刀剣ショートストーリー
×××翡翠の約束 11
「まぁ、今回は俺は一緒じゃないが、加羅坊が
一緒だからなんかあったら加羅坊を頼れな」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。
出陣するのも初めてじゃないですし」
「でも今回は!」
「わかってます。元の主と
時間遡行の接触を止める。です、よね。
…ちゃんとします…ちゃんとしますから…」
鶴丸はこの出陣に際して、翠羽がこの本丸へと来るに至った黒いモヤの事を話していた。
もし、時間遡行軍が翠羽と元主に手を出さなければ、彼の名前やその後の歴史が元に戻るとの考えからだった。
「…そうだよな。悪い。
帰ったらとびきりな方法で驚かせる準備
しておくからなっ!」
「程々にしてくださいよ。
心臓が持ちませんから」
困り顔で笑う翠羽に、笑って見せると、大倶利伽羅がじーっと鶴丸を見て、眉を顰めている。
「なんだ加羅坊?」
「お前、、、本当に鶴丸国永か?」
「はぁ?」
「お前はそんな優しくない」
「ふふーん。
加羅坊も優しくして欲しかったって事か?」
「そんな事は言っていない」
「またまたぁ」
「馴れ合うつもりはない」
「大倶利伽羅さん。そろそろ出発だそうです」
翠羽が目を向けた先では三日月、長谷部、岩融、薬研、が2人を待っている。
「行ってきます!」
「ああ。気をつけてな」
大倶利伽羅と翠羽の後ろ姿の先、鶴丸は向こうにいる三日月と目が合った。彼は柔らかく微笑むと小さく頷き、鶴丸の小さな不安も和らぐ様な気がした。
光に包まれ6人が転移されるのを鶴丸は見送る。
雛鳥もいつかは旅立つ。
いつかは一人でも空を飛び回れる様に、
今はただ信じて、光の消えた空を見上げた。
ーーーーーー
「今回の任務はざっとこんなところだが、
大倶利伽羅と翠羽は別件だな。」
今回の隊長である長谷部がこちらを向き、翠羽は「はい。」とはっきり返事をした。
しかしその時、ピリッとした様な鋭い視線を感じて背筋がヒヤリとする。何か自分が気付いていない失敗をして、大倶利伽羅に無言で嗜められたのかと思ったが、その視線は大倶利伽羅ではない。
「夕刻には動きが有っても無くても、
一度この場に戻り、経過報告だ。以上。」
「うむ。給料分は働くとしよう。
では、大倶利伽羅、翠羽、また後でな」
二手に分かれた別働隊が去っていくと、その感覚は消えて行く。間違いなく、あの中に敵意にも似た視線を送る者がいたという事だった。
ーー誰、、
長谷部さんでなく、三日月さんでもなく…
岩融さん?薬研くん?、、でもまさか…
「翠羽。」
「はいっ!!」
自分でも思ってない程の声が出て、翠羽は自分で驚いた。目があった大倶利伽羅は一瞬ポカンとしたが、直ぐにいつものポーカーフェイスへともどり、「今回はお前の記憶頼りだ」と一言翠羽の肩をポンと叩く。
ーー僕が、しっかりしなきゃいけないんだ。
「よろしくお願いします」
ーーーーーー
足軽というものは流石寄せ集めと言うべきか、みんな似たり寄ったりの姿をしている。
近頃任務に出て、位の高い武将を目にする機会が多かった事を考えると、改めて、足軽の武具と言うものは粗末なものだなと感じてしまう。
顕現したばかりの翠羽も確かにところどころ傷みのある武具を纏っていたが、太鼓鐘と燭台切が張り切って武具に手入れをしてくれた為、今となっては足軽姿であっても粗末さは無くなっていた。
「見つかったか?」
「まだ目視はできてないです。
僕の鞘がある意味目印になると思うんですが
顕現してから磨いてもらってこの色なので、
当時はここまで目立つものでは
無くて、、」
その時、ふと目の端に緑色が反射した様な気がして翠羽は視線をそちらへと移動させた。
そしてその目に映ったのは、大きなおむすびに齧り付く元気な元主の姿。息を呑んだその反応に大倶利伽羅が気付くと、後ろから翠羽の視線を辿る。
「あれが、、」
「……はい。、、僕の元、主です、、
、、おむすび。
あっという間に無くなっちゃった」
しみじみと喜びを噛み締めている翠羽に大倶利伽羅は無言で頭をポンポンと二度だけ撫でると、視線を翠羽元主の周りへと移動させて行く。
「、、っ?!…おい、、どう言う事だ…」
「…え?」
「あそこにおまえが居る」
2023/10/13(BACK)