刀剣ショートストーリー
×××太鼓鐘貞宗@
カランと一つ綺麗な飾りが落ちた。
それは私が昔、欲しいと駄々を捏ねて彼を困らせたもの。
「こんな風に手に入っても嬉しくないよ…」
拾い上げた飾りは綺麗なのに、あの頃の宝石のようには見えなくて、、
手入れ部屋へと続く廊下に点々と続く血の跡が怖くて仕方がなかった。
私はこの本丸の審神者の娘。
物心ついた時には既に顕現した刀剣達が、私の事を姫と呼んで、兄の様にいつも周りに居てくれた。だから、親が忙しくしていても、寂しいと思ったことはなかった。
ある日縁側で、戦装束の手入れをしていた太鼓鐘が左胸に下がる宝石が連なったような飾りを磨いていて日の光にかざしていた。
そのキラキラに姫は魅せられた。
それが欲しいと、何度彼を困らせたか分からない。
それでも、彼は避けずにいつだって優しく接してくれて、、
だんだん成長して、同じ目線で歩けるようになって、気付くと私は恋をしていた。あのキラキラは飾りの話ではなくなって、彼がキラキラだった。
ーー人と同じ赤いモノが流れているのに、
どうして人ではないのだろう?
自室に帰る気にはなれなくて、手入れ部屋の前で膝を抱えて座っている。
いつもの三倍も四倍も手入れに時間がかかっているようで、こんなに時間がかかるのか…と、そう思えて仕方ない。
いつの間にか、拾った彼の飾りを握りしめて眠ってしまっていた。
ーーーーーー
ーーすまねぇなぁ。見苦しいところを見せて…
太鼓鐘の目には手入れ部屋に運ばれながら見た姫の驚いた顔が焼き付いていた。
ずっとかっこいい姿を見せて居たかったのに。
心配などさせずにいつも笑顔にしてやりたかったのに…。
「主。…姫、また笑ってくれるかな?」
「何をらしくない…。
派手に暴れるんじゃなかったのですか?」
「だって…」
「大丈夫ですよ。
あの子を誰の子だと思ってるんですか?
これからもそばに居てあげてくださいよ」
「今までは良いさ、、でも、姫はこれからも成長して
今度は俺の方が"子ども"になっちまう…
そんなんじゃ、かっこ悪いじゃん?」
一生懸命に笑ったつもりでも、主の顔は悲しそうな顔をしていた。少し弱音を吐きすぎたかもしれない…。と声のトーンを意識的に明るくした。
「あーあ。
俺もみっちゃんみたいに大人な姿だったら
こんな事考えたりしなかったのかなぁ」
「姿なんて関係ないですよ。
それとも、貞くんはあの子が大人になったら
興味がなくなってしまうんですか?」
「…そんなわけないじゃん、、主の意地悪…」
「ふふっ。さて、これでおしまいですよ。」
結局、主には見透かされているらしく、ちょっとだけ、悔しい。
手入れが終わって体力的に回復したというのに、テンションはなかなか上がってきてくれない。
主と歴史を守りたい。
それは本当の事に違いない。
でも、きっと姫の事の方が大切にしたい。
主はあの口振りだと気付いていて、
気にしていない。
それでも、、
認めて良い事なのかも分からない…。
ーー姫の事を思ったら、
俺じゃなくてちゃんとした
人の相手と…
胸の奥がギュッと痛んだ。
主に礼を言って「じゃあ」と逃げるように、
手入れ部屋の戸を開いた。
2023/08/01(BACK)