刀剣ショートストーリー

×××松井江


彼は今とても困っていた。
「桑名は容赦ない。…俺は土に還りたい…」
半ば泣きべそ。




畑当番は苦手だと言うのに、畑大好きな桑名は松井をこき使って、畑当番が終わる頃には松井の爪のネイルは所々剥がれてしまった。

身に付けるものには気を遣っていると言うのに、指先がこれでは格好がつかない。
でも、畑当番で付いた傷が理由で手入れ部屋に行くわけにも行かない。

「…どうしよう…」

実はこの松井、少々不器用な松井であった。
爪は綺麗にして居たい。
それでも自分で塗るのはハードルが高くて、、、

今日は篭手切も加州も思い浮かぶ器用組は不在。豊前はいつも何事も素早いのに、ちまちま爪を塗って貰うのが申し訳なくなるし、桑名は「また畑仕事で剥がれるんだから良いじゃん」と言うし、、小さい子たちは色々被害も出そう……

ーーもう、誰も思い浮かばない。

「松井くん?どうかしましたか?」
肩を落とす姿に声をかけたのは、最近顕現した数少ない刀剣女士。
指先に綺麗な色が乗っていた。

ーーーーーー

畑仕事ボロボロになってしまった爪が、徐々に綺麗になっていく。

それは魔法がかかっていくみたいで、
涙は引いて、視界にキラキラが戻ってくる。

ちらっと顔を上げて彼女を見ると、整った顔が、細い指が、丁寧な仕事をしている。

「…顔に何かついてます?」
「………っいや!、、な、なんでもない…」

「動かないでくださいねー
 もうすぐで終わりますから」

その時初めて、彼女との距離が近かった事に気がついた。

ーー鼻血出そう、、、
  いや、流石にそれはダメだ…

  今だけは…


「はい、おしまいです」と彼女は笑う。
短かくて、長くて、やっぱり短い時間。
爪は綺麗になっていた。
それはもう惚れ惚れするほどに。

でも、惚れてしまったのは、、
爪だけじゃない。

きっと、

きっと。




ーーーーーーーーーー

夢絵描いてる時は、恋心方面に持っていくつもりはありませんでしたが、読み物にするにあたって方向性を修正。

設定を審神者さんにしちゃうと、手入れという形になってちょっと大事(おおごと)になってしまうかなと、同じ本丸にいる刀剣女士という事で。

爪に色を差している子は加州くんだけかと思っていましたが、江に特にいっぱいいるー(笑)
2023/08/07BACK)
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