初夏に沈む
終ぞ、あなたを幸せにしてあげることはできませんでしたが、私ばかりが幸せを受け取ってしまったことを謝れば良いのか悲しめば良いのかわからないままでした。
人というのは不思議なもので、たとい片方が不幸であってももう片方は幸せでいられる。幸せな気でいられてしまうものです。きっとそれがあなたにとっては不幸せだったのでしょう。
あなたは優しくて、私は無知だった。
終ぞ、終ぞ、あなたは笑顔のまま、不幸だという顔すらせずに私を幸せにして、そして自分はそれでいいと、それがいいのだと言って去っていった。
初夏の陽射しが、一人きりになった部屋へ落ちる。草の匂いが立ち上り、緑は深い。しかし独りきりの部屋は驚くほど暗いのです。
残されたものを探すのです、あなたは全て持って行ってしまったから。苦い煙草の香り、硬いタオル、割れてしまったお皿。
涙はでなくて、しかし、しっかりと私は想われていたのだと感じることがあるのです。
鏡を見て、そっと微笑むとあなたとの時間が幸せだったと感じる。
残されたものを探すのです――そして、いつも見つける。不幸せなあなたが、幸福にしたわたしを。
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