい
 悲しい正しいなんて要らない。

 だって幸せなのが正解でしょう?

膝を抱えた僕は慌てて顔を上げると、口を開いた。パクパクと魚のように動く口。
声は音にはならなかった。
首にはモヤが首輪のように巻き付いて、きゅっと僅かに閉まる。

 大丈夫。だってみんな笑顔になれたら
 「幸せ」でしょ?

笑い声が辺りにこだまして、僕の存在は消えて行った。



ーーーーーー

「寝坊助はっけーん!
 はよー!今日もいい天気だぜ!」

ーー……えっと、、太鼓鐘くん?
「ささっ!身支度整えて今日は
 俺とみっちゃんと一緒に馬当番だ!」

口を開こうとして、何故か「声が出なかったらどうしよう」という事が思い浮かび、気づくと首元に手を添えていた。

「ん?どした?」
「、、な」
ーー良かった。声が出る。
「なんでも無いです。
 なんだか変な夢を見た気がして。
 直ぐ用意しますね。」
「おう!布団は俺が上げとくなー」

無名に視線を向けたまま、太鼓鐘は押し入れを開くと、そのまま押し入れには目を向けずに布団を抱えにしゃがみ込んだ。
「た、太鼓鐘くんあぶないっ!!」
「あ?」
「わーー!!」

押し入れに潜んでいた(と思われる)鶴丸が押し入れから飛び出し、しまう筈の布団に着地する。太鼓鐘は間髪鶴丸を床を転がって交わし、二人は目を合わせて笑う。

「流石、貞坊。索敵は得意だな」
「ここは鶴さんの部屋でもあるんだから、
 いると思う方が自然だろ?」

「おう、おはよーさん。
 今日も今日とて、驚いてくれて嬉しいぜ!」
無名に笑顔で近づいた鶴丸は頭をポンポンと撫でて去っていく。
「鶴さんは道場で手合わせだって。
 あとで行ってみようぜ!
 ささっ!準備、準備。」
「ああ。はいっ!」


ーーーーーー

「おっし、いくさの時は頼むぜ!」
    「いくさの時は、協力頼むよ?」

「ふふっ。被りましたね」
馬当番を終えて厩を後にする道すがら、日本号と博多が一緒にいるのを目にした。

「今日は日本号さん、長谷部さんと一緒じゃ
 ないんですね…」
「ん?日本号と長谷部?あいつらそんな
 一緒にいる事あったか?」
「んー、、そうだねぇ、、僕もあまりその
 イメージは無いけどなぁ?」

「……え?だって二振りとも黒田家縁の、、」
「ん?誰と誰が?」

ーー何かがおかしい、、

「日本号さんと、、長谷部さん、、」
反応がおかしい事から、否定される前提で無名は口にした。やはり、太鼓鐘と燭台切の表情は訝しげに変化していく。
「未定くんは誰かと混濁してしまったかな?
 仕方ないよね、突然まわりの景色が
 変わってしまったんだからさ。大丈夫だよ
 ゆっくり覚えていけば。」
「わからない時は俺とみっちゃんも力に
 なるからさ!
 どーんと!なんでも聞いてくれい!」

ーーやっぱり、、おかしいんだ、、でも、、
  なんで?

「そ、、そうですよね…誰と間違えたんだろ…
 あ、あの、ちょっと、、
 厩に忘れ物したみたいで、、」
「僕らも一緒に戻ろうか?」
「い、いえ。一人で、、一人で大丈夫です」

「んじゃ、俺たちは先、戻ってるな!」
「分かりました。じゃあ、またあとで!」
挨拶もそこそこに走り出す無名に、太鼓鐘と燭台切は不思議そうに顔を見合わせたが、直ぐに部屋に戻るべく歩き出す。

一方、無名は厩に走り込むなり、勢いのまま山のように積まれた藁の中に倒れ込んだ。
ーー長谷部さんが黒田家の縁ではない?
  そんなはずはない、、
  織田信長から下げ渡されて、、

  覚えているんだ。僕は。



「おーおー可愛いやつめ。
 もう藁を食べきってしまったのか?
 よしよし、少しだけだからな
 ……おや?」
厩に現れたその人は、藁に倒れ込む一振りを見つけた。

「そこの一振り、如何した?」
「?!!」
藁からガバッと顔を上げると、目の前には月。

「お月様、、?」
「はっはっは。残念だったな。月は月でも
 俺は三日月だ。
 んん?ほれ、近う寄れ。頭が藁まみれだ。
 取ってやろう。」
「三日月…。三日月宗近?!
 天下五剣のあの三日月宗近?!!」

藁の上に正座して姿勢を正すと、藁がはらり落ちて来た。無名はハッとして頭をバサバサと払い、もう一度顔を上げる。

小さく首を傾げて無名を見ている三日月。
無名が見上げた目の中には左右それぞれ月の様な"黄色み"が浮かんでいた。
2023/09/19BACK)
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